閑話─捜査の行方
リリアベルの誘拐未遂事件は、現場に居合わせたカールによって調査された。
自分が主導で事件の調査をする事は、カールにとっては初めての事だったので彼は張り切っていた。
これまでの慣例ならば……
王太子が国王になれば、王妃の実家の公爵一族が政権を担う事になっていた。
しかし……
ソアラの実家であるフローレン一族が政権を担う事は無い。
多分。
いや、絶対に。
エリザベス王妃はそれを狙ってソアラを王太子妃に選んだのだから。
貴族の事件の捜査は宰相の仕事である。
従ってルシオの御代にはカールが宰相になる事から、彼は張り切って調査するのだった。
3人の酔っ払った男達の話では、声を掛けて来た大金を持った男に依頼されたと言う。
大金を持った男との面識は無く、その男はフードを深く被っていたと言う。
「 俺達は路地裏にいる女を連れて来いと言われただけだ 」
フードを被った男がいた事は、聞き込みによって明らかになった事から男達の言い分は通った。
ただ……
狙われた令嬢が公爵令嬢だと言う事は伏せられた。
男達も狙った令嬢が公爵令嬢だとは知らなかった事もあり、イースト公爵が伏せるように通達して来たのだった。
ソアラはリリアベルが公爵令嬢だと言う事が分かっていたようだったと言っていたが。
カールはこれ以上は男達を追及する事をしなかった。
よって男達は貴族令嬢誘拐未遂として投獄された。
そして男達に依頼したフードを深く被った男を探し出すのは無理だと言う事になり、事件は真相が謎のままに終わった。
何よりも被害は無かった事もあって。
グーパンを食らわせたソアラの拳は赤くなっていたが。
2人が何故あんな場所に居たのかの理由は、捜査に重要な事では無いと判断してカールは聞かなかった。
しかし……
ルシオは敢えて聞いてみた。
「 そもそも何故路地裏に君とリリアベルといたんだ? 」
「 あら? 殿方が女性のあれこれに口を出すものじゃありませんわ! 」
ソアラはピシャリと拒絶をして絶対に話してはくれなかった。
「 やはりリリアベル嬢がソアラ嬢に、何らかの圧力を掛けたのですかね? 」
「 そうだろうな…… 」
高貴な貴族令嬢が、ハンカチを落として下位貴族の令嬢を呼び出す事はルシオもカールも知っている。
ソアラはリリアベルに呼び出されたのだと推測出来た。
サニタリールームで出会したのだろう。
あのレストランで食事の後は……
自分がこの店に来る事は常習化している。
アメリアとリリアベルとも何度も来た事があるのだから。
リリアベルはソアラを待ち伏せしていたのかも知れない。
ルシオはリリアベルに別れ話をした時の事を思い出していた。
婚約候補から外された事に、リリアベルは納得をしていなかった。
あの時かなり泣かれたのだ。
勿論、アメリアも納得はしていなかっただろう。
しかし……
彼女は天をも貫く高いプライドの持ち主。
だから毅然としていたのだとルシオは思うのだった。
ソアラはリリアベルに何を言われたのだろうか?
これから先も王宮舞踏会や夜会で会う事になるだろう。
リリアベルだけじゃなく、アメリアからも何か言われる事になるかも知れない。
いや、2人だけでは無い。
あらゆる高位貴族令嬢からハンカチを落とされるかも知れないのだ。
ルシオは頭を抱えた。
「 女性のあれこれには……我々男どもは介入出来ないですからね 」
カールがポツリと呟いた。




