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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第57話 この世界の暮らし

賢者の図書館にて……


料理の棚から目当ての本を次々に取っていく。

そこでふと、郷土料理に関してのタイトルが目に飛び込んできた。


「郷土料理……」

私がやっていることは、前世の世界の便利さを広げること。

それが本当に正しいのだろうか?

そんな疑問がわいてきた。


この世界には、この世界の文化がある。


「どうしましたか、ユスト様」

動きの止まった私に、心配そうなフィリップの声。


「ちょっと故郷について、考えてたの」

よし


「フィリップ、この世界に関する本を見せて」

たくさんあり過ぎて、タイトルだけではこの世界に関する本なのか、別の世界の本なのか私には判断がつかない。


「どういった事を知りたいのですか?」


「そうね、ざっくりでいいから、衣食住に関して知りたいな」


今生で私の世界はせまい。

屋敷とその周辺の領地しか知らない。


「それだと、この辺りですかね」

あまり厚みのない本が1冊。

タイトルは『暮らしの今昔』と書かれている。

なるほど、知りたいことにピッタリだ。


「読書をなさるのなら、私は隣の部屋で電車の開発を進めています。調べ物をされる時はいつでも呼んでください」

微笑み、一礼すると部屋を出ていくフィリップ。


いつもそうだ。

調べ物をしているときは必ず側にいるが、読書をしたいときは部屋を出ていく。

私が読書に集中できるように。

結構細かいところに気付く管理者だと感心する。


「さて、この世界の文化か。考えたことなかったからな」


衣の章


昔は赤や黄色や緑など色鮮やかな厚みのある布でポンチョみたいな服装だったらしい。

しかし今は、薄い布で動きやすさが重視されている。

街の人は女性がシンプルなワンピース、男性はTシャツに簡易ズボン。

貴族は女性がフリルなどがついたワンピースで、男性がシャツにしっかりしたズボン。

薄着になったのは気候の変化に伴うらしい。


「昔の服、民族衣装みたいで可愛いな」

挿絵を見ながらそんなことを思う。


街の人は作業の邪魔になるアクセサリーは基本付けていない。

しかし、昔は手や首にたくさんの木彫りのビーズで作ったものを付けている。


「……エイミーおばさん、こういうの付けてたような」

北部の人の服も、ポンチョに近かった。

布に余裕が無いので、ダボっと感は少ないが。

そもそも布が薄いので、昔の民族衣装っぽくはなっていない。


「染料が作れれば、薄い布で同じような型の服、再現できそうだな」

商品販売の売り子の制服をこういう感じで作ってもいいかもしれない。

もっとも制服という考えがこの世界にはないけど。

次は…


食の章


昔も今も基本的に食事内容は変わっていないらしい。

主食はイモ類。

蒸かして潰し、塩で薄く味付けたものが主食。

ここに野菜や肉類を混ぜで、揚げないコロッケみたいにすることもある。


野菜類は基本的に塩で茹でるか炒めるか。


肉類は貴重であまり食卓に並ばない。

年に数回、街の獣被害対策で、森林狩を行う。

ここで駆除した獣の肉を干して、スープなどに入れる。


「干し肉……食べた記憶無いな」

あ、固いので、細かく刻んでダシとして使うって書いてある。

スープに入ってた茶色い粒。

あれか……


えっと、主な蛋白源は……虫。

大きいカエルのような生き物を肉と言って食べている。

茹でたザリガニっぽいのも好まれる。


「あ、芋虫はさすがに食べないみたい」

それには言い表せない安心感があった。

前世でも食べている地域はあったが、私には無理。

栄養価が高いということで、昆虫食は見直されていたが、イナゴすら食べられないので、その食文化には馴染めない。


果物は生でよく食べられる。

甘味がほとんどないの世界では、おやつ替わりとなることが多い。


「焼くか煮るが中心の料理で、調味料は塩のみなんだよな」

素材の味を活かして、とはよく言ったものだ。

素材の味しかしない。


あ、でも、中には料理好きもいる。

こういう人達は独自の調味料を開発している。

一般に広がらないのは、レシピを公開しないからだ。

高額で販売されているが、ある程度裕福でないと手に入らない。


アーノン家の料理人達は、塩加減だけで料理を極めることに燃えていて、家には調味料がない。

その情熱、空ぶってて味気ないけど……

次は……


住の章


昔は穴を掘って、半地下の土家だったらしい。

図らずも、私が作った土家に似てる。

私が作った土家の方が、内装は水道、コンロ、風呂完備で比べ物にならないくらい立派だが。


今は外壁を土で固めて、内装は木の板を使うのが主流。


「孤児院は石を魔法で薄く切り出して、レンガの様に積んで作ってたな」

あれはアルトのこだわりだったらしい。


王城が確か石を積んで作ってると言ってたから、あれを真似したのかも。

貴族の屋敷でも王城を真似して石造りなのは、結構あるらしい。


多くは外壁が土、内装が木の板を採用している。

アーノン家もそうだ。


「耐震性とか、全く考慮されてないんだよな。地震って起きないのかな」

そういえば、物心ついてから地震を経験した覚えがない。

だからと言って、この先起きないとも言えないし、対策は考えておいた方がいいけど。


さて、読み終えて……


「この世界の文化か」

衣は販売員の制服として取り入れようと思う。


食は、基本的には候補に挙げた物を中心とする。

でもマザーに頼んで、使える調味料を活かしつつ、この世界らしい料理を考えてもらおう。


住は、あのままでいいか。

どこから来たのか、土壁に植物を巻き付ける習慣など存在していないので、北部独自の進化を遂げようとしている。

これもまた文化だろう。

ここは無理に強制しなくてもいいや。


さて、レシピ、いろいろ調べないとな。

この世界の文化について、ざっくりですが考えてみました。


食文化については、結構困りました。

調味料ほぼ無い設定は良いとして、食材はどうなのだろうと。

肉は……大量の獣を狩る生活だった場合、絶対家畜の長達は人間である賢者に協力してくれない。

弱肉強食で弱い者が淘汰される程度でないと。

牛乳も卵もない。

大豆もない。

漁業もない。

じゃあ、蛋白源ってなんだろう。

……え、虫しかいない?

私の思考回路では、これしか思いつきませんでした。

うん、これは早急に食生活改善が必須だ。


いろいろとご指摘などあるかとは思いますが、設定甘い作者だと苦笑しつつ流していただけるとありがたいです。

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