第50話 相談材料
無事、魔力珠作成装置の登録を終え、目覚めてみれば……
「終わってる」
呆然と稲刈りが済んだ田んぼを見る。
小麦も収穫済みだった。
「おお、ユスト。戻ったか」
アッシーが意気揚々と近づいてくる。
「なんで収穫終わってんの?ギリギリ間に合ったと思ったのに」
疑問をぶつけてみる。
「魔法で成長促進させたことが無かったのでな、目測が誤ったのだ。昨日収穫時期が来たので、収穫した」
なるほど、何事も初体験だ。
間違いもあるだろう。
なら仕方ない。
うん、仕方ないんだ。
ちょっと泣きそうだけど。
ああ、収穫の喜びを皆で分かち合いたかった。
「それはそうと、ユストの方の首尾はどうだ?」
心配そうに聞いてくるアッシー。
「問題なし。これで寿命とか気にせず、賢者の力を使えるよ」
ちょっと涙目のまま答える。
うん、言葉に説得無いよね。
心配そうなアッシーの顔。
「それはそうと質問」
過ぎたことは仕方ないので頭を切り替えよう。
「北部での収穫状況はどう?」
発育のいい作物とそうでない作物の確認。
「米や麦は予想以上の収穫だな。大豆もいい方だ。だが、イモ類は予想より少々少な目。野菜はこの土地に合っておらん」
アッシーの見解だ。
卵や牛乳は数に物言わせて、かなりの量を得られている。
海産物の海藻や貝類、魚は順調に収穫量が増えていってる。
てん菜やサトウキビは女性陣のただならぬ頑張りで、びっくりする収穫量を記録しているとのこと。
果物もミリアの奮闘でそこそこの収穫量がある。
ただし、マヨネーズの材料になる物や、少々酸味のある果物など種類は限定的だ。
「なるほどね」
さて、王都から会社設立の審査員が来るまで、あと1ヶ月ちょっとのはず。
そろそろ商品を絞り込んで、どういったものにするか方針を決めていかないといけない。
「アッシー、国中に農業を広めたいって前に言ったの覚えてる?」
ふと確認してみれば、力強く頷くアッシー。
「我とリオレアの願いでもある。忘れるわけが無かろう」
当たり前のことを聞くなと言いたげだ。
「そのためには、この見慣れない物を食べ物として広めないといけないんだ」
この世界に米や小麦などの作物はない。
これが食べ物であることも知らない。
食べ物だと教えてもその味を知らなければ、誰も食べようと思わない。
そんな作物を誰も作らない。
「広める手段として考えはあるんだけど、家畜の長達にも相談するべきだと思う?」
広めたいのは人の事情であって、家畜達の事情でない。
「必要ないだろう。決まった方針を説明するだけで協力してくれる」
賢者としてのユストと契約している家畜の長達。
その指示や想いには従うという。
「そっか、アッシーには相談しても大丈夫?」
アッシーは契約していない。
でも目指す先が同じなら、相談してもいいのではないか。
「我に相談されても、答えは出せぬぞ。ただ、聞くだけになるかも知れぬ。それでよければ構わぬ」
アッシーにもいろいろと制限があるらしいので、できることは限られてくるそうだ。
相談内容によってはあてにしないで欲しいと言う。
「そっか、相談の中心は孤児院の子供達や北部の人達だけか」
アッシーやココの知識は心強いが仕方ない。
「じゃ、その相談する材料のために、アッシーにお願いしよう」
にやりと笑い、ちょっと引きつるアッシー。
言葉で説明すればある程度は理解してもらえるアッシーではなく、この世界の人にとって未知の物で相談しないといけないのだ。
相談するための材料は用意しておかないといけないだろう。
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