第32話 醸造の村
2つ目の集落。
名前をウヌス村と名付けた。もちろん意味は無い。
「村長はラオね」
私が確認すると、青い顔して頷く。
村民も同様だ。
彼らが見つめる先にいるのはココとシシ。
うん、驚くよね。
巨大なコケコと小さいながら強面のモウシがいたら。
「……コッコ!」
困ったようにひと鳴きしてからココはドスドスと地面にくちばしを突き刺していく。
悲鳴をあげて身を引く村人達。
「ああ、引かないで。あれ、ココの畑づくりのスタイルだから」
逃げ腰の村人を何とかここに留める。
「そう心配するな。ワシらは小麦と大豆の作り方を指導する。それがワシらの食物になるからな。農業の担当は誰だ?」
この村は農業のほかに、アッシー指導で味噌と醤油づくりがある。
他にもコケコがこの村に居るので、油もどきとお酢もどきの果樹を植えて、マヨネーズ作りもしてもらう。
担当分けが大変だ。
「女性陣は卵の採取とマヨネーズ作り。果樹も何種類か植えて、果実の栽培もお願いするわね。果実はミリアが得意だから聞いて」
私が指名すると、ミリアが女性陣に微笑みかける。
「はい。精一杯頑張るので、ご指導お願いします」
代表して答えたのはラオ村長の奥さんでラナさん。
穏やかな感じの人だ。
優し気に微笑むミリアに穏やかなラナ。
うん、女性陣は和む。
対照的に青い顔するのは男性陣。
「で、誰が農業担当なのだ?」
シシが凄んで聞いてくる。
哀れ男性陣。
「村を半分に区切って、海寄りが農業、水田寄りが醸造担当でいいかな」
私の提案に異を唱えるのは、海寄りの男性陣。
村長のラオも入っている。
「いや、これは我々が話し合いで決めたいと思います。少し時間を下さい」
懇願されてしまった。
ココは作業に没頭しているので、シシにどうすると聞いてみる。
「構わんよ。土壌改良に腐葉土を運んでこないといけないからな。それまでに決めておけばいい」
そう言って茶毛モウシを数頭連れて森へと行ってしまう。
「ちょっと大変そうだけど、ヘルマ、フランツよろしくね」
農業部門リーダーと、畜産部門リーダーが苦笑して頷く。
「クロア、アッシーと協力して、頑張ってね。味噌と醤油は私の悲願なんだから」
十分にプレッシャーをかける。
そんなクロアはまだ12歳の女の子で火魔法を使う。
魔法が上手くて、細かな温度調節など得意としているので加工部門の発酵担当だ。
「自信ないですよ、ユスト」
不安そうな顔をしているが、この子はやるときはやる子なので心配はしていない。
「大丈夫、クロアを信頼しているもの」
私の言葉はさらなるプレッシャーになったらしく、うーと唸っていた。
励ましたつもりなのに、おかしい。
読んでいただきありがとうございます。
更新ペース、落ちていてすみません。




