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賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
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第12話 成果物

目の前にはアンティーク調の大きな扉。

それ以外は何もない空間。


「来れた」

ほっと溜息をつく。

夢の中でのみ来れる図書館というのも不安になるな。


「えっと」

持ち物の確認。

右手にこの扉の鍵。

左手にはサンプルの入っていた袋とココの羽根。

背中にはパンパンに膨らんだリュックを背負っている。


サンプルの袋にはココが作った会心の出来の小麦の種子入り。

小麦の成長は3期目で止まり、その時のを入れてきた。

ココの羽根は、なぜか持たされたもので、背中のリュックもココの指示。

果物の種を植えた場所からどんどん増殖した果ての果実。

果物の方も孫木で成長が止まった。


私が蒔いた種は8種類。

しかし何故か出来た果物は10種類。

全ての種類の果物をリュックに詰めてきた。


荷物は自由に持ち込むことができるんだな。

しみじみそう思う。

持ち込み方がわからなかったので、とりあえず枕元に置いて寝たが……正しかったようだ。


「よし」

忘れ物が無いことを確認して、鍵で扉を開ける。

音もなく開く扉。

賢者の図書館へとつながった。


「ユスト様、ようこそいらっしゃいました」

図書館の中央で深くお辞儀するフィリップ。


「フィリップ、さっそく聞きたいことがたくさんあるんだ」

大荷物をもって、フィリップの方に駆け寄る。


「……そのようですね」

私の荷物の量を見て、絶句しかけてた。


「まさか一日でその量を持ち込まれるとは思いませんでした」

苦笑を浮かべている。


「ここに持ち込んだのは、コケコの指示。私には意味が分からないんだ」

とりあえず机の上にサンプルの袋、ココの羽根、リュックの中の大量の果物を並べる。

その内容にまたフィリップは目を見張る。


「サンプルの習得のみならず、家畜の契約に新品種の開発とは……」

机に並べられた成果物に触れながら、呟いていた。


「わかりました。ご説明いたしましょう」

フィリップはそう言うと、いったん奥へ行き、すぐに戻って来た。

その手には大量の本がある。


「しばらくはサンプルの習得がメインになるだろうと考えていた私が甘かったようです」

フィリップは大量の本を机に置く。


一番上にあった一冊を取り、その上にサンプル袋の中の小麦ひとつまみを置く。

すると本が光、本に吸い込まれるように小麦が消えた。

驚きのあまり声が出ない。

そんな私に微笑むフィリップ。


次の一冊を取ると、今度はココの羽根を置く。

先程と同じように、本が光、羽根は消えた。

同じ作業を繰り返し、果物もすべて本に消えていく。


「サンプルの習得や家畜の契約など、成果はすべて育成マニュアルになります」

成果物が吸い込まれていった本を差し出された。


その中から小麦と書かれた本を開く。

中には気候、土壌、肥料など育成環境から、蒔き方、手入れの仕方、収穫の仕方など育成方法まで載っている。

そこには芽吹いた青葉を踏みつけて強くさせるという稲踏みも書かれていた。

ココが正しいのだと知る。


「家畜に関してですが、一定の条件が必要です」

多くの種類の生き物にはその種の長がいるという。

その長を捕まえて、サンプル袋に入っている種子を少し与えるそうだ。

長がそれを受け入れると契約完了で、その種の生き物は与えた種子の作物を餌に飼育が可能になる。


「……だからか」

コケコは私に突進してきて、ポケットの中にあったサンプルの種子をねだった。


「コケコは小麦が好物です。昔、世界には存在していたのですが、絶滅してしまったので、賢者の存在を待ちわびていたのですよ」

コケコの遺伝子に小麦の情報が組み込まれているのだという。

だから存在しないのに欲するのだそうだ。

それはとても不幸だと思う。


ものすごい勢いで突進してきた必死のココを思い出す。

余程の好物なのだろう。

あの栽培のこだわりも半端なかった。

でも遺伝子に組み込まれている情報がそうさせるのだと思うと、目頭がちょっと熱くなった。


「契約した家畜の長の体の一部をここへ持ってきていただければ、マニュアルを作成できます」

フィリップに渡された本の中からコケコと書かれた本を開く。

餌は小麦(雑食)と書かれていた。

なるほど。


「質問。長は見た目で判断できるの?」

何か目印がないと見分けがつかないだろう。


「長と賢者にはルールがあります。賢者は長を従えるもの。長は賢者に従うもの。見ればわかると言われています」

フィリップ自身はどういうものかわからないらしい。

しかし自分で体感した感覚なので、納得できた。


「それと、長が賢者を信頼に足りないと判断すれば、拒否されることもあるので、力ずくでの契約はお勧めしません」

過去にそういうのがいて、賢者に反抗的な長もいるそうだ。

いきなり攻撃を仕掛けられることもあるので気を付けるようにと注意された。


「さて、サンプルの袋についても説明が必要ですね」

私が返品した袋を出す。


「これは種子の中に記録されている、栽培環境の記録を消すものです」

全ての種子には栽培環境が記録されていて、その環境以外では育てられないそうだ。


サンプルの袋にはその環境記録を消し、貸り主の賢者が新たな環境記録を上書き出来るという。

ただし一度でも袋の中身を空にしてしまうと、その効果は消えるそうだ。

上書きの完了にはだいたい3期作くらいかかるという。

上書きが完了すると成長速度が通常に戻るので、借りたサンプルの返却は、上書き完了したものを持ち込んで欲しいとのこと。


どうやら、借りたのは小麦だけだが、一緒に植えようと果物の種も同じ袋に入れたのが良かったらしい。

果物も私が植えたものだけが芽吹いて、ミリアの植えたのは反応が無かった。

それも借り主が私で、賢者である私が最初に蒔く必要があったためだ。

ココが最初の小麦の種蒔きを私にさせたのも同じ理由。


「新品種の開発についても説明しておいた方がいいでしょうね」

すでに知らずに開発して持ち込んでいるのだから、説明は必須と判断したらしい。


同じ系統の植物を同じ場所に植えて交配させると、まれに実が成り、新品種になるという。

種子に栽培環境を登録している段階で実践した人がいなかったのでフィリップも知らなかったが、成功することもあるのだと実証された。


「最後にポイントについてです」


初期値は100P。

小麦のサンプルを借りたので-50P。

今回、借りた分を返却したので+50P。

習得ポイントが+20P。

また、家畜の契約が+200P。

果実8種類の合計習得が+130P。

新品種開発2種類の合計が+200P。

現在の私のポイントは650Pだそうだ。


これだけあると、いろいろ出来るので悩んでしまう。

日付変わっちゃいました……

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