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24.金属の板、探します。

 鉄、鉄、鉄。鉄の棒。

 うーん。どこに行けばあるかな。


 廊下を歩きながら考えていると、扉の前にウォルターさん。


「ウォルター。手紙を出してきてくれたんですか?」

「ええ、今使いをやらせました」


 そうだ。ウォルターさんなら知らないかな?


「ねぇ、ウォルター。このくらいの長さの鉄の棒が欲しいの。どこに行けば貰えるかな?」

「鉄の棒、で御座いますか? ……領地なら鍛冶職人が持っていると思いますが、こちらですと……屋敷の修繕係なら持っているかもしれません」


 修繕係、か。


「そっか、ありがとう! 行ってみる!」


 フレッドに案内してもらって、修繕係さんのいる小屋へ連れて行ってもらう。

 修繕係さんの小屋は、木々に囲まれた丸太小屋で、道具を置く場所なんだけど、テーブルと椅子が置いてあって、普段休憩はここで取ってるらしい。


 フレッドが扉を叩くと中からパイプを咥えたおじさんが出てきた。


「おや、これは騎士様とお嬢様。何か御座いましたでしょうか?」


 私とフレッドを見ると、慌てたように被っていた帽子を脱いでパイプを口から取って頭を下げる。

 あちゃー。脅かしちゃったか。


「休憩中にごめんね? あのね、このくらいの長さの、このくらいの幅の鉄の棒って無いかな? できれば、このくらいの厚みの鉄の板だと嬉しいんだけど」

「ふぅむ。えーと、あれがあったかな。ちょい、お待ちくだせぇ」


 おじさんは視線を上に上げて、考える仕草をすると、小屋の扉を開けっぱなしで奥に引っ込んでいく。

 私とフレッドは扉越しに中を覗き込んだ。


 小屋の中は棚がいっぱいあって、沢山の木箱の中に道具が山積みになっている。

 ふぇ~……。


「こんなもんしかございませんが……。こんなもんで宜しいでしょうか?」


 おじさんは腕と脇腹に挟むみたいにして、シャツで持ってきた金属の板を拭いてから差し出してきた。

 錆の浮いた、扉に使う金属の板だった。ボルトを通す穴が三つくらい空いてる。


「うん!」


 おじさんが差し出した金属の板を受け取って、軽く手首だけで振ってみる。

 うんうんうん!! いいね!! イメージピッタリ!


「あああ、お嬢様、お手が汚れますよ」

「大丈夫! 素敵!! 理想的だわ、有難う、おじさん!」

「いえいえ、ですがお嬢様、こんなもの何になさるんで?」

「ふふっ。武器よ」

「武器、でございますか?」

「そう。素振りの練習したいなって思って。剣だと私には無理だったけど、ナイフなら出来るかなって。ほら、これの持つところに布を巻いたら手も痛くないわ」


 ――まぁ、練習したいのはナイフじゃないんだけどね。


「ああー、なるほど……。それでしたら、ちょいとお待ちくだせぇ。あ、それをこちらに」


 おじさんに手を出され、私は握っていた金属板をおじさんに返した。

 おじさんは研磨機って言うのかな?輪切りにした丸太みたいな木に皮を張った機械の前に椅子をひっぱり、柄杓で桶に入った水をかけ、ペダルを踏んで丸太を回し、金属の板の錆を取ってくれる。

 そしてまた脇と腕で板をごしごししてから、木箱に突っ込んであったヨレヨレの革を取り出して、板の上でバシバシ叩き、ギリギリと金属の板に巻いていく。それから紐を取り出して、しっかり縛ると、差し出してきた。


「これでどうでござんしょ?」

「うっわぁ!!」


 錆が浮いてボロボロだった金属の板は、あっという間にピカピカになった。


「すごいわ、おじさん! 有難う!」


 いぇーい、嬉しいからおじさんにもしてあげちゃおう! お嬢様サービス!

 ぎゅぅっとおじさんに抱き着くと、おじさんは、ひぇっと声を上げて驚いて、それから楽しそうに声を上げて笑った。


***


「それで素振りとは考えましたね」


 フレッドが面白そうに笑う。最初の頃は真面目な顔ばかりだったフレッドが、最近はこうしてよく笑ってくれる。笑うと少しだけ幼さが覗く。二十歳くらいと思ったけど、もう少し若いのかも。


「うん、目指すのは、格好いい令嬢だからね! 私、格好いい女になるの!」


 ぐっと拳を握って宣言すると、フレッドは「では、私はお嬢様に抜かれないように、精進いたします」と、楽しそうに笑ってくれた。


 屋敷に向かっていると、リティが息を切らして駆けてきた。


「お嬢様――!」


「あれ? リティだ。どうしたの?」


 歩いてリティに近づく。


「お嬢様、アイザック第一王子殿下が、お見えになっています……っ」


 ――へ?

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