表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/61

51 一件落着?

「あ、ああ!? 狐人族だと!? そんなモン、こんな所にいるかよ!」


「……え?」


ヤエがいないだと?


「狐人族みたいな激レア商品なんて、この商売始めてから今まで、お目にかかれたことすらねぇ。もし手に入れたとしても、市場に出さずに、直接貴族やらに売り飛ばすぞ」


「その方が儲かるからな」と男は答えた。

その様子からして、嘘をついているわけではなさそうだ。


だとすると、ヤエはどこに行ってしまったんだ?

固まった俺を見て、戸惑いながら男たちは、


「な、なあもう良いだろ? 俺たちは行くぜ」


「……ああ」


俺がそう言うと、ボスの肩を手下が担ぎ、二人は舞台の方向へと逃げて行った。


「えっ、逃しちゃって良いんですか?」


高宮が聞いてきたが、それは問題ない。

実は、ここに来る前、冒険者ギルドを通して、この町の警察隊に奴隷市の存在を知らせておいた。

おそらく、今頃は、警察があちこちを制圧しているだろうから、いまさら逃げても、やつらに逃げ場はないのだ。

だから、さっき取引の時に言ったのだ。"私たち"は見逃してやる、と。


そのあと、俺たちはヤエがいなかったことに混乱しつつも、牢の子供たちとともに、ここから脱出し、外にいる警察に引き渡したのだった。


そして、外には警察の他に、もう一人別の人物がいた。


「おお、探したぞお主ら!」


「ヤ、ヤエ!?」


なんと、ずっと探していたヤエが、何事もなかったかのように、俺たちに駆け寄って来たのだ。


「全く、今までどこにいたんじゃ?」


いや、こっちのセリフだ。

俺が、全く同じ質問をヤエに投げかけようとした時、何やら聞き覚えのある声が響いた。


「ふ、ふざけるな!! なぜ、ぼくが逮捕されなくちゃいけないんだ!?」


声の主は、俺たちが案内をさせた、富豪の息子ユリスベルだった。

すっかり存在を忘れていたんだが、なぜかユリスベルは、捕まっていた。


……あっ、警察にあいつのことを説明してなかった!?

助ける義理はないが、案内をさせ、俺のミスで逮捕されるのは目覚めが悪いので、一応助けておくことにした。


「あ、あの……この人は違うんです」


「おお、カミシロ。この分からず屋に説明してやってくれ」


ユリスベルは、俺が助け舟を出したことで、いつもの横柄な態度に戻った。


「この人は、俺たちをここまで案内してくれたわけで、決して犯罪を犯していたわけじゃ……」


「でも、馴染みの客みたいでしたよね」


「ええ。あれは、立派な常連客ね」


「「「………………」」」


まさかの裏切り。

朱夏、高宮よ……なぜこのタイミングでそれ言う?


「さ、一緒に来てもらおうか」


「ま、待て待て! た、頼むカミシロ!」


「……まあ、常連だったとして、今回の功績があるわけですから、何卒、無罪ということに……」


「そういえば、あの男は、昨日の昼に私たちを無理矢理妾にしようとしてましたよ」


「そうそう。それで断ったら、用心棒をけしかけて力づくで手篭めにしようとしたわね」


「まさしく、卑劣漢じゃな」


「「「………………」」」


どうやら、彼女たちに助けようという気はないらしい。


「カ、カミシロ……」


そんな捨てられた子犬みたいに俺を見るな。

分かってるよ。今、どうすれば良いかくらい。


「逮捕してください」


「はっ! さあ、来い、犯罪者め!」


「お、おいー! どういうことだ!?」


許せユリスベル! 今、この場で無実を証明するのは、敵が多すぎで無理だ。

あとで、俺一人で釈明しに行くから。


俺は、半狂乱で連行されるユリスベルを、ただ眺めるしかなかった。



「「「えっ、捕まってなかった!?」」」


ヤエがいなくなったのは、単に食べ物の匂いにつられて、単独行動を取っていただけという。そして、戻って来たら、俺たちがいなくなっていたので、ヤエ自身も俺たちを探していたらしい。

がっつり単独行動を取ってらっしゃる……俺たちの認識は、丸々間違っていたということか!?


ユリスベルが連行された数分後、俺たちは、ヤエの口から出た衝撃の事実に、そろって驚嘆した。


「まあ、そういうことじゃの。そもそも、妾がそんな輩に遅れを取るはずなかろうて」


ヤエは、自慢げにフフンと鼻を鳴らした。


いや、あなた、初めて会ったとき人攫いに追われてたじゃないですか。


……ちょっと待てよ。つまり……俺たちは、単なる早とちりで、犯罪組織を潰してしまったのか!?

思い込みとは、かくも恐ろしい物だったのか……。


「しかしまあ……クク。お主らがそこまで必死になって妾を探しているとはのぉ」


「可愛いやつらめ」ヤエは、満足そうに笑い始めた。


……なんだろう? 全部俺たちの早とちりで、ヤエに責任は無いのに、湧き上がってくるこの感情は。


ふと、朱夏たちに目を向けると、俺と同じ感情が生まれているであろう表情をしている。


……まあ、それは良いや。


「……なあ、少しお腹空かないか?」


「……そうですね」


「……アタシも同じこと考えてたわ」


「ん? お主ら、一体どうしたんじゃ?」


俺たちの様子を見たヤエが、不審がって言った。

ナンダロウネ。


「じゃあ、何食べるか一斉に言おう! せーの」


「「「キツネ鍋!!!!」」」


満場一致!


「よし、じゃあ行こうか」


「おいー! 待てお主ら! ま、まさか妾を!?」


「もう、うるさいですよ。今は、早朝なんですから」


「そうよ、しょくざ……ヤエ」


「お、おい、今、妾を食材と……い、いやじゃ、いやじゃ! 鍋で煮て食われるなんていやじゃ〜〜〜〜!!!!!!」


早朝のコルの町。そこに狐人族の少女の魂の叫びが響き渡ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ