第7話 書斎は宝庫
ミリアがしぶしぶながらも朝食を終えてトレイを片づける。
その空いた机の上に、参考になりそうな本を積んでいく。
「私とミリアだけじゃ無理か」
予想以上に森は深い。
屋敷から離れれば、木が密集していて、かなり手を加えないと農作業には使えそうにない。
ミリアは水の魔法なので土木系には向いていない。
木の伐採には風魔法。
土壌の開拓には地魔法。
「孤児院の子達に協力してもらうのがいいわね」
もともとそうなるだろうとは思っていた。
森の使用許可をもらうための交渉材料に孤児院を使う気でいたから。
「アルトを説得できるでしょうか」
ミリアが困ったように尋ねてくる。
何をするのか、まだミリアには説明していない。
それでも地下水を汲み上げると言ってあるので、常識外れのことをしようとしているのだと予想はついているようだ。
そんなよくわからない計画にアルトを巻き込むのは難しいと首をひねる。
アルトは孤児院の子供達のリーダーで16歳になる。
地魔法が使えるし、ユストが勉強を教えた一人なので、使える人材である。
何としてでも説得しないといけない。
「ま、大丈夫でしょう」
ミリアの不安に軽く答えとく。
書斎を物色していたら、アルト対策の賄賂を見つけたのだ。
建築に興味を持っているアルト。
孤児院の補修は喜々としてアルトがやっている。
しかし地魔法で仕上げていくのは、魔法使いの力量に影響されるし、耐久性がイマイチ悪い。
常々今は消えてしまったとされる魔法を使わない伝統技法を知りたがっていた。
それをこの書斎で見つけたのだ。
一番奥の天井付近で、埃をかぶってタイトルも読めないような状態になっていた本。
かなり昔のご先祖様のコレクションだろう。
凝り性が幸いして、びっくりするくらい詳細な図解付きの技術書がシリーズでそろっていた。
これを出されれば、私の頼みを拒否できるわけがない。
森での農場候補もいくつか絞れたし、あとは父様を説得する材料だけ。
そう思った矢先に、ドアが叩かれた。
「こんな時間に誰かな」
ここは基本的に家族しか使えない。
その家族も父様以外はアーノン領にいない。
父様は視察中だし……
「ユスト、こんなところにいたんだね」
外から聞こえてきたのは父様の声。
瞬時にして緊張が走る。
何故この時間に屋敷にいるのか。
頭の中は疑問符だらけだ。
真っ白になった頭から何とか脱出して、机の上の本を片さないと。
そう思い至ったあたりで、ドアが開いた。
返事もしてないのに、勝手に開けないでよ、父様のバカ。
頭の中で悪態付くが、そもそも返事をしなかった自分が悪い。
八つ当たりなのは十分承知だ。
突発的な事態に弱い自覚はある。
思わずミリアを見てしまい……微笑まれた。
今後の展開……いろんなパターン考えてたら絞り込めなくなってきた(汗)
手さぐりで話書きつつ、迷走中。




