第15話 二日目の拠点
拠点へは、屋敷から30分。
子供の足ではかなりの距離だ。
もう少しくらい近くても良かったかなと思わなくもないが、屋敷の者に知られるリスクを考えればこのくらい仕方がないのだろう。
家畜を飼ったり、作物を育てたり、私がやろうとしていることはこの世界では珍しいこと。
いろいろと試していきたいので、大人に取り上げられるのは嫌だった。
重いリュックを背負い直し、大きく深呼吸する。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
気遣いながら先を歩くミリアが振り返る。
手入れのされていない森は獣道だ。
ミリアが先を歩いて、歩きやすいようにしてくれていた。
「大丈夫。これは私が運ばなきゃいけないものだから」
大量のサンプル袋が入っているのだ。
借主として所有者が登録されている袋。
他の人間が触っていいものか、確認取るのを忘れていた。
なので、自分で持つしかない。
賢者の図書館から持ってきたものは全てリュックの中。
サンプル袋の中は、私の果物種子コレクションの中でも特に気に入っているものを優先で入れてある。
重さ倍増である。
息を切らせながら、ようやく拠点に到着。
さて、すぐに作業だと意気込んでいたのが……出鼻を挫かれた。
「コケコ、すごいですね」
拠点に着いて、ミリアの最初の言葉だ。
うん、私もそう思う。
目の前には広大な土地が耕されていた。
湖畔に集められているのは、切り倒した木材。
その近くには、ドアのない簡素な小屋がいくつもあった。
「よく一晩で作ったわね」
感心しきりだ。
近くの小屋をのぞいてみる。
中は藁が敷き詰められていた。
昨日の小麦の収穫で出たものだろう。
快適そうな空間。
住み着いているのは、たくさんのコケコ達だ。
ココは馬並みの大きさだったが、他のコケコはニワトリサイズであったのにほっとする。
「コッコ!」
小屋の中をのぞいていると、ココが私を見つけて走って来る。
「ココすごいね。こんなに作業進んでるなんて、びっくりしたよ」
笑顔で褒めと、軽くひと鳴き。
人間でいうところの「まあね」くらいだろうか。
態度は軽いが、単に照れ屋なだけのように思う。
そんなココの性格分析していると、くちばしで私の袖を引っ張ってくる。
どうやらコケコ達の小屋から少し離れたところにある小屋に連れていきたい様だ。
「あそこに何かあるの?」
尋ねると、しきりに頷くココ。
ドアのない小屋。
他の小屋よりはやや大きいように思う。
そっと中をのぞくと……
「本物?」
そう呟かずにはいられなかった。
そこには探すつもりでいた白毛のモウシがいた。
ニワトリサイズの小さなモウシ。
その横には、ひよこサイズの茶と白の斑毛をした子モウシもいる。
「あなたは……」
モウシが私に気付いた。
そして、なんと人語を話す。
驚きよりも言葉が通じる喜びが勝った。
たぶん従えるものなのだと感じたからだろう。
親にも、子にも。
「モウシの長であってるよね?」
疑問形で尋ねはしたが、ほぼ確信を持っていた。
そしてやはりモウシは頷く。
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