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22.雇って下さるそうです。

「最近、アリーは所作が随分と綺麗になったわね」


 あれから数日。朝食の時間、お母様にそんなことを言われた。

 恥ずかしいけど、嬉しい。特訓の成果は出ているみたい。

 毎日ラジオ体操は続けているし、お散歩も欠かさない。石も上手に渡れるようになれた。

 最近は少し大きな石に板を置いて、バランスを取ったりして、遊びながら鍛えてる。

 体幹が良くなったことで姿勢も良くなったから、小公女感は出てきたんじゃないだろうか。


「リティとフレッドも、随分と体力がついたと言ってたな。頑張ってるね。偉いぞ、アリー」

「ありがとうございます」


 えへへへへ。いっぱい褒められた。照れくさい。


「なら、約束をしていた護身術を教えてくれる人も探さないとだなぁ」


 ははははは、っと笑うお父様。

 ……まだ探してくれてなかったのか。

 まぁ、貧弱過ぎて護身術教えるのも心配だったんだろうな。


「後は刺繍も頑張らなくてはね?」

「ぁぅ……」


 お母様が水を差す。

 ぅぅ。頑張ります、ハイ。

 とりあえず、課題のお花、仕上げよう。

 淑女の道は厳しい。


「――そうだ。アリー。食事が終わったら、お父様の部屋へおいで」

「はい、お父様」


 ――これはきっと、ビアンカの報告が届いたんだ。

 私は姿勢を正し、頷いた。


***


「クロエの娘の報告が届いたよ」

「はい、そうかなって思いました」

「結論から言うと、彼女は今、ピエナの町で、父親と母親の三人で暮らしてる。父親はマークと言ってね。彼は農園で働いていたそうだけど、怪我をして今は休業中だそうだ。今は母親が小物に刺繍を入れる仕事をして、ビアンカも花売りをして家計を助けているらしい。それで、幾つか分かったことがある。ネーヴェ男爵の妹、クロエだけれど、彼女は先代の男爵夫妻の実の娘ではないそうなんだ。先々代男爵の妹夫婦が亡くなって、先代の男爵が引き取ったんだそうだ。だから、先代男爵から見て姪だね。ネーヴェ男爵は事業に失敗して負債を抱えていたから、クロエには随分辛く当たってたそうだ。だから、失踪当時、クロエの行方は探される事が無かったようだね。当時男爵家に仕えていた使用人の一人が教えてくれた。先代男爵はクロエと縁を切っていたそうだよ」


 そうか。だから、クロエは逃げだしたのね。私は黙って頷く。


「今も生活はかなり苦しいみたいだ。アリーは、ビアンカと友達になりたいんだったね?」

「はい、そうです」

「ん――。なら、提案なんだけどね。ビアンカ親子を公爵家で雇おうと思っているんだ。もちろん、クロエ達が承諾をしたらだけどね。そうすれば、侍女見習いとしてアリーにビアンカをつけてあげられる。使用人にはなるけれど、きっと仲良くなれると思うよ。勿論、クロエにも、マークにも働いて貰うつもりだ。給金は十分に出してあげられる」

「お父様っ!!」


 思わず、私はお父様に抱きついた。

 私も、同じことを考えていた。ビアンカを我が家の使用人に迎えられないだろうかって。

 でも、彼女の両親から、彼女を引き離すのは気が引けた。

 彼女の両親をとは、私も考えたけど、そこまでお願いしていいものか悩んでいた。


 なのに、ああ、お父様ったら!!

 まるで私の心を読んだみたいじゃない。

 もう、私のお父様、最高だわ!


「ありがとうございます!! お父様、私もクロエ様にお手紙を書きます。一緒にクロエ様に届けて頂けますか?」

「ん? おや? お父様は、クロエに手紙を出すことを伝えたかな?」

「いいえ。でも、マークとビアンカは文字を読めなくても、クロエ様は元貴族ですもの。字は読めるでしょうし、お父様が使用人だけを向かわせるだけなんてなさらないと思って」

「ははは。そうだね。相手が誰でも、礼儀は必要だと思うよ。さぁ、お手紙を書いておいで」

「はい、私もそう思います! 有難うございます、行ってきます!」


 私はお父様の執務室を飛び出して、急いで部屋へと駆け戻った。

ご閲覧、いいね、ブクマ、評価、誤字報告、いつもありがとうございますっ!!

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