CSFC
「話は変わるけど、もう一つ気になるのがCSFCがどうなってるか、だよな?」
「そうやって、また話を逸らす! ってか、CSFCはもういいでしょ!」
「でも、気になるだろ?」
「……なるけど!!」
CSFCは、つくづく便利である。こんな場面にも使えるのだ。
優奈が嫌がるほど、CSFCの重要性が増していく。
こうなったら何が何でも力を貸してもらうべきだろう。
「CSFCの協力は必要不可欠だからな。ちょっと遠田に電話してみるよ」
遠田とは頻繁に連絡を取るので、通話履歴を開けば、すぐ項目を見つけることが出来る。
そして、通話ボタンを押した瞬間――
「戸山か。なんだ?」
と応答が帰ってきた。
「出るの早いな」
「こっちから進捗状況を連絡しようとしてたところだったんだよ」
「そっか。なるほど。で、どういう感じになってるんだ?」
「今は中学の先輩の家に居るんだが、これからCSFCとの待ち合わせ場所に向かおうと思ってる」
「どこに集まるんだ?」
「川沿いの道を、上流へ登って行くとゴルフ練習場があるだろ? その更に奥に、採石場の跡地があるらしい。そこだよ」
「採石場?」
「石材を切り出す――」
「分かってるよ。疑問は、なんで採石場なんて場所かってところだよ」
「ああ、その理由は聞いてないな。でも、決着を付けるには、相応の雰囲気がある場所だろ?」
そうだな。
採石場と言えば、思い当たることが無いでも無い。
「遠田、気をつけろよ。火薬とか、爆破とか、改造人間とか。何が出てくるか分からない」
「分かってるよ。私にも、それくらいの一般常識はある」
それを一般常識と言われてもなあと思うが、それを指摘する空気でも無かったので、口には出さなかった。
しかし、採石場か。
CSFCは……あいつは何を考えてるのだろう。
そもそもがCSFCというイカれた組織を作るような奴だ。俺達の常識の範疇に収まらないのは当然の話だが。
「ところで、そんな山奥に、どうやって行くんだ? タクシーだと嫌がられるだろ、たぶん」
「それで先輩の家に来てるんだよ。先輩は、中型のネイキッドに乗っててな。前もニケツでツーリングに連れて行って貰った事があるんだ」
「それって大丈夫な奴か?」
「大丈夫だよ。戸山が思ってるのとは違う。法令遵守だ」
「安心したよ」
コンプライアンスは大事である。
「何の問題も無い。女の先輩だしな」
「まさに遠田の人脈って感じだな」
「その発言については一言も二言もあるが、そろそろ出発の時間だ。電話切るからな」
遠田はそう言った……が、タッチミスか何かだろう。しばらくしても、通話が切れる様子は無かった。
「彩音、準備はいいか?」
電話の向こうで、女性の低めの声がする。
「はい。話は終わりました。お待たせしました。戸山は恩人なので、ちゃんと報告しておきたかったんです」
「そっか……わたしの方も準備OKだよ。マロンの世話の仕方もメモに残してきたし、じーちゃんの仏壇にも手を合わせてきた。さあ、そろそろ行くかな」
その語り口は、そこはかとなく覚悟を感じさせるものだ。
「先輩、本当にすみません。こんな事に巻き込んで」
「いいよいいよ。抗争となれば、むしろ血が騒ぐってもんだ。気合い入れて行こうぜっ!」
「はい!」
先輩もキャラ濃いな。
けど、色々と誤解が生じてないか?
なんてことを思いながら、通話を切った。




