12.お母様と過ごします。
早速色々やるぞ! ……と意気込んだものの、お子様の睡眠時間は長かった。
早々と撃沈。
色々あったし、やむを得まい。
そしてお目覚めはすっきり!
昨日のお薬のお陰で筋肉痛もすっかり消えている。
「おはようございます、お嬢様。今朝もお早いお目覚めですね」
「おはよう、リティ! お着換えはちょっと待って、やることがあるの!」
「やること、で御座いますか?」
そう! 朝! といえば、これよ!
「はい! リティもご一緒にー!」
「え? は?」
目を白黒させるリティの前で仁王立ち。
「ちゃーんちゃーかちゃかちゃかちゃーんちゃーんかちゃかちゃかちゃらりらりらりらりらりららーん」
高らかに歌いだした私に、リティ、口が開いちゃってる。
「ハイ、ちゃーんちゃーんちゃーんちゃーん、ちゃーんちゃーんちゃーんちゃーん、ちゃーんちゃかちゃららりらちゃーんちゃーかちゃーんちゃーん、ちゃーんちゃかちゃかちゃかちゃらりらりーん、ほら、リティも!」
「え、あ、ハイっ!!」
オロオロしてたリティ、わたわたしながら私の真似をする。
えへへ、一歩遅れてぎこちなく真似をするリティ、かーわいい。
やばい、なんか楽しい。
ラジオ体操でこんな笑ったの初めてだ。
しっかりガッツリ体操すると、全身じっとり汗をかいている。
んーっ、気持ち良い!
リティもはぁはぁ、息を切らしてる。
……リティも体力無いなぁ。
よし。これから毎朝付き合わせよう。
***
汗をかいたから、お風呂に入れて貰って、着替えを済ませ、玄関ホールへと向かう。
お出かけ前の父とお見送り中の母が居た。
「アリー、ずいぶんと早いね。お父様をお見送りに来てくれたのかな?」
「お父様ぁー!」
いいえ、お散歩ですなんて、嬉しそうにデレデレしてるお父様には言えません。
昨日の威圧感が嘘のようだ。
ぽすんっと抱き着くと、そのままぐぅんっと持ち上げられた。
これは、高い高いか……?
「ふふふっ。アリー、良く眠れた?」
「はい、お母様! お父様、お出かけですか?」
「ああ、お城に行ってくるよ。昨日の事を陛下に報告しなくてはいけないからね」
「そうなんですね。今日は早く帰っていらっしゃる?」
「ああ、午後にメイナード子爵が会いに来るとお手紙を貰ったからね」
「わかりました! お気をつけて!」
「ああ、いい子にしているんだよ。それじゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ、あなた」
馬車に乗り込む父を見送ると、母はしゃがんで私に目を合わせた。
「アリーは早起きをしてお散歩かしら? お母様もご一緒してもよろしくて?」
「はい! 是非ご一緒したいです!」
「奥様、上着をお持ちします」
「ええ、お願い。じゃ、行きましょうか」
***
三十分くらいかけて、お庭をゆっくりお散歩する。
途中、庭師のお爺さんを見かけて、お母様に断ってからお爺さんに駆け寄って挨拶をした。
まだまだ壁は高そうだ。小さな公女にどう接すればいいのかわからないみたい。
まぁ、少しずつ慣れて貰えばいいよね。焦らず、ゆっくり。
そうだ。
「お爺さん、この花を1つ、貰えますか?」
「こちらで御座いますか?」
おじいちゃん庭師さんが、マーガレットっぽいオレンジ色の花を1本、鋏で切ってくれる。
葉っぱも綺麗にとってくれた。
「ありがとう!」
お花をもってお母様に駆け寄った。
「お母様、お花を差し上げます!」
「まぁ」
――昨日、夫人を追い詰める為とはいえ、お母様を悪く言ってたことも暴露しちゃったもんね。
傷つけたかもしれないから、お詫び。
「嬉しいわ。ありがとう、アリー。後でお部屋に飾るわね。アリーは使用人達に挨拶をしているの?」
「はい! お屋敷で働いてくれている方達ですから。仲良くなりたいんです」
「そう、偉いわ」
にこにこと嬉しそうに笑いながら、お母様が頭を撫でてくれる。 えへへへへ。
やっぱりお母様、所作がとっても上品だ。
せっかく一緒にいるんだから、今聞いちゃうか。
「お母様、お願いがあります」
「あら、なぁに?」
「メイナード夫人を辞めさせてしまったでしょう? だから、次の家庭教師が見つかるまででいいので、お母様からマナーを教わりたいんです。お母様はとっても素敵なんだもの。優雅だし、上品だし!」
「あらあらあら」
お母様はくすくすと笑う。
「勿論良いわ。でも、どの道メイナード夫人にはもう少しで辞めて頂く予定だったの。お城でね、王妃様になるお勉強をしなくてはいけないでしょう?」
……っは! 王妃教育!!
そっか、小説なんかでも出てきてたわ、そういえば!
うぅーむ。早くも計画が頓挫しそうだ。
ビアンカ・ネーヴェも、一日二日で探し出せるもんでもないだろう。
とっとと婚約解消して、王妃教育もビアンカにパスしちゃおうとか考えてたけど、流石にそう簡単にはいかないよね。
まぁ、探して貰う手間が省けたと思えば、良いかな?
王妃教育が始まるまで、まだ少しありそうだし、正直ちょっと受けてみたいし。王妃教育。
「じゃぁ、お城に上がるまで!」
「ええ。今日の午後はお母様と一緒にお勉強、しましょうね」
今のうちに、いっぱいお母様との時間を過ごすのも、良いかもしれない。
***
食事を終えてから本を読む。
わからない所は、リティが教えてくれた。
夢中で読んでいると、あっという間にお昼。
ここって朝はすっごい量の食事が出るけど、お昼はサンドイッチにスコーンとかの軽食だ。
皆別々で自室とかで食べるみたいだけど、今日はお母様が誘ってくれた。
食事の時間もマナーの授業でもあるからね。
お母様の真似をして、背筋を伸ばしてパンくずを落とさないように気をつけて食べる。
背筋を伸ばすだけで、結構疲れる。
慣れるまでは大変だ。
お母様は、教えるのも上手だった。
ゆっくりと見本を見せてくれて、上手く出来たらすごく褒めてくれる。
ほんと、国王陛下、余計な事してくれたよ。
最初からお母様に教わっていたら、ゲームのアウラリーサも歪んだりしなかっただろうに。
……まぁ、ゲームだから、それ言ったらおしまいなんだろうけどさ。
楽しい時間は、あっという間だった。
いいね、ブクマ、評価、有難うございますー! ブクマ100を超えました!
評価を下さった方も、後一人で20人!
PVも13000突破、ありがたや…。感謝感謝です!




