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器用貧乏なスライムは異世界で自由奔放に生きていく?  作者: ねぎとろ


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88話 『力を欲する』

 んー。

 ダメだ。

 交渉失敗!

 どうしても中には入れてくれないらしい。

 まぁさすがにそうだよね。無理だよね。

 かと言って強硬手段に出るのも……うん、絶対負けるし、無理かな。

 あとできる事は……あ、魅了スキル?

 そうじゃん! 私には魅了スキルがある!

 どう見てもドラゴンの方が格上だけど、ものは試しだよね!

 効かなかったら全力で謝ろう。

 そして、もし効いたら中に入っちゃおーっと。


『あら? そんな顔してどうしたのかしら?』


 あれ?

 効いてるのかな?

 んー、分かんない。

 あっ!

 なんか視界の端に時間が出てきてる!

 って事は効いたってことだよね!


 えーっと、10分が制限時間で良いのかな?

 なんかますますゲームっぽくなってきてるけど……。

 ま、時間が分かるのならそれに合わせて行動できるし、むしろ有難いよね!

 さてと、刻一刻と時間は減ってきてるし、さっさと行動しないと!


「あのー、中に入っても……」

『えぇ。案内するわ』


 やった!

 これで中に入れる!

 なんていうか騙してる感覚があるから凄い罪悪感と悪い事してる気分になるけど、まぁ良し!

 これしか手段がないから仕方ない!


 私は中に入りたいと言うが、駄目と言われ、悪魔姿になって魅了スキルを使う。

 元々敵対していなかったからか、魅了はあっさりとかかり、中に入ることが出来た。ただ、今回は格上相手に使ったからか、私の視界の端にゲーム画面のように制限時間が表示された。

 ますますゲームっぽくなったが、気にしない。

 むしろ時間が分かるならそれに合わせて行動が出来る分、有難い。


『これが私たちが守っているダンジョンコアよ。それと、ダンジョンコアと共に封印されているモンスターね』

「ほえー。凄いキラキラだぁ……」


 扉の中に入り、少し進んだ所で私達はダンジョンコアを見つけた。

 中央に位置されているダンジョンコアはクリスタルに封印されており、天井にも虹色に輝く幾つものクリスタルが生えていた。

 ただただ綺麗。

 私が思った感想だ。


 けれど、さらに近づこうとした時に私の体に異変が起きた。

 進めないのだ。

 足が動こうとしない。浮遊も発動出来ない。

 それは、何回も味わった恐怖の感覚だった。


 けれど、ドラゴンが私の前に立ってくれれば恐怖は薄れる。

 重い足取りだが、それでも私は少しずつ近付いた。

 そして、目の前まで来て初めてコアと一緒に封印されているモンスターを間近で見ることが出来た。


「死んでるの?」

『えぇ。このダンジョンを維持するにはコアが必要で、それのエネルギーとなる為に生贄になったのよ。このモンスターは伝説のモンスター、()()。世界にただ1匹しか存在しないわ。このダンジョンで偶然生まれ、育ち、力を手にして、守護を選んだ。偉大なモンスターよ』


 麒麟。

 それがこのモンスターの名前だった。

 大きさはドラゴンと比べればそれほど大きくはない。

 それでも、死んでいて尚その強さは身にしみて理解出来てしまう。

 生まれた地を守る為に自ら生贄を選んだモンスター。


 考えれば考えるほどに麒麟というモンスターがどれほど葛藤したのかはなんとなく分かる。

 ……でも、私はその力が欲しくなってしまった

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