第28話 方針は決まった
「確かに、そのような魔法があれば、死化粧のほうは完成しますね」
トウマさんが呟く。
コロさんの意見から一気に前に進んだ気がする。
魔法が出来上がったわけではないけれど、方向性が見えてきた。
「ほかに、治療として必要なことって何だろう」
「そうですね。お二人の体の傷が塞がるとなると、あとは…魔力と体力の回復でしょうか。体力の方はポーションで維持しておりますが、魔力は、そうそう回復しませんので」
シズクさんの回答に、ふむ、と考える。
一時的に、じぃ様やばぁ様の魔力を僕の支配下におき“糊”に使う。それはただでさえ少なくなっている魔力を無理矢理使用するということだから、その前にじぃ様やばぁ様の魔力を回復しないといけない。
魔力回復ポーションもあるけれど、あれは体力を魔力に変換するものだから、体力に余裕がない今はとてもじゃないけど使用不可。
普通のポーションとの併用もできない。
「…僕の魔力を、じぃ様やばぁ様の体内にいれて、馴染ませる、とかできないかな」
点滴みたいに、僕の魔力を少しずつ、じぃ様とばぁ様に渡すこと。
「…タテヤマ様の工房なら、可能かもしれませんね」
工房に必要なのは、知識、具体的なイメージと材料。
この場合、材料は僕の魔力。
イメージは。
「うん。できそうだ」
もう少し内容を詰めて、、僕が作る魔法は三つに決まった。
***
ひとつは魔力を他者に譲渡するもの。
ひとつは他者の魔力を支配下に置くもの。
最後は、支配下に置いた魔力をトウマさんに使用可能にするもの。
相談していくうちに、タンクとして僕の魔力を使うだけならそういう魔法装置があるのだということがわかったので、僕の魔法をトウマさんが使うための魔法は要らないとなった。
ちなみに、その魔法装置で魔力点滴はできないのかと聞くと、他者の魔力を使うときはそれを体内に入れているわけではないので、効果がないだろう、という話だ。
作る魔法は決まったけれど、命の綱渡りをしているじぃ様ばぁ様。
ちょっとでも失敗すれば、即、死に繋がる。
ぞく、と体が震えた。
けれど、やらなければ、…たぶん、じぃ様とばぁ様は、助からない。
この魔法の決行は、明日。
僕はじぃ様と、ばぁ様の病室を訪れる。
二人のベッドは並んでいるから、その真ん中に立って、二人の手に自分の手を添えた。
「ハヤテじぃ様、アヤばぁ様。僕のわがままに付き合ってください。どうか生きて、…ください」
意識がないはずの二人の指先が、ぴくり、と動いた。
僕は、その反応にちょっと泣きそうになって、そして、気合を入れ直した。
今回短くてすみません!!




