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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第18話 アッシー

「此度の賢者殿は大変そうだな」


湖から耳あたりの良い優しい声。

先程見たアッシーが姿を現した。

そのまま私をまじまじと見る。


「なるほど。生き物を惹きつける能力か」

そうつぶやいた。


「しかし気の毒だな。人間にだけ、効果が薄いとは」

なんか今、聞き捨てならないことを言われたような気がする。

ってか生き物を惹きつける力って……


農作業に追われている家畜達を見る。

ああ、あれか。

納得。


人間にだけ効果が薄いって……

孤児院の子供達とミリア以外、若干父様を除いて私空気?ってくらいの扱い。

ああ、納得。


転生させた神様、微妙に嫌がらせと思われる能力つけてくれたものだ。

出来ればこんなんじゃないチートが欲しかったです。


「まぁ、我をも惹きつけたのだから大したものだ」

いや、あなたは誰ですか?

どうやら魚ではないようですが。

偉そうだということしかわかりません。


「賢者殿の名は?」

まずは自分から名乗れよ……とか言わないよ。

なんか逆らっちゃいけない雰囲気だから。


「ユスト・アーノン」

フルネームでお答えします。


「なるほど、領主殿の子か」

この時期に領主の子が賢者とは。

そうつぶやき、優しい顔つきになる。


「ユストよ、水田を作る気はないか?」

まさかの単語が飛び出した。

この世界に水田なんて言葉は無いよ。


「もともと作る気ではいます。でも、すぐは無理ですね」

前半の肯定でアッシーはかなり破顔したが、後半での否定で目をひんむいた。

怖い、怖い。


「いや、だって、水田ですよ?まず水路を作って、田んぼを用意しないと無理なんです。どれだけ時間がかかるか……」

言い終わらないうちに、アッシーがふんと鼻を鳴らす。


「そんなこと、我に任せろ」

そういうや、湖を挟んで広大な畑とは反対側にどんどん水路が掘られていく。

湖の水が水路を流れ、田んぼに水を張っていく。


「これでよかろう」

一瞬にして広大な田園風景を作り出したアッシー。

魔法、本当に便利で羨ましい。


うっとりと田園風景を見つめる。

「ああ、これで黄金色の稲穂が実れば圧巻だ」

はっと気づいたようにユストを見る。


「最初に種もみだけ蒔いてくれればいいからな。農作業は我がやる。品質にはこだわりがあるからな、素人には任せられん。ああ、でも、技術は継承せねばならんだろうな。人間でいいから、弟子を数人よこせ」

どうツッコミましょうか、このアッシー。


いやいや、待て待て。

美味しい米を作ってくれるというのだから、むしろ感謝しないといけないだろう。


「ちなみに作ったお米っていただけるんですか?」

これ重要。


「当たり前だろう?我は米を食わぬ」

おおう?

何のために稲作をやりたいのだろう、このアッシー。


「ああ、昔の賢者の面影を追っているだけだ」

まるで心を読んだかのようなタイミングで返事が来た。

「今は絶滅して途絶えた米作りだが、我の唯一の主であった賢者が愛した作物だ」


消えてしまったものを追い求めるという点では、ココと同じなのだろう。

というか、昔の賢者達、技術の継承はちゃんとしといてよ。

絶滅した作物に焦がれているの、結構多そうよ?


……これは、似たような事例がまだ出てきそうだ。

当分は家畜の押しかけを覚悟しよう。


「わかりました。今回の収穫物でポイントが入れば、すぐにでもサンプルを持ってきます」

私の答えに満足したのかアッシーは湖の中に潜っていった。

そしてすぐに浮上する。


「これも持っていけ。さらにポイント増えるぞ」

そういって、どかどかと魚が陸に打ち上げられた。

全部で18匹。

この湖で成長した魚の全種類らしい。

前話まででちょっと修正。

家畜の「捕獲→契約」にしました。

なにせ主人公、1種類も自力で捕獲していなかったから……

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