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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
幼馴染編

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74/410

庇ったのは……

 一紗はずっとその光景を見ていた。

 匠が敵の魔族を倒した。

 一紗を心から心配する彼。辛く厳しい迷宮を乗り越え、とうとう最下層である宮殿までやってきた勇者。

 赤く燃える炎の上に、悠然と佇む匠。そんな映画の主人公みたいな彼の姿を見て、一紗は――


 ――トクン、と胸が高鳴るのを感じた。


(ダメ……)


 一紗は無意識のうちに首を振った。


(だってあたし、優のこと……)


 こんなことはあってはならない。たとえどれだけ匠がかっこよく、勇敢に一紗を助けたとしても……駄目なのだ。


 気の迷いだから、と一紗はその気持ちを押し殺す。

 この後声をかけられたら、皮肉の一つでも言って誤魔化そう。そう、心に決めたのだった。



 *********


 気が付くと、俺は盛大な拍手を受けていた。 


 ブリューニング、そして他の魔族たちからだ。どうやら、俺の勝利を認めてくれたらしい。

 ……ったく、ここに連れてこられたときはどうなるかと思ったけど、なんとか勝つことができた。これで俺たちは帰れ……るんだよな?

 いや、俺、十分この魔族たち楽しませたし。きっと褒美とかくれて家に帰してくれるはず……と信じている。

 ……まあ仮に『次は俺が戦う!』とか言われても、全力出せないから休憩させてくれと言おう。それぐらいはなんとかなるはず。


 とりあえず一紗のもとに行こうとして振り返ると、そこには優が立っていた。

 距離が近い。ここ、闘技場っぽいところの真ん中なのに。


「優、どうしたんだ? 危ないぞ?」

「あ……ああ、匠の勝利に嬉しくなってな。つい、飛び出してしまったんだ。悪いな」


 はしゃいでここまで来たってことか。子供か!


「一紗、返す!」


 俺は一紗に魔剣グリューエンを放り投げた。

 今更だけど、一紗が丸腰じゃあ危ないからな。まあ、この状況なら変に襲われはしないと思うが……。


「えっ……あ……」


 くるくると回っていく魔剣グリューエンを見事キャッチする一紗。つかみどころが悪ければ怪我をしてたかもしれないのに、器用なやつだ。

 さて……。


 俺は下半身を切られたゲオルクのもとへと近づいた。血のような赤い液体が周囲にばらまかれ、とてもグロテスクな光景になっている。


「生きてるのか?」

「……う……はぁ……あ……」


 さすがは魔族、といったところだろうか。呼吸音が聞こえる。

 だけど虫の息、だとは思う。俺が今剣を振り下ろせば、簡単に息の根を止められる。


 正直、例の約束とか忘れて殺す気で戦ってた。このまま息を引き取るのか、それともゆっくりと復活してるのか分からない。でもこの周囲の拍手を見る限り、もうこいつが戦闘に復帰することはないと思う。


「殺すのか?」


 優が険しい顔で問いかけていた。

 ……まだこの世界に来て日が浅い優だ。余計な殺生に罪の意識を感じているのかもしれない。


「いや、そこまではいいさ」


 俺もこれ以上こいつを傷つけるつもりはない。周囲の観客魔族から反感を買うのも困るからな。

 

 さてと、ふたを開けてみれば俺は大勝利だったわけだ。


 おいこらブリューニング。どうだ見たか俺の力を。何が力を示せだ、戦えだ。俺は臆病者じゃなくて平和主義者。やる時はやる男なんだぞ!

 などと文句を言いつつ帰っていいか聞くために、ブリューニングに近づこうとした……その時。


「シネエエエエっ!」


 声が、聞こえた。


 それは、全くの不意打ちで……。俺は驚きのあまり固まってしまった。


 観客席にいた、ミゲルの信者らしき魔族だ。剣を片手に、鬼気迫る表情で俺の背後へ走ってきていた。


「アアアアアアア!」

「くそっ、こいつ!」


 とっさに、俺は剣を構えた――が、

 

 宙に聖剣ヴァイスが舞う。


 け、剣が……っ!

 勝利に浮かれ、油断していたことは否定しない。だけどこんな大勝利拍手喝さいの後で、まさか卑怯にも不意打ちを食らうとは思ってもみなかっただけだ。

 力の入っていなかった俺の手は、信者魔族の剣によって不覚にも聖剣を手放してしまったのだった。何たる不覚!


「シャアアアアアっ!」


 く、こいつ! 


 冗談とか、余興とかそういうのじゃない。こいつ、マジで俺を殺しに来てる! 

 祭司ミゲルの敵討ち、か? そこまで強い魔族には見えないが、この状況は……まずいっ!

 

「天の支配者イノ――」


 俺は魔法を唱えようとしたが、間髪入れずに敵は攻撃を仕掛けてくる。

 ま、まずい! 魔法が間に合わない。

 

 一紗もブリューニングも、駆け出しているが……間に合わない。武器も魔法も封じられた俺一人で、この状況をどうにかする必要があるんだ。


 どうする? 何かないか? 丸腰で、こいつを止める方法……。

 そ、そうだ!


「動くなっ!」


 俺は虫の息になっていた迷宮宰相ゲオルクを掴み、まるで盾かなにかのように前方に突き出した。

 こいつを人質にすれば、時間が稼げて……。


 しかし、ミゲルの信者は全く躊躇することなく俺に向かってくる。

 ……ダメだこいつ。人質に使えない。嫌われてるとは思っていたけど、ミゲルの信者とも親しいってわけじゃないんだな……。試合の時の声援は、俺の敵だから送っただけってことか。


 そしてこいつ、盾代わりにするのはあまりに柔らかすぎる。あの長剣ではお釣りがくるぐらいだ……。


 奇声を上げるミゲルの信者。

 動揺の広がる闘技場。

 泣き叫ぶ一紗と、怒鳴るブリューニング。


 この時俺は……死を予感した。


 ……なんなんだよ!

 なんで俺が!

 俺は、試合に勝ったんだぞ! 頑張って、力を振り絞って、そして勝利をつかみ取ったはずなのだ。

 それなのに、この末路か?

 こんな雑魚にやられてしまうのが、俺の最後だっていうのか?


 無情にも突き付けられる剣。

 スローモーションのように流れる光景。

 その時を、俺は無限にも感じた。走馬灯のような光景が、頭の中をぐるぐると襲っていた。


 そして、衝撃が……俺を襲った。

 しかし――


「え……」


 俺は、傷つかなかった。

 剣は、宰相ゲオルクの体で止まっていた。


 優だ。俺と魔族との間に入り込むように、優が仁王立ちしていた。

 優が、俺を庇った?


「嘘……だろ? 優……」


 信者魔族の剣が、優の腹部に突き刺さった。

 優の体とゲオルクの体。二つの体が重なり合い、俺まで貫通することを防いだ。


苦しい。

この小説のブクマが減っているのを見ると苦しい。

この素晴らしい小説に出会えたのに、不運にも手違いでブクマ外してしまった読者さんたち。

「あの小説に再会したい! くそっ、くそぉおおおおおお!」 と涙で枕を濡らしている人たちを思うと苦しい。

この小説が書籍化、アニメ化したとき、古参を名乗れず悔しさに体を震わすブクマ外しちゃった読者さんを思うと苦しい。

いつでも帰ってきて、いいんですよ?



……まあ、ホントに面白いと思ったらタイトルぐらい覚えてるだろって話ですけどね。

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[一言] 何で?ブクマ外すの?面白いのに?応援シテルよ!
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