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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第54話 糸と布

魔力珠の作成は幼馴染4人組に任せて、ネプス村へ移動。


メエコの刈った毛や綿花は全てここに一時保管している。

アルトに頑張ってもらって、倉庫を完成させたらこちらに移動するつもりだ。

しかし、優先順位が低いのでいつになることやら。


「エイミーおばさん、こんにちは」

村の入り口付近に居を構える、可愛らしいおばさん。

今は外に出て、何かの作業中らしい。


「あら、ユスト様、いらっしゃい」

春の陽だまりのような笑顔に、思わずほっこりする。


「?!」

その背後。

変貌を遂げた土家を目の当たりにして、硬直。


「ユスト様がくれた新しいお家、とっても快適よ。ありがとう」

エイミーおばさん、渾身の装飾で、進化中。


「それはそれは、なによりです」

他に言葉が見つかりません。


土で出来ているのをいいことに、蔦花を壁に巻き付けています。

玄関前には藤棚っぽいの作って、蔦系果樹を植えています。

うん、草花や果樹、作物は育成環境などいろいろ検証したいから、好きに植えていいよとは言った覚えあるが、まさか家に巻き付けるとは思わなかった。


「アッシーさんとサッシーさんの考えてくれた魔法、便利よね。村のみんなも、いろいろな植物をお家に巻き付けて、成長魔法で定着させてるわよ」

よし、この村の視察とかはここで終了。

ここから先は見ちゃいけない領域だ。

北部の拠点へ帰ろう。


そもそも、成長魔法はこのために出来たものではないのだが?

言うだけ無駄そうなので、やめておく。


「それはそうと、メエコの毛や綿花で布、作れそう?」

話を本来の目的に戻す。


エイミーおばさんは、父様の支援物資の中にあった糸や布を使って北部の人の服などを一手に引き受けていた人らしい。

なので、メエコの毛や綿花を糸にして、布などに出来ないか相談していた。

とりあえず、棒に円盤くっつけたような糸紡ぎの道具と、板に溝付けただけの即席機織りもどきは渡してある。


「大丈夫よ。ユスト様に教えてもらった糸紡ぎでちゃんと糸出来たわ。太めだけどね」

ちょっと照れたように笑うしぐさは可愛いのだが、背景のシュールな家が全てを台無しにしている気がする。


「この糸を編み込んでいけば、布も作れるわ」

サンプルで作った布を見せてくれる。

うん、ぎっちり編まれた重量感のある布だ。

涼しい気候なので、服の素材としては、まあいいか。

慣れてくれば、試行錯誤して、薄い布とかも作れそうだし。


「ちなみに、これでどのくらいかかりましたか?」

ハンカチくらいの大きさの布。


「そうね、1日くらいかしら」

不慣れな分を考慮しても、時間がかかっているように思う。

道具もそろっていない中で、出来るだけ均一に糸を紡ぎ、編み込んでいくのは予想以上に大変らしい。


「ユスト様、ずっと棒を回転させるような魔法の珠って作れないかしら」

糸紡ぎは手間だが、単純作業なので、自動化できるのではないかと相談される。

まさに私が考えているものだ。


「糸紡ぎと機織りに関して、ルディに魔力珠の作成を頼んでいるよ」

ここからちょっと歩いた岩場のところに家があって、そこで作業中のはず。


「あら、そうなの。編み方を変えて模様のついた布とかも作りたいのよね。さっそく相談しに行かなくちゃ」

体力無くて、農作業とかできず、暇を持て余していたエイミーおばさん。

特技を生かした仕事に、やる気が満ちている。


うん、いいことだ。

このやる気、存分に発散してもらおう。

でないと、土家がさらに大変なことになりそうで怖い。


「そうだ、ユスト様。砂糖や果物を煮詰めるのに、強い火魔法の珠って作れないかしら。お料理する火よりもう少し強火がいいのだけど」

果実の加工グループが困っていると教えてくれた。


私の用意した火の魔力珠は一般家庭用の火力を想定している。

しかし加工するにあたり、大きな鍋を使うため、この珠では火力が足りないそうだ。

今は薪で火を起こして煮詰めているが、灰が入ったりするので魔力珠が欲しいのだろう。


「そのあたりはサリアに頼んでみて。今、魔力珠を作る練習中だから」

人から頼りにされることを嬉しいと思える子なので、必要に迫られれば、上達も早かろう。

遅くなりました。

久々の更新になります。

短くてすみません。

久々過ぎて、なかなか感覚が戻りません……


短期連載話の教訓活かして、プロット考えてみました。

案の定、最後の方で詰みました。

……うん、まだ最初の方だし。

今からちゃんと考えて、調整していけば、あんな胃の痛む事態にはならないはず。

頑張ります。



感想で頂いた、土間直置き畳の湿気問題。

板張り技術の開発とか、本編に入れたいんですが、入れられる流れにならなくて。

そのうち、どこかのタイミングで入れられたらと思います。

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