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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第39話 食料事情

数日かけて各村を回りながら職人探し。

これが結構楽しかった。


もともと孤児だった人間が集まった村は、一芸を持った人が多い様だ。

その大半は孤児となる前に住んでいた村や街での伝統工芸や、親が職人だったパターン。


故郷を感じられるとかで、ここに移り住んでから見よう見まねで作っているそうだ。

なので欲しい技術を持った人間はわりと見つけやすかった。

みんな快く、私の要求する技術を習得するために頑張ってくれるそうだ。


「だいたい職人は決まったかな」

目指す和風建築に必要と思われる職人は確保できた。

実際に作業を指揮していくアルトと職人達を交えて構想もまとめた。

必要な材料は用意したので、各職人達が育成したり、試行錯誤しながら生成したりしている。

これ以上は私の出番ではないので、アルト達に任せることにした。


さて、問題は……


「防災面をどうしようかな」

この世界は当たり前みたいに魔法を使う。

困ったことがあれば、魔法で解決するのだ。

それを悪いことだとは思わないが、過信が惨事につながる。


北部の人間が孤児となった原因のほとんどがそこにあった。

川の洪水、土砂崩れ、津波など。

防災対策が何もなされていない村や街で災害が起き、家族を失うのだ。


災害にあった地域で、孤児を面倒見る余裕はなく、住み慣れた場所を離れるしかなくなる。

そうして孤児になっていく。

なのに災害にあった地域では防災対策を取るでもなく、今度こそ魔法で防げばいいと、教訓を生かさない。


北部の人間も同様だ。

自分の時には失敗したが、次は何とかすると考えている。

それで何とかならないのだから、もはや天災というより人災だ。


「それとなく対策するしかないかな」

人間の意識改革は時間をかけてやってくしかない。


とりあえず防波堤は出来る。

あとは地面が崩れると人や生活に影響出る箇所には根を深く広く張る樹木を植えるでしょ。

地盤が安全な場所を選んで、広めの公民館を建てた方がいいな。

最悪の場合は避難所の役割も担うだろうから。

食料の備蓄も必要か。

作物は腐るし、防腐剤とか無いから、あまり長期間は置いておけないな。

……こういう時、前世の物語とかで出てくる魔法の袋とかあればいいのに。

なんでも収納できるうえ、次元が違うとかで中に入っている食材は腐らないとか、羨ましい設定になっている。


「フィリップに相談かな」

魔法のある世界なのだから、魔法の袋があったっていいはず。

私の知る限り無いだけで、賢者の図書館にはあるかもしれない。


「お嬢様、お待たせしました」

これからについて一人考えていると、ミリアが戻って来た。

一度屋敷に行って、厨房の料理人から野菜などの種を貰ってきてもらったのだ。


さすがに何日も北部の人間全員を養える蓄えなどない。

なので森の拠点で、新たな作物を作って、急速成長中に備蓄を作るしかない。


「各村の収穫までに、私はどれだけの新作物を作るのかな」

そんなことをつぶやきながらミリアから種を受け取る。

そんな私に苦笑するミリア。


「アッシーとサッシーが新たに開発した魔法は、植物などの成長を促進させるとかで、かなり収穫時期は早められるそうですよ」

なんと新事実。

私の知らないところで、事態はどんどん進んでいるらしい。


「どのくらい早められるの?」

この世界、収穫までの期間は前世の世界の約1/3。

葉物野菜はだいたい1ヶ月。

根菜も1ヶ月。

イモ類も1ヶ月。

穀物は2ヶ月。


かなり早い成長なのだが、北部の現在の食料事情では穀物の2ヶ月は長いと思ってしまう。

それが早まるのは助かる。


「米や麦で半月、イモ類や野菜は1週間くらいだそうです」

なんと驚愕的なスピードだ。

魔法万歳。

私は使えないけどね。


「そのかわり味は落ちるとかアッシーがぼやいていました」

その時の様子を思い浮かべて笑うミリア。


「今は緊急事態だから、質より量だってサッシーがたしなめていましたよ」

さすがサッシー、わかってる。

そう、今は質より量が大事。

なにせ人数が多いのだから。


「じゃあ、あと数日乗り切れば、イモ類や野菜はどうにかなるね」

各村にいろいろな種類の作物をお願いしているが、当面はイモ類や根菜などお腹にたまる作物を多めで作ってもらっている。

水田はアッシーがものすごい広大なものを作ったので、一回収穫できれば、次の収穫まで余裕で食べていけるはず。

とりあえずあと数日でまとまった食料が手に入り、1週間と少しで米や麦が出来るので食料緊急事態は脱するだろう。


「私はこれを森の拠点で育てるから、ミリアは各村の果樹園の指導お願いね」

果物の栽培は私が知る限りミリアがダントツで上手。

なので、侍女の役割は極力減らして、サポートに回ってもらってる。


「気を付けてくださいね」

私が魔法力ゼロだとアルト達に聞いたそうで、かなり心配性になっている。


「大丈夫、森には契約した家畜の長達もいるから」

少しずつ噂を聞きつけたとかで集まってくる契約希望の家畜の長達。

とりあえず森に棲んでもらってる。


人語を話せるものもいて、少しでも余裕のある子供達はここで家畜の長達から農業や道具作りなど様々学んでいる。


ココやモモが別の地域から呼び寄せたコケコやモウシの集団もいる。

おかげで卵とミルクは予想以上に大量に入手できているので、村人達にタンパク質やカルシウムを最低限取らせることが出来た。

これはありがたい。

作物の収穫が安定してくれば、卵とミルクが販売商品の中心になりそうだ。


「じゃ、行ってくるから、ミリアもよろしくね」

ミリアに見送られつつ、森へと向かう。

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