第61話 新たな孤児達
第60話を2016.03.18に書き直しています。
全く別の話になっているので、ご注意ください。
自己嫌悪から脱出して、街娘風の服に着替えた。
そして応接室で深刻な顔をしているクラーク様の正面に座る。
「さて、お話を伺いましょうか」
相手は父様と同等の上位貴族でお隣の領主様。
本来、こんな態度は許されないはず。
しかし相手が無理を押して訪ねてきたので、ここで下手に出るのもどうかと考えてこの態度。
文句があれば子供だからと流す気満々だ。
私の豹変ぶりに、驚きを隠せないでいるクラーク様。
しかし、それも短い時間だけ。
本来の目的を思い出したのか、真剣な表情になる。
「……娘を返してください」
そう言って、テーブルに着きそうなほど、深く頭を下げてきた。
えっと、どういうこと?
話が全く見えません。
状況説明を求めて、セバスを見る。
しかしセバスもわからないと言いたげに困惑気味。
「非は娘にあります。そちらの納得いく責任を取る覚悟もあります。ですから、どうか娘を返していただきたい」
熱弁されても全く身に覚えがないのですが……
「まず、状況が知りたいので、初めから説明していただけませんか?」
いきなり娘を返せと言われても、誘拐などした覚えはない。
「アーノン伯爵が先日、領地に孤児を送ったはずです。その中に娘がいたと思うのですが」
私の問いに、クラーク様が不思議そうに答える。
いやいや、まてまて。
父様が孤児を追加した話は知らない。
「セバス、私は父様から何も聞いてないけど、どういうこと?」
一番事情を知っていそうな人間に確認を取る。
「その件でしたら旦那様から連絡は受けています。今朝領地に到着して、孤児院にいると思いますが」
そろそろ王都から連絡が来るかもと思っていたので、一応孤児院は無人にしないようにしていた。
たぶん留守番している孤児の子が対応したかと思われる。
「ミリア、すぐに孤児院へ行って、新しい子、全員連れてきて」
部屋の隅に控えていたミリアに指示を出すと、すぐに応接室を出ていく。
それを確認して、クラーク様に向き直る。
「どうしてこういうことになったのか、教えていただきたいのですが」
普通に考えて、ありえない状況。
「王都にいる甥が娘に余計なことを言ったのが原因なんです」
申し訳なさそうに話し始めた。
なんでも甥は宰相の補佐役の一人で、私の事を娘さんに話したそうだ。
お隣の領地で同い年の女の子。
そんな私が森という貴重な土地を譲渡され、一部の領地に対して領主代行の権限を貰い、会社設立の申請までした。
王都の商人気質な祖父母から色々な話を聞かされてた娘さんは、勝手に対抗心を燃やしたそうだ。
そんなタイミングで、父様は王都の孤児達をアーノン領へ運ぶ計画を進めていた。
勝手に混じったのだろうとクラーク様は言う。
「さすがに、それは無いと思うのですが」
孤児に混じって伯爵令嬢がいたら、気付くだろう。
「しかし娘が王都にあるアーノン家の馬車の周囲をうろついていた目撃証言があるのです。その証言を最後に娘は行方不明になりました」
これしか手がかりが無いのだと訴える。
「とりあえずミリアが戻るまで待ちましょう」
話はそれからだ。
で、待つこと数十分。
ミリアが新しい孤児達を連れてきた。
全部で11人。
マザーもそこにいた。
孤児院で留守番していた子から連絡を受けたそうだ。
私に相談なしに、森の拠点や北部に新しい孤児達を連れて行くことはせず、孤児院で待機していて、ミリアが来たという。
「なんでお父様がいるのよ」
新たな孤児達の一人がクラーク様に話しかける。
あ、本当にいたんだ……
「お前が家出なんてするから」
涙を流しながら、娘を抱きしめるクラーク様。
うん、それは、もう勝手にしてて。
私が気になるのは、孤児達の服装。
なんで伯爵令嬢が孤児達に混じって気付かれないのか……疑問が解消された。
男の子達の服装は街の子供風で普通なのだ。
しかし女の子は貴族の服を着ている。
前に私が父様の贈り物を受け取り拒否した服、まだあったらしい。
父様が女の子達には貴族服着せてあげるように指示したそうだ。
お出かけだからと、豪華な服着せて、馬車でここまで連れてきたと。
「アーノン家なら、孤児に紛れるには女の子は貴族服。常識なのよ」
娘さん、声高に宣言してます。
そうなのか、常識なのか。
犯罪者もアーノン家の家紋入り馬車に、豪華な服着た子供がいたら孤児の可能性が高いと、お触れが出ているそうだ。
「セバス、後で父様に抗議の連絡入れたいんだけど、魔法通信機で繋いでといったら、反対する?」
以前反対されたので、確認してみる。
「大いに抗議してください。喜んでお繋ぎしますとも」
セバスから快諾を貰ったので、存分に抗議しよう。
前はキャラが勝手に動く感じがあったのに、今は話がなかなか浮かんでこない……
スランプというのかな。
おこがましいか。
早く抜け出したい……




