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伯爵令嬢は普通を所望いたします  作者: 桜井 更紗
第二章

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閑話─エマイラ伯爵夫人の闇




 タウンハウスに住むフローレン伯爵家は、エマイラ伯爵家の二軒隣にある。


 娘同士が同い年だと言う事もあってずっと親しくしていて、ルーナとソアラは何時も一緒にいた。



 ソアラが貴族のマナーの勉強を始めれば、「 ルーナも一緒に習って良いかしら? 」と、ルーナをフローレン邸に連れて行った。


 家庭教師を呼んで勉強を始めれば……

 ルーナも一緒にと言って、文机の前に2人で座らせた。



 息子は父親が教育をするが、娘に教育をするのは母親の役目。


 しかしルーナの母親は男爵家の出であった事から、伯爵令嬢としての教育の仕方が分からなかった。


 なので彼女はフローレン家に便乗したのだ。



 フローレン家の皆は本当にお人好しで扱いやすかった。

 2人は仲良しなのだからルーナも一緒にと言えば快く了承してくれて、わざわざ講師を探す手間が省けた。


 そして……

 ソアラと一緒に勉強をする事で、ルーナは常に学年の10番前後の優秀な成績だった。

 学年の1、2を争うソアラ程では無いが。


 エマイラ伯爵家の人々は、見た目の可愛らしいだけでなく、成績も良いルーナに大層満足したと言う。



 そしてその講師達から……

 ルーナを特別に可愛らしい令嬢だと絶賛される事が、母親として心地好かった。


「 こんな可愛らしい挨拶をされたら、王子様も恋に落ちるかも知れませんわ 」

「 まあ! 王子様には公爵令嬢の婚約者候補がおられるのですから、ルーナなんて足元にもお及びませんわ 」


 そう言ってエマイラ伯爵夫人は、何時も鼻高々にオホホホと笑っていた。



 学園に入ると……

 直ぐにルーナに伯爵令息の恋人が出来たのは知っていた。

 ソアラには親には内緒だと言っていたが。


 実は……

 その伯爵令息の父親から打診があった。

 息子との婚約を前向きに考えて欲しいと言われて。


 学園に入ればこうなる事は予測していた。

 ルーナはこんなにも可愛らしい娘なのだから。


 学園はある意味婚カツの場。

 貴族の子供は親と一緒でないと外には出られない事から、親の居ない学園は出会いの場でもあるのだった。



 返事を保留にしている間に……

 ソアラに婚姻の話が出てる事を小耳に挟んだ。


 相手はブライアン・マーモット侯爵令息。

 マーモット侯爵はフローレン伯爵の職場の上司である事から、この二家は親しくしているらしいと。



「 フローレン家が侯爵家と知り合いだなんて、何てラッキーなの! 」

 ……と、エマイラ伯爵夫人はいきり立った。



 ある日のマーモット侯爵家のお茶会に、ルーナも行かせた。

 ()()()()()()()クッキーを持たせて。


「 自分で作ったと言った方が心証が良いわ 」

 手作りクッキーは、自分がそうやって伯爵家の令息を射止めた作戦だ。


 普通顔の自分でも成功したのだから、こんなにも可愛らしいルーナなら楽勝だと。



 楽勝だった。


 後はトントン拍子に事が運んだ。

 先に伯爵家から婚姻の話が来ていると言えば……

 侯爵家が伯爵家に圧力を掛けて退けた。



 エマイラ伯爵家の面々は両手を上げて喜び、男爵家である実家も侯爵家と関係が出来る事を喜んだ。

 

 知り合い達も羨ましがった。



 今回も……

 王室の皆がルーナの事を知れば……

 婚約していても大丈夫だと思っていた。


 公爵令嬢ならば到底太刀打ち出来ないが。


「 相手がソアラちゃんならば楽勝だわ 」

 何よりも……

 王太子殿下がルーナに跪いたと言う事は、 彼の心にはルーナがいるのだ。


 王命が下されていても。

 ルーナが侯爵令息と婚約をしていても。


 きっと大丈夫だと。




 ルーナが王太子妃。

 やがてはこの国の王妃になる。


 いくらルーナが可愛くても……

 まさか王太子妃になれるとは思ってもみなかった。


 正に棚からぼた餅。

 フローレン家は……

 色んな幸運を運んでくれる我が家に取っての打出の小槌だ。



 彼女は夢を見た。

 王太子妃として王太子の横に並ぶ娘の姿を。

 なんてお似合いの美しい2人なんだろうとうっとりとした。



 そう思っていたのだが。



 フローレン家は……

 公爵邸や大侯爵達の住む高級住宅街に引っ越して行った。


 2軒隣のフローレン家に

 警備員が配置されたのにも腹立たしかったが。

 まさか家まで貰い受けるとは。


 あの高級住宅街に住むのはわたくし達であった筈。


 彼女は……

 どうして上手くいかないのかが分からなかった。



 フローレン家の引っ越しの日には……

 ルシオがソアラを白馬に乗せて、2人で駆けて行くのを見ていた。


 ルーナと2人で隣の庭に侵入して。



 昨夜は、ソアラの部屋の窓の下に王太子殿下がやって来たのだとルーナから聞いた。


 その光景は、まるでお伽噺の王子様とお姫様のようだったと。



 お姫様にはこのルーナが相応しいのに。


 エマイラ伯爵夫人は……

 悲しそうな顔をしているルーナの肩をそっと抱き寄せた。


 奥歯をギリギリとさせながら。











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― 新着の感想 ―
[一言] ただただもうルーナ母が怖い。 自分もソラアと同じ普通顔のくせに、いえ、普通顔だから? 「高級住宅街に住むのはわたくし達だった筈」って言われても、ねえ。 ソアラファミリーから散々色々と寄生…
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