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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第36話 魔法力ゼロ問題

各村は農業指導者達に任せて、私は北部での拠点を作らねばならない。

しかもなんか急かされた。


「さて、どうしよう」

場所はだいたい決めてある。


南部へと続く唯一の道。

その少し手前に開けた土地がある。

この場所ならどの村までもだいたい徒歩30分以内だ。


北部自体がさほど広くない。

もっと手前でもと最初は考えたが、これから各村の農地拡大を考えれば、このくらいの距離は欲しいだろう。


「問題は……」

拠点と各村を隔てる小高い山。

前世日本での小学校裏山レベルだが、村と拠点の往復頻度を考えると地味にきつい。

草木は生えておらず、粘土がむき出しの小山。

削って平らにすると大量の粘土が出てしまう。

畑の土にも使えないし、こんな大量の粘土を放置できるような無駄な土地も無い。


「アルト、カール、ちょっと相談」

建築部門リーダーで建物担当のアルトと、インフラ整備担当のカール。

拠点作りは地魔法が得意なこの2人が中心になる。


「なんだよ、ユスト」

ちょっと不機嫌なアルト。

私が書斎から持ってきた昔の建築技法が載った全シリーズを読破中なので、そっとしておいて欲しいらしい。


「アルト、欲しいものだけ手に入れて、その態度は無いでしょう」

そんなアルトをカールがたしなめる。


「この小山削って、拠点はここに作るつもりなんだ。それで出る粘土なんだけど、レンガ作れる?」

各村から拠点までは作物などモウシの荷車になる。

なら、レンガで道を舗装しようかと思い付いた。

舗装しちゃえば、雨で道がぬかるむことも無い。

車輪がぬかるみに取られることも無い。


「レンガってなんだ?」

アルトが不思議そうな顔をしている。

カールも知ら無い様だ。

この世界にレンガは無いのか。

なるほど。


「このくらいの大きさで、このくらいの厚みの粘土の塊、取り出せる?形は長方形でお願い」

こういうのはアルトよりカールの方が器用なので、カールにお願いする。

すぐにカールは地面からレンガより少し大きい長方形を切り出した。


「こんな感じ?」


「うん、いい感じ。あとは」


火魔法が得意な子は……

残念。孤児院の子供達はほとんど農作業に出ている。

役割つけていない子達は、森の拠点の方で作物作りだ。


「ねぇ、火魔法得意な子、いる?」

農作業の邪魔になるからと、村の子供達がここに集まっているので、声をかけてみる。


「ユスト様、自分で魔法使わないの?」

私が人を頼ってばかりなのが気になったのか、村の子が聞いてきた。


「使えないの。魔法の力と引き換えに、作物を作る力をもらったからね。だから魔法が必要な時は助けてね」

なんでもないことのように返事を返す。


「なっ」

いきなり声を詰まらせたのは、それを聞いていたアルト。

ベシャリとカールの手からは粘土が落ちた。


「あっ」

思わず声を上げて、拾おうとしたら、アルトに腕を掴まれた。


「お前、そういう大事なことは先に言え」

怒鳴られた。


カールは頭を抱えて、座り込んでしまっている。

「信じられない、なんでそんなことしたの」


はて、魔法が無いことはそんなに罪なのか?

魔法などなくとも5歳まで立派に生きて来れた。

前世では魔法が使えないのが当たり前。


魔法は無くても生きていけるが、食料は無いと生きていけない。

怒鳴られる筋合いはないだろう。


「建築現場で資材が降って来たら、どうすんだよ」

「潰れるね」

避ける術などない。


「水辺で作業してて、うっかり落ちたらどうするの」

「溺れるね」

私は泳げない。


「ユスト様、近くにいた人が魔法を暴走させたら危ないよ」

「まぁ、一緒に巻き込まれるね」

だって私は鎮める力が無い。


「というか、今例に挙げた事故は日常茶飯事なの?そんなのに遭遇したことないんだけど」

逆に問い返すと、憐みの含まれた目で見られた。

え、ウソ、日常茶飯事なの?


「とりあえずユスト、行動は常に誰かと一緒にして」

カールがそう締めくくると、アルトや村の子達に頷かれてしまった。

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