第42話 賢者の力の源
パラリ、パラリとページをめくる音だけが響く部屋。
「フィリップ、聞きたいことがあるんだけど」
そう言って、読みかけの本を閉じる。
「賢者についてですね」
常に側にいるフィリップ。
私が見ていた本でだいたいの予想は付いているようだ。
「賢者の力、その源は何?」
アッシーの言っていたこと。
賢者の力を使い過ぎると寿命を早めるとはどういうことなのだろうか。
魔力を諦めて得た力。
それが賢者の力と思っていたが、何かが違う気がする。
「賢者の力もまた、魔力の一つです」
静かに語るフィリップ。
賢者となる資格とは光と闇の魔力を持つ者だという。
作物にしろ、技術にしろ、習得するためには、記録作業が必要になる。
その記録作業に欠かせないのが光と闇の魔力。
しかしこの2つの要素は微弱。
四大元素の魔力に消されてしまうほどだという。
しかし強力な四大元素の魔力を持つ者の中にしか光と闇の魔力は生まれないそうだ。
そのため、賢者として光と闇の魔力を使うのであれば、四大元素の魔力は封じなければならないという。
魂に有する四大元素の魔力。
器である肉体にはこれらの力が漏れないように封をする。
光と闇の魔力を使えば、比例して四大元素の魔力が増す。
しかし外に出ることができないその魔力は魂に溜まっていく。
やがて限界が来て、魂に保有しきれない程になったとき、賢者の寿命が来るという。
「なるほど、それで力の使い過ぎは寿命を早めるか」
魔力が無いわけではないらしい。
ただ使えないだけで。
あれ、でも……
「私の内に溜まった魔力を外に出せばいいんじゃないの?」
前世の物語には、魔力をためておく宝石とか、魔道具とかいろいろあった。
そういうのに私の魔力を閉じ込めて、誰かに使ってもらえばいいのではないのか。
そうすれば私の内にある魔力は定期的に抜けるので、限界とか関係なくなる。
「ここにそういうアイテムの作り方とかありそうだけど」
私の提案にフィリップが驚いた顔をしている。
え、ウソ、まさか、今の今まで、その可能性に気付かなかったとか?
「そういう考えがあったのですね」
本当に気付かなかったようだ。
賢者って知恵の象徴でしょう?
なんでこんなことに気付かないの?
「それでしたら、確かこの辺りに……」
魔道具の棚から数冊の本を取り出して、何かを探すフィリップ。
探すこと数分。
フィリップがあるページを開いた本を差し出してきた。
「肉体には封印がされているので、ユスト様は魂だけの存在である、この場所で試す必要があります」
そういえばそうだなと、出されたページを見る。
「結構大がかりそうだけど、ここでやって大丈夫?」
図書館というだけあって、周囲は本がいっぱいだ。
こんなところで魔法を使ったら、大惨事にならないだろうか。
「次にいらっしゃる時までに、専用の部屋をご用意いたしましょう」
そう答えるフィリップが楽しそうだ。
「ユスト様が提案してくださったこと。未来の賢者様にとっても希望となりうるかもしれません。管理者として、その手助けをさせていただくこと、うれしく思います」
フィリップにとって賢者とは大切な存在で、賢者が力を使う度に寿命を削るのは辛いことだったと告白する。
賢者の役割は知識を広めること。
その源について語れば、賢者は役割を放棄しかねない。
だから賢者から聞かれるまで、その力の源について話すことを禁じられているそうだ。
その解決策が見えてきたのだから、フィリップのやる気が半端ない。
最初の段階では全く予想していなかった展開になりつつあります……




