第27話 集落の代表者達
作物の配布を指示してから、2時間もすると各集落の代表が姿を現した。
虚ろな目で、暗い印象。
まずはこの目に光をともさないと、まともな話はできない。
「急に呼び出してごめんなさい。北部に関してのみだけど、領主代行です。よろしくね」
挨拶をざっくり済ませる。
虚ろな目が、絶望へと変っていく。
「こんな子供が……領主様はとうとう我々を見捨てたか」
憔悴しきって、うなだれる。
さっきの作物は手切れ金代わりだとでも思われた様だ。
「私は見捨てる気無いわよ。このままただ食料支援を続ける気もないけど」
さらっと言うと、やっぱりという顔をされる。
私の発言に驚いたのはミリアとミケくらいだ。
他の人間はここから離れた所で、一心不乱に食事をしているのだから。
「まずは、この土地で作物や製品を作ってもらうわ。生活基盤は自分達で作っていくの。それを可能にするために私がいる」
この不毛の土地で何ができるのかと説いたげな目だ。
まぁ、そういう疑問は当たり前だと思っている。
だからこそのサンプル袋。
賢者の袋に入っている物より、こちらの方が栽培環境の縛りが薄い。
コレクションの果物やら、厨房で貰った野菜の種やらを一気に一掴み。
おもむろにバラまいた。
ここは森との境界近く。
中央に比べればマシな土環境。
それにこれだけの種類を蒔けば、どれかは発芽してくれると思った。
案の定、野菜はすぐに芽吹いて高速成長をはじめた。
果物も2種類は成長してくれてる。
勝手に野菜とコラボしながら新種も作られていく。
おお、予想以上の成果。
「作物は育てられるみたいね。あとはあなたたちのやる気だけどどうする?」
目の前で育つところを見せた。
これで育たないという言い訳はさせない。
「作物が……」
呆然と急速成長する作物を見て、集落の代表達の目から涙があふれ出した。
それに慌ててしまう。
「えっと、こんなに急成長するのは今だけよ。すぐに通常の成長速度になるわ。それでも頑張れる?」
この成長が標準と思われたら大変だ。
数分で作物なんかならない。
「頑張らせて……ください」
嗚咽交じりに返事が返る。




