13:女と男
エドのお顔をジッと見つめていましたが、睨まれてしまいちょっと反省。
不躾に見すぎましたね。
「ほら、食ったんなら後片付けするぞ」
「はい!」
洗い場に二人並んで作業。エドが洗って、私が拭く係です。
エドの手際が良くてジッと見ていたら、いつの間にか密着してしまっていて、エドに怒られてしまいました。
「………………わざとじゃないのが、余計にたちが悪い」
「わざとじゃないのに、なんでですか!」
「うるさい。もう一歩離れろ」
「っ、はい……」
突き放すようなその言葉に、心臓がジグリと痛みました。
元夫の人には何を言われても特に何も感じなかったのに、エドに言われるとつらい。それが、なぜなのか分かりません。
しょんぼりしつつ片付けを終えて、部屋に戻りました。
エドは、明日からの仕込みなどを休みの日に少しするらしく、厨房に残るそうです。
卵液に漬けていた残りのパンのことは聞けずじまいでした。
午前中から部屋でレース編みをしていましたら、いつの間にかお昼を完全に過ぎてしまっていました。
これはもう昼食を諦めて、早めに夕食を摂りに出かけようかなと考えていたときでした。
コンコンコンと軽いノック音が三回。
部屋に来る人なんてエドしかいないけど、お昼のことがあったせいか、どなたですかとドア越しに聞いてしまいました。
「……俺だ。さっきはすまなかった」
開けたくないならそのままで聞いてくれと言われて、慌ててドアを開けました。
「なんでエドが謝るのですか」
「俺の言い方、キツかったろ? アンタみたいなお嬢様、久しぶりすぎて……どう対応したらいいか分からなくてな」
――――久しぶり?
以前は戦士のようなことをしていたと言っていたので、ご令嬢の護衛なんてこともあったのかもしれませんね。
「普通にしてもらえたら、嬉しいです」
「普通って、どういう普通だよ」
「うーん? 部屋に招いたら、喜んで入ってくれたり……友だち、ですかね?」
「フハッ! 喜んで入るのは下心ある男だからやめとけ」
楽しそうに笑ったエドが、わしわしと頭をかき混ぜるように撫でてきました。髪の毛がボサボサです。文句を言おうとしたのですが、それよりも気になることが。
「あれ? 甘い匂い――――」
クンクンと匂いを嗅ぎながらエドに一歩二歩と近付いていたら、頭をガシッと掴まれてしまいました。
「近いって。パンの残りでおやつを作った。食うか?」
「はいっ! 食べたいです!」
「ん。持ってくる」
「一緒に食べてはくださらないんですか?」
「…………アンタさ、襲われてぇの?」
廊下に立っていたエドに近付いてしまっていたせいで、身体のほとんどが部屋から出てしまっていました。
エドが私のほぼ斜め後ろにあったノブを掴んでドアを閉めました。
ドアに背中を押されたような状態で、エドの胸に顔面をぶつかってしまい、ちょっと抱きついたような状態に。
「へぶっ!」
エドに腰を抱きしめられたと思ったら、耳元でかすれた低い声で囁かれました。
「アンタは女で、俺は男だ。頼むから、警戒してくれよ。自信がなくなりそうだ」
「っ!? え……」
「直ぐ持ってくる。部屋で大人しく待ってろ」
「…………は、い」
エドが私の腰を抱いたまま、さっき閉めた部屋のドアを開けて室内に私を押し込むと、またドアを閉めて立ち去りました。
何が起こったのか分からないですが、何故か腰が抜けて床に座り込んで立ち上がれなくなりました。





