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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第41話 森の拠点では

森の拠点は開墾が進み、広大な畑が出来ている。


「あ、ユスト様、今日は何を持ってきたの?」

契約家畜達と畑仕事をしていた村の子供達が集まってくる。


「野菜の種をいろいろ用意してきたよ」

サンプル袋にいろいろ混ぜて持ってきた。


えっと……

周辺を見回して、ここを任せている人物を探す。


湖畔に置かれたテーブルに皿を運んでいる年老いた女性を見つけた。


「マザー、変わりはない?」

女性に声をかけると、穏やかな微笑みを返された。


「ユスト様、いらっしゃい。変わりはないわよ」

おっとりとした話し方。

孤児院の子供達を預かる人で、マザーと呼ばれている。

今は北部の子供達の面倒も見てもらっている。


孤児院の子達はみんな北部で作業しっぱなし。

マザーの所に帰れない日々が続いたため、マザーがこっちに出てきたのだ。

一人で留守を預かるのは寂しいからと。


「ちょうどいいタイミングだこと。そろそろおやつなんですよ」

まるで私がこのタイミングを狙ってきたみたいな言い方をされた。

まぁ、ちょっとは狙っていたけど……

運ばれた皿の中身を見て、思わずにやける。


「リンゴのコンポート。ユスト様に教えていただいたものです」

マザーには、ここで孤児院や北部の子達の面倒を見てもらうため、簡単な料理をいくつか教えていた。

コンポートもその一つだ。


食料不足でおやつ等と思われるかもしれないが、私は重要だと考えている。

現在、朝晩の1日2食生活。

食料不足が解消されれば、1日3食にする予定だが、今は仕方ない。

しかし、力仕事の大人や、育ち盛りの子供達に2食じゃ足りない。

昼に糖質取らせるためにも、ちょっとしたおやつは食べてもらうようにしている。


「子供達はこれが大好きでね。みんないい笑顔で食べるんですよ」

子供達の笑顔に囲まれているマザーは幸せそうだ。


「マザー、勝手に孤児院の子達を使ってごめんね」

急に罪悪感が湧いて、思わず謝罪した。


「私には、なぜユスト様が謝られているのか、わかりません」

私の謝罪は受け付けないと言い切り、目の前にフォークを置かれた。


「自信作です。食べてみてください」

促されて口に運んだコンポートはマザーの人柄のような優しい味がした。


「あー、ユスト様、一人で食べてる」

そんな私の姿を見た子供達から、盛大なブーイングが上がる。


「私はこれからお仕事です。なので、お先にいただいただけです」

言い切って、ダッシュで子供達の包囲網を脱出した。


「マザー、あとよろしくね」

そんな私を見て、笑顔ではいはいと頷いていた。






さて、湖畔から少し離れた所で、足を止める。


「ミケ、どこ?」

続々と集まる契約希望の家畜達をまとめる為、ミケにはここの管理をお願いしている。


「ここです、ユスト」

背の高い作物の間から顔を出すミケ。


「今大丈夫?」

なんかミケが忙しそうなので、出直した方がいいだろうかと考える。


「クオック?」

「グルルル!」

「チッチチッチ」


様々な鳴き声が聞こえてくる。

ああ、これらはまた新たに増えた契約希望の家畜達か。

契約作物のために、大量に賢者の図書館からサンプル袋を持ってくる日々。

賢者の袋も活用しているが、なかなか追いつかない。


「すみません、ユスト。数が多くて、そろそろ限界が近いです」

ちょっと虚ろな目でミケが答える。


ミケ、よくよく考えれば、まだ生まれたばかりだった。

なのにこんなに重労働させて……過労死でもしたら大変だ。


「もう、契約希望の家畜の長にはお断りして、帰ってもらおうか」

早いもの順ということで、ここらで切らないと、キリがない。


「そうですね、父さんに窓口立ってもらいます」

ミケ、わかってるね。

あの強面のシシに不満をぶつけられる、お断りされた契約希望の家畜の長はいないだろう。


「とりあえず、今日の分の契約を済ませたら、新規作物の記録作業をやっちゃって、私はフィリップのところへ行くから」

ここ数日の日課。

ミケも心得ていて、すでに準備は整っていた。


「さっさと始めてしまいましょう」

丁寧だったミケがちょっと投げやりになりつつある。

本当に限界が近いらしい。

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