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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第44話 報告

メリス村の水田では、村人達の作業様子を見ているアッシーとミケの姿。


「アッシー、ミケ、ちょっと相談」

フィリップから聞いた話や、これからやろうとしていることをこの2人には言っておこうと思う。


「ユスト、早かったですね」

私が賢者の図書館に行ったので、ミケは明日まで起きないと思っていたらしい。


「ちょっと試したいことあって、今フィリップに準備してもらってるから、いったん帰って来たの」

チラリと村人達を見ると、作業に一生懸命で、こちらの話は聞こえて無い様だ。

とは言え、用心に越したことはない。


「で、ちょっと相談があるから、こっち来て」

アッシーとミケを村外れの人がいない場所へと連れてくる。


「それで、何をしようというのだ?」

黙って付いてきたアッシーが口を開く。


「私の延命対策」

真顔で言うと深刻感半端ないので、明るく言ってみる。

しかしミケとアッシーは私の言葉に顔から表情を失う。


「賢者の力の源について、教えてもらってきたんだ」

実際、深刻な話ではあるので、取り繕うよりも事実を話すことにした。


賢者の力の源が光と闇の魔力だということ。

四大元素の魔力が使えないように体には封がされていること。

賢者の力を使うたび、魂には四大元素の力が蓄積されていってること。

蓄積された力が限界を超えたとき、寿命が来ること。


アッシーはある程度知っていたようで、黙って聞いている。

しかしミケは全く知らなかったようで、泣きそうな顔になった。


「ほらミケ、泣かない。ちゃんと対策を考えて来たから」

続けて、魂に蓄積されている力を抜こうと思っていることを話す。


「しかしユスト、それは危険ではないのか?」

難しい顔してアッシーが言う。

魂に宿る魔力とはエネルギーそのもの。

体という器があるから、大きな暴走もなく、無意識に必要量を取り出しながら使用できるそうだ。

器もない状態で、エネルギーの塊に手を出せば、最悪暴走した力に飲まれて終わりだろうと語る。


「そうだろうなと思っていたけど、やっぱり魔力ってそういうものなのか」

単純に抜けばいい話なのだが、実際の作業は単純ではないらしい。


「でも、やらないと私の寿命短そうだから、やるしかない」

かなりのハイペースで賢者の力を使いまくってた。

果たしてどれ程の力が蓄積されているのやら。


「それにフィリップが協力してくれるからね」

図書館に専用の部屋まで用意してくれるのだ。

何とかなるだろう。


「フィリップとは、図書館の者か?」

アッシーの質問に、そういえばよく話に名前を出していたが、どういう存在かをきちんと話したことがなかったなと思い出す。


「賢者の図書館の管理人だよ。いろいろ相談にのってくれるので頼りにしてるんだ」

たまに呆れてため息つかれることもあるけど……と、愚痴ってみると、アッシーが驚いたように見てくる。


「な、なに?」

何かをやらかしているのだろうか?

不安になる。


「あ、ああ、いや、驚いただけだ」

表情からそれはわかっている。

知りたいのは、何に驚いたのかということだ。


「代々、管理者とは、賢者と距離を置く者ばかりだったのでな」

アッシー曰く、過去の賢者達の管理者は事務的な説明以外の会話など無いのだという。

賢者としての力を使い、寿命を削っていく者。

親しくなれば辛いだけだからだろうとアッシーは言う。

でも、フィリップは最初から親しげだった。

いまいちアッシーの言う管理者像と一致しない。


「それもまた、ユストが持つ生き物を惹きつける力なのであろうな」

納得したように、寂しそうに眼を伏せるアッシー。


「そのあたりは私にはわからないので、置いとくとして。魂から蓄積された魔力を抜くのは簡単ではないだろうから、しばらく図書館行きっぱなしになると思う」

数時間ちょっと頑張って、戻ってこれるとは思っていない。

ある程度の長期戦は覚悟の上だ。


「ミケとアッシーには私がいない間に問題が起きたとき、対応をお願いしたいんだ」

農業に関してはアッシー達の方が詳しい。

ミリアやアルトでは対応できないだろう。


「人同士のトラブルならアルトやミリアに丸投げしちゃっていいから、農業だけは守って」

今ここで絶えてしまえば、今の状態まで持ってくるのに、かなりの時間が必要になってしまう。

希望に満ちているときは、失敗など気にもせずに挑戦して、物事は上手く運ぶ。

しかし、一度失敗すると、ちょっとしたことでも失敗を恐れてできなくなる。

そうなると、北部の人の食料が確保できなくなってしまう。


「ユストがそれを望むなら、僕はそれを叶えるだけだよ」

ミケは私と契約することで、新たな種の未来を犠牲にしている。

その代償に得たもので、私の願いを叶えようとしてくれる。


「もとよりそのつもりだ。時間などいくらかかっても構わぬから、必ず成功させて来い」

アッシーの励ましなのか、命令なのかよくわからない言葉に、妙なプレッシャーを感じる。


「頑張ってきます」

としか答えられなかった。

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

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