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62.公爵邸へと戻ります。

 ラザフォード殿下は、国王陛下の弟だ。

 幼い頃から、ラザフォード殿下は、王位に興味が全くない、そう言っていた。

 興味があるそぶりすら、見せたことが無かった。

 チャラチャラとおねいさんを侍らせて、フラフラと外遊する、遊び人の王弟殿下。

 甥のアイザックを可愛がり、子供のように一緒に遊び、剣や勉強を教えることも多々あった。


 だから、なんの疑いも、抱かなかった。

 ラザフォード殿下は『ああいう人』。そう、思い込んでしまっていた。

 だけど、習ったじゃないか。ラザフォード殿下は、『王位継承権第二位』なんだ。

 興味がない、面倒だと言っていたのに、継承権は放棄していない。

 今もまだ、王位継承権第二位の地位に居続けている。


 メルディアは、男系継承。現国王の直系の男子から継承権が与えられ、現国王に男子が居なければ、先代国王直系の男子と受け継がれる。


 先代の王妃殿下と陛下の間には、姫しかいない。

 アイザックが生まれるまで、王位継承権一位は、ラザフォード殿下だったんだ。


 ラザフォード殿下は、何を狙っていたのだろう。

 私がアイザックの婚約者を降りると言った時、あんなに怒ったのは、何故?


 頭がぐるぐるして、考えが纏まらない。

 フレッドがここに居たら、きっと落ち着くことができるのに。


「とりあえず……。とりあえず、そうね。アイザック殿下とビアンカの所へ、行きましょう……」


 こめかみをぐりぐりと解す。


 そう。ビアンカは、アイザック王子は、王宮から使いが来て呼ばれたと言っていた。

 私は事務員の女性に視線を向けた。


「アイザック王子に王宮から使いの方が来ていたと思うのですが、お部屋はどちらにご案内を?」

「は? ……いえ、王宮からは特にどなたもお見えになっておりませんが」

「は? そんなはずはありませんわ。妹の話では、事務の方が呼びにいらしたと言っておりましたもの」

「事務員が、ですか?」


 受付に居た女性は、ぐるりと室内を見渡し、一人の男性で視線を止めた。


「ライザー、あなた、一時限目が終わる前に飛び出して行ったわよね? どこへ行ったの?」


「は……」


 ライザと呼ばれた男性は、さぁ、っと青ざめた。

 え。


「あの……。ブレアム先生に、一時限目が終わったらすぐに急いで一学年のBクラスに来るようにと……。すぐに帰されてしまったんですが……」


 ――ブレアムって、あのBクラスの担任……?

 あの教師の嘘ってこと?

 ……じゃ、ビアンカは?


 頭がくらくらする。

 ああ、どうしよう。しっかりしなきゃ。

 ふらついてしまったらしい。少し離れて控えていたリティとフローラが抱き着くように支えてくれる。


「フローラ、アウラリーサ嬢を連れて教室に戻ってろ! おい、リヒトは俺と来い! 殿下の目撃情報探すぞ!」


「私も王子様探すぅっ!!」


「おま……、あ――っ!! わかった、来い!」


「うんっ!!」


 ヴァルターとリヒト、シャーリィが駆けだしていく。


「さ、アウラリーサ様。教室に戻りましょう?」

「お嬢様、歩けますか?」

「ええ、ごめんなさい」


 フローラとリティに支えられ、私は一度、教室へと戻っていった。


***


 教室に着くと、頭が回らない私に代わり、フローラが皆に説明をしてくれる。


「アウラリーサ様は、一度公爵家にお戻りになられた方が良いわ。王宮へは公爵閣下が手配してくださると思います。学園の中は、ヴァルター様が探して下さっているのでしょう? 何か分かりましたら、わたくしが公爵邸に使いを出しますから屋敷でお待ちになっていて? 担任と教師には、わたくしから早退したことをお伝えいたしますわ。フローラ様、アウラリーサ様に付き添って差し上げて下さいませ」


「畏まりましたわ」


「ヴェロニカ様、有難うございます……」


 心がちょっと、弱ってるのかも。私は、ヴェロニカにぎゅぅっと抱き着いた。

 一瞬驚いたように、体を強張らせたヴェロニカは、すぐにふっと力を抜くと、私の背中に手を回し、あやす様にぽんぽんと叩いてくれる。


「しっかりなさいませ、アリー。まだ、殿下もビアンカ様も、何かあったとは決まっておりませんわ」


 愛称で、呼んでくれた。頼もしいなぁ、ヴェロニカ。


「はい、有難う御座います。……ヴォニー」


 私が愛称で呼び返すと、ヴェロニカ――ヴォニーはふわりと綺麗に笑ってくれた。


***


「お嬢様!?」


 私がフローラとリティに支えられ、馬車の発着場まで行くと、花壇の脇に腰かけていたフレッドが慌てて立ち上がり駆け寄ってきた。


「フレッドぉっ」


 フレッドの顔を見たら気が抜けた。涙がぶわっと出てきてしまう。

 私がフレッドにしがみついていると、フローラがまた事情を説明してくれた。


 私の体をさすっていたフレッドの手が、ピクリと強張る。


「……畏まりました。フローラ様も同乗してください。公爵邸へ戻ります」

いつもご拝読・いいね・ブクマ・評価・誤字報告、感謝感謝です!

ちょっとこの先、感想をクローズしようと思います^^;

筆者が楽しく最後まで書き続けられるように、ご了承の程よろしくお願いします。

今日はもう一本いけそうなので、次の更新は21時くらいを予定しています。

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