35 Fランク
淫魔たちが去った後、瀕死の教祖にヒールをかけて処置をした後、信者たちの様子を見て回った。
不思議なことに、彼女たちの身体にあった黒い模様は、跡形も無く消え去っていた。
これは、どういうことだ? と、顔を見合わせたが、「淫魔との契約が破棄された」という推論を立て、結論付けることにした。詳しいことは分からないが、大きく外れてはいないだろう。
という訳で、ネウム教団での事件を解決? した俺たちは、サトスの警察に教祖を引き渡し、信者たちも一時保護してもらった。
そして、メイをはじめとする子供たちの元にダレルを連れて戻ったのだ。
ダレルは気まずいのか、娘と会うことに少し抵抗を見せていたが、いらぬ心配だと説得した。立処の不明な冒険者に頼んでまで母に会いたいと思った娘が拒絶などするはずがないのだから。
メイが待つ家のドアを開け、躊躇するダレルを半ば強引に中に押し込んだ。
その姿を見たメイは、信じられないといった表情をした後、目の前の光景を理解したのか、込み上げるように泣きながらダレルの胸に飛び込んだ。
「お……お母さん!! ぐすっ……もう戻ってこないかと思った………………ずっと、ずっと会いたかったよ〜!!!!」
「メイ!! ごめんねっ!!!! もう二度とあなたを離さないわ!!!!」
ダレルも涙を流しながら、メイを強く抱きしめる。
母娘の感動の再会に、朱夏と高宮も感極まったようで目を潤ませていた。
俺も目頭が熱くなるのを感じたが、朱夏たち2人の今とさっきのギャップがありすぎて、そっちの方に気を取られてしまった。俺の感動を返してくれ。
その後、落ち着いたダレルとメイの計らいで一晩泊めてもらうことになった。ダレルの気合の入ったご馳走が振る舞われ、明るい雰囲気のまま夜が明けた。
*
早朝、ダレルとメイ、そして他の子供たちから、礼と称賛の声を浴びながらサトスの町を後にする……はずだったのだが--
俺たち3人は、なぜか冒険者ギルドに呼び出されていた。
何か問題でもあったのだろうか。ま、まさか冒険者にはギルドを介した依頼以外は受けられない、とかいう規約でもあったのか……?
もしそうだとしたら、俺たちには何らかのペナルティが与えられるかもしれない。
恐々とする俺をよそに、ギルドの支配人を務める眼鏡をかけた男が口を開いた。眼鏡越しに切れ長の目で見据えられ、俺は自然と背筋を伸ばしていた。
「さて、貴女方3人は、子供たちからのクエストをギルドを通さずに受諾してしまった……これは事実ですか?」
「は、はい……」
「そうですか。冒険者がギルドを介さずにクエストを受けるのは、違反ではありませんが推奨できる行為ではありません。中には違法となるケースもありますので、以後お気をつけを」
ほっ……どうやら俺たちのは違法ではなかったみたいだな。
でも、ギルドに睨まれるのも面倒だから支配人の忠告は聞いておくことにした。
「それでは注意はこのくらいにして、次に移りましょう。では、お三方の冒険者カードを預からせてください」
なぜに冒険者カードを? とは思ったが、大人しく従う。下手に抵抗して波風立てるのも嫌だし、今までの流れからしてそこまで悪いことでもないと考えたからだ。
俺たちのカードを手に、部屋の奥に消えた支配人だったがものの数分で戻って来た。
そして、カードを手渡し、
「貴女方にランクを与える手続きをしましたので、きちんとできているか確認してください」
と、そんなことを言った。
いきなりのことに混乱しつつ、カードを確認すると。
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神代綾乃 女 Level 8 ランクF
職業 勇者
魔力保有量 170
攻撃力 190
防御力 100
魔導力 160
魔法防御力 120
俊敏性 150
スキル
滅魔劔
隼切
滅魔光
物理耐久・魔法耐久・属性耐久上昇
キュアー level4 (回復魔法)
ブロスタ level3 (爆発魔法)
ライング level2 (雷魔法)
ホーリー level3 (神聖魔法)
トラテム (攻撃値上昇魔法)
コンフィス (俊敏値上昇魔法)
etc、etc
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確かにランクが与えられていた。
朱夏たちのカードにも俺と同様のランクが記されていた。
「ランクを貰えるのはありがたいんですけど、でもどうして?」
やはり突然のことで理解が追いつかない。
俺たちのしたことは、ギルド側からすると面白くないはずだが……。
「確かに勝手に依頼を受けたことはアレでしたが、新興宗教団体の教祖が施設内で信者を囲っており、その後ろには魔族が絡んでいた……という事件の事実を暴いただけでなく解決にまで漕ぎ着けた、それも冒険者が。これはこちらとしてもプラスになるので、今回はこういう措置をすることになったわけです」
ただ、と支配人は付け加えて、
「初めに注意したように、ギルドを通していない依頼を受け、不可抗力とはいえランクの無い冒険者が禁止されている"魔物との交戦"をした、ということを加味して、贈呈するランクは"F"ということになりました」
そうか、本当ならもっと高いランクを貰えるはずだったのか。
残念だが、子供たちからの依頼を受けなければランクなど貰えなかったのだから、むしろ良かったと捉えるべきだな。
ともあれ、これで討伐系のクエストも受けられるようになった訳だ。
そうとなれば、やることは一つだ。
俺は、クエストの紙が貼られた掲示板へと向かい、別の冒険者の男が取ろうとした紙を横から掻っ攫った。
俺の行いに怒りを露わにした男だったが、俺の顔を見た途端、ギョッとした表情になった。おやおや、どうしたのかな?
偶然な事だが、その男は何時ぞやの、俺たちからクエストを根こそぎ奪っていった奴らの1人だったのだ。
全くの偶然だが、俺は男に一言。
「ごめんね、おじさん。でも、文句ないよね? クエストは早い者勝ちなんだから」
悔しげに歯噛みする男に、俺は、勝利の笑みを浮かべながら背を向け、「よくやった!」と言わんばかりの表情の朱夏たちを引き連れ、ギルドを後にした。




