11:魔法みたいなんです
朝、エドが部屋に迎えに来て下さいました。
おはようございますと挨拶して、スープが入ったお鍋とパンを持って廊下に出ると、エドがスープの鍋をよこせと言いました。
エドは脚が少し不自由そうですし、少し気が引けます。
そんな私の反応で気がついたのでしょう。ちょっと苦笑いされてしまいました。
「十数年前の古傷だよ、扱いにはもう慣れてる。そんなことよりアンタが鍋持ってフラフラしてる方が怖い」
「では甘えて……お願いいたします」
「ほいよ」
お鍋を渡すと、エドは危なげなく片手で運んでいました。悔しいですが、確かにエドのほうが安定しているようでした。
わりと体力はある方だと思っていたのですが、まだまだのようです。
カフェに下りると、店内は真っ暗で少し驚きました。エドが必要そうな場所にだけランプを点けて回ってくれました。
「雨戸も閉まっていたので真っ暗だったのですね」
いつもは外の通りがよく見える窓の外は木の板になっていました。
「まぁ、そこまで治安は悪くないが、一応な」
エドにパンをくれと言われたので渡すと、よくもまぁこんなにハード系のものを買ってきたなと言われました。
二十センチほどの円形の砲丸のようなパンを買いました。これ大きくて安いんですよね。しかも小麦の味がしっかりしていますし。
何日かに分けて食べるのかと聞かれたので、余れば昼ごはんにしようかなくらいですと言うと、呆れたようにため息を吐かれました。
「んじゃ、ちょっと使い切らせてもらうわ」
「はい!」
エドがパンの半分をぶ厚めにスライスし、卵液に浸しました。これはしばらく放置しておくそうです。
残りのパンを今度は薄めにスライスし、溶かしバターをたっぷりと塗っていました。そしてチーズやハムなどをたっぷりと挟んで行きます。
コンロで両面が波打った鉄板になっているものを温めていました。あれは確か間にパンを挟んでパニーニを作る専用のものですね、営業中に使っているのを何度か見ました。
「近くで見ても?」
「あ? 面白いことなんてないぜ?」
「エドが料理しているのを見るのは好きですよ」
「っ、そうか」
手際が良くて、いっつも何してるのかしらと悩んでいる内にどんどんと出来上がっていって、まるで魔法みたいなんです。
いまも、手早くパニーニの下準備としてサンドイッチを四つも作り終えて、あとは焼くだけの状態です。
波々の鉄板の間にサンドイッチを挟んで、両面をしっかり焼いて出来上がり。
いつの間にかスープの温めも終えていて、エドは本当に魔法使いみたいです。
「卵液に浸したものはどうするのですか?」
「あとでのお楽しみだ。さて、どこで食うかな」
エドはいつもはどうしているのかと聞くと、キッチン内の調理台で食べているとのことでした。わざわざ店内を汚す意味もないので、休憩用のイスを持ってきて座って食べるのだそうです。
私もそれがしたいとお願いすると、変なやつだなと言われてしまいました。





