第47話 魔力制御
賢者の図書館の部屋奥。
壁だったところに付けられた扉。
その先に出来た広い部屋。
中央に置かれた机の上には手の平サイズの透明な珠。
「フィリップ、いくよ」
声をかければ、手に何かの端末を持ったフィリップが頷いた。
恐る恐る珠に手をかざして、力を籠める。
すると珠の中心部がほのかに白く光り始めた。
落ち着け、私。
大丈夫、できる。
自分の内に溜まる魔力と、この珠に管をつなげるイメージ。
水道管を通して、珠に蛇口を取り付けるような感覚でイメージしていく。
それが火、水、風、地の4種類。
全て均一の太さの管でないといけない。
どれか一つでも太過ぎると力のバランスを崩してしまうのだ。
「っあ!」
珠の中の光に赤みが混じり、亀裂が入った。
とたんに珠は光を失い、黒く変色して真っ二つに割れる。
「火の魔力が少し強すぎました」
端末を見ながら冷静に分析しているフィリップ。
「ユスト様は細かな調整が苦手なようですね」
通算10回目の失敗で導き出された答えだ。
こんなの分析しないでも、始める前から分かってましたよ。
「フィリップ、新しい珠追加でお願い」
この珠はフィリップの発明品。
魂から直接魔力を抜くのは危険だからと、器になるものを開発してくれたのだ。
この短期間にすごいと思う。
珠以外にも、フィリップの持っている端末も発明品だという。
この端末が生きてくるのは、私が珠に管を通してかららしい。
イメージしたものに必要な魔力だけを管に流す制御盤だという。
今は私がなかなか成功しないので、失敗事例のデータ収集に活用されてしまっているのだが。
「ポイントにまだ余裕はありますが、根を詰め過ぎると、余計失敗しやすくなりますよ?」
追加注文する私に気付かうように忠告する。
この珠、なんとポイント制。
フィリップの発明品なので、珠の制作にかかる分はいらないそうだが、材料が特殊でポイントを使わないと手に入らないそうだ。
1個200P持ってかれます。
とはいえ、賢者の力の乱用で得たポイントはたっぷりあるので、この珠50個100個壊したくらいじゃ困りません。
そんなに壊す気も無いけど。
「このまま続行する。感覚を掴みかけてるから、一気にやっちゃいたいんだ」
もう少しで何とかなりそうな手ごたえはあるので、現在疲労感は全くない。
この勢いのまま、成功まで持っていきたいのだ。
「わかりました。少々お待ちください」
そう言って、フィリップはいったん部屋から出ていく。
すぐに戻って来た、その手には、新たな透明の珠があった。
今回、かなり短いです……すみません。




