第3話:何で俺こんな説明してるんだ?
「おー、おはよー翔」
受けだの攻めだの話をしていたら恐らく今来たであろう雨音が寄って来た。
「くるんじゃねぇ!!」
突発的に雨音を威嚇する。
「わっ! どうしたんだ翔? そんな猛獣みたいに……」
「お前のせいで俺が誘い受けとか言われてるんだよ!」
「え? 誘い受け? 何それ?」
くそぅ! やっぱり貴様も知らぬ民か!!
「ぷっ……ふふふっ……」
隣で突っ伏してる檸檬が笑いを堪えてる、というか檸檬はそういった知識あるんだな。
「ほーう、檸檬はそういうの知ってるのか~」
そう言うとびくりと反応した。
「まっ、ま真白の本でっ、読んだ事あるくらいだっだよぉ?」
物凄い動揺しとるな……。
「そうか~真白がねぇ……」
「それでその『誘い受け?』って言うのは一体何なんだ?」
「そーそー知ってるみたいだし教えてよ~」
「そうだそうだ~」
雨音達が抗議をしてくる、まぁ知られて困る訳じゃ……いや困りはするんだけど……まぁ良いか誤解を解けばいいだけだし。
「えっとな、BLの用語で。あぁ、BLって言うのはボーイズラブの略称で、男性同士の恋愛とかそういった恋愛ジャンルの事だね、類似にNLやGLと言ったものがあるね。別用語で男同士は薔薇、女同士は百合とか呼ばれるな。主に女性向けの本とかで描かれる描写だね」
「「「へぇ~」」」
「翔……やたら詳しいわね……」
「まぁ、オタクだしな。それ位の知識はあるよ」
そりゃ20年以上分のオタク知識が詰まってるからな……。
「えっとつまり、俺と翔がそういう関係で翔が『誘い受け』って奴なのか……」
「いや、それはどうでもいいんだけど。中身を否定してくれ中身を」
「そうだな、俺は翔の事は友達として好きだが、俺は別に好きな女子が居るからなぁ……」
「「「「え?」」」」
「いや、何故驚く……」
「いやーお前まだ付き合ってなかったのか?」
「てっきり、付き合ってると思ってた」
「「うんうん」」
「ちょいと待て、どういう事だ!」
「いやぁ……ねぇ……」
「「「ね~」」」
「寧ろ付き合ってると思ってました」
「あれだけいちゃついてたらねぇ……」
「ヘタレだねぇ~」
女性陣3人から言われる雨音、ドンマイ……。
「まぁ、その……頑張れ、夏はこれからだ……」
「ははっ……」
――――♪♬♫♪♬♫♪♬♫——
チャイムの音と同時に、魂が抜けた様に空笑いする雨音。夏休み中に進むと良いな……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それからは普通に過ごし(やたら授業中、甲斐甲斐しく面倒を見て来る檸檬付きで)授業を乗り切った。
「という事で昼飯なのだが……どういう事だこれは」
雨音は昼休みに何処かへ拉致され、俺はいつもと違い女性陣に囲まれていた。
「いや~今日は翔の腕が固定されてる最終日でしょ?」
「だから~ご飯を食べさせられる~」
「最終日だからねぇ~」
「という事で、はい! これが今日のご飯」
真白が開けたのは小さめのお弁当箱だった、中身はスプーンで食べやすいように炒飯だ。
「私はこれですね♪」
藍那が広げる少し小さめのお重には、唐揚げや筑前煮等が入っている。
「私はぁ~これを進呈い~」
蕾は小さいタッパーに入ったフルーツを掲げる。
「いや、俺は自分の弁当あるんだけど……」
「じゃああたしが食べるね~」
出した弁当をサッと檸檬に取られてしまった。
「あっちょ!?」
「という訳ではい、翔君」
「おかずもありますからね~」
そう言って二人が俺の口元へ食べ物を持ってくる。
「むぐぐっ……」
不満はあるが仕方ない、恐らく抵抗しても無駄なので諦めつつそのまま食事を食べる事にするのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
本当の意味での据え膳を食べた後、午後の授業もなんとかこなしやっと放課後になった。
「とういう訳で檸檬、今日もありがとうな」
「本当に付いて行かなくて大丈夫?」
「大丈夫だよ、駅からバスも出てるし。それよりも檸檬は部活頑張ってくれ、大会の応援に行くから」
「ふぇ!? いいの?」
「あぁ、それに雨音も弓場さんも出るんだろ? 友達を応援しに行かない方が居心地が悪い」
「あーそうだよね……うん、わかってた(ボソッ」
「ん? どうした?」
「なんでもないよ~それじゃあ後で大会の場所と日程送るね!」
「檸檬~部活行くわよ~」
「あ、ひとみんひとみん! 夏の大会ね、翔も応援に来てくれるって!」
「そうなの? それじゃあ恥ずかしい所は見せられないわね檸檬」
「え~ひとみんこそ~今度は忘れない様にしないとね」
「ちょっとそれは言っては駄目です!」
「あはは~ゴメンゴメン」
「全く……それでは行きましょうか、佐伯さん気を付けてお帰り下さい」
「ありがとう、部活頑張ってな」
「それじゃあ翔、気を付けて帰れよな」
「サンキュー雨音」
「じゃあまた明日ね!」
「おう、また明日」
そうして3人出て行った。
「さて……帰るとするか……」
鞄を持つとクラスメイトに挨拶しつつ、昇降口へ向かった。
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