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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第20話 賢者の袋

成果物は側に置いて、そのまま寝たからどうなるかと思ったが……

ちゃんと、持ってこれた様だ。

しかし……


「これ、どうやって運べばいいんだろう」

袋に入るでもなく、そのまま置かれている。


現在私は扉の外。

「フィリップに相談するか」

自分ではどうすることもできないので、とりあえず扉を開けた。


「ユスト様、ようこそ……」

挨拶しかけて、絶句するフィリップ。

私の後ろに、成果物の山を見たからだろう。


「これ、どうしたらいい?」

苦笑して聞く。


「わかりました。まだ早いと思ったのですが、仕方ないですね」

フィリップは奥から袋を持ってくる。

サンプル袋よりは少し大きい。

袋の閉め口には黒い石のついた飾り紐。


「賢者の袋です」

口を開けて成果物に向けると、全てが袋の中に吸い込まれた。


「中に物を入れるイメージで吸い込み、取り出すイメージで出てきます」

全ての成果物を袋に収めると、図書館の中へ入る。

そして机の上に次々成果物を並べていった。


「便利な袋があったんだ」

これがあれば、いくらでも運べる。


「本来、賢者登録して二日目の方が必要になる物ではないんですよ」

苦笑とともに成果物の量を確認して、また奥へ行く。

予想通り大量の本を持って、戻って来た。


「作物19種類、家畜5種類と新種1種類、魚18種類、果物17種類と新品種10種類ですね」

本に成果物をかざして、次々マニュアルへと変えていく。

最後に残ったのは子モウシの毛。


「こちらはマニュアルにできません」

なんと新種で賢者と契約してしまうと、種として確立できないという。

一代限りの変種扱い。


「その代わり賢者の助けとなるべく特殊な能力が付くとされています」

フィリップも前例が無いそうで、よくわからないと言う。


「どんな生物でも生まれた瞬間から、そのことは知っています。覚悟しての契約ですので、大事にしてあげて下さい。」

微笑むフィリップの言葉に、しっかりと頷く。


「さて、残ポイントが10Pで返却分が340P、習得等が3200Pなので現在3850Pです」

予想以上のポイント数にびっくりだ。


「3000P消費で賢者の袋をユスト様に渡せますが、どうしますか?」

なんとポイント消費で賢者の袋が手に入るという。


「ええと、フィリップ。サンプル袋や賢者の袋は私以外が触っても大丈夫?」

なにかの折に他人が触って、効果が喪失したら大変だ。

特に賢者の袋は3000Pも使用するのだ。

これは確認を取っておきたい。


「大丈夫です。ただし、使用することはできません」

フィリップの答えを聞き、決めた。


「そっか、なら、ぜひ下さい」

こんな便利なものは手に入れるしかないでしょう。


「では、こちらに鍵をかざしてください」

よくわからないが、図書館の鍵を出して、袋にかざす。

白銀の鍵が淡く光ると、飾り紐の黒い石が鍵と同じ白銀になった。


「袋の所有者の登録が完了しました」

この袋は登録した所有者しか使えないそうだ。


「本来、この袋は物の出し入れに使用するものではありません。もっと重要な役割があります」

作物は種子の中に栽培環境が記録されている。

サンプル袋でクリアして、賢者が上書きしない限り、栽培環境以外で栽培はできない。

しかし、賢者の袋を使えば、別の場所での栽培を可能にするという。


条件は私の習得済み作物であること。

この袋に種子を入れ、飾り紐を絞って口を締めると石が光る。

この状態になったら準備完了で、取り出す。

種子が最初に植えられた場所でのみ、栽培が可能となる。


ちなみに準備完了した種子は家畜との契約に使ってもいいそうだ。

そりゃそうか。

同じ作物が好物なのもいるし、毎回新しいサンプルを用意するのは大変だ。


話を戻して……最初に植えるのは私でなくてもいいそうだ。

ただし栽培環境をクリア・上書きするわけではないので、別の栽培場所で育てる場合は、土づくり、肥料、水はけなど栽培環境に注意しないといけない。

逆を言えば、種子に記録された場所であれば、土や水や肥料など気を使わなくても、ある程度の作物は育つという。


「なるほど。農作業者をうまく育てられれば、国中で栽培することも可能なのね」

一地方でのみ栽培できる作物は、災害であっけなく絶滅してしまう。

しかし複数個所で栽培できればリスクは減る。


ココやアッシーが絶滅した作物に焦がれていたのを知って、技術の継承とリスクの回避を考えていた。

ちょっと前は食生活の改善がただしたかった。

でも、今はそれだけではない。


「これからの事、考えないといけないね」

とりあえず今日は最低限欲しいサンプルだけを借りることにした。


「フィリップ、米のサンプルをちょうだい。あとは……綿花もあった方がいいな」

米はアッシーの要望。

綿花は食料以外の分野にもちょっと手を出してみようと思ったから。


「今日はもう帰……そうか。ちょっと調べものしてから帰るね」

米が出来れば醤油や味噌が作れるようになる。

これからミルクも手に入るから、チーズなどの作り方も確認しておきたかった。

ネーミングセンスが無さ過ぎて凹む……

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