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32 戦闘?

「さあ、やってしまいなさい!」


教祖の号令を合図に、信者たちの目が一瞬発光してから虚ろになる。そして、俺に向かってにじり寄って来た。

生気のない顔をした人間が寄ってくるのは、想像以上に気味が悪く、俺は信者たちから距離を取った。


彼女たちがああなったのは、明らかに教祖の呪文が原因だろう。もしかすると、彼女たちが日々受けていたあの儀式も関係するのか?

思案する俺に、教祖はニヤつきながら、聞いてもいないのに語り出した。


「ククク、この液体を浴びた者は快楽の虜となり、それを与えた者に逆らうことなどできなくなるのですよ。……そして、貴女もそうなるのです!」


などと、教祖は勝手なことを宣った。

ちっ! 好き放題言いやがって。

俺は内心で舌打ちをしながら、信者から逃げ回る。彼女たちは、操られているからかそこまで動きが速いわけでない。しかし、いかんせん数が多いので、掻い潜るのに苦労する。


「無駄ですよ、無駄! 大人しく下僕たちに捕まりなさい。そして、貴女もその一員になりなさい!」


くそっ、この野郎め……!

だが、確かにこのまま逃げ切るのはキツイか。それなら……。

あまり気は進まないけど仕方がない。俺は心の中で「ごめんよ」と謝り、ある魔法の詠唱を始めた。もちろん、逃げながらだ。


「"ライング"!!」


詠唱を終え、周囲に魔法陣を展開させ、そこから小さな雷が迫り来る信者たちに降り注いだ。

俺が唱えた魔法は、雷魔法の"ライング"。それの威力を最大限弱めたもので、スタンガンのような効果を期待して使ったのだ。

綾乃のスキルを俺が使える保証も上手くやれる確証もなかったがどうやら成功したらしい。


魔法を受けた彼女たちは、力なく床に伏し動かなくなってしまった。えっ、上手くいったよな? 死んでないよな?

……どうやら気絶してるだけみたいだな、あぁ良かった〜。


「ば、馬鹿な……!? お、お前さてはただの女じゃないな!?」


教祖は目の前の光景に驚愕し、普段の上品な口調を崩し、叫ぶように言った。

おお、バレちゃったか。なら仕方ない。ここは、カッコよく名乗っておくか。


「よく気づいたな、その通りだ! 幸薄な町娘とは仮の姿。本来の私は、凄腕の冒険し……」


俺が決めポーズをとり、名乗っていると、部屋の扉が勢いよく開け放たれ、2人の少女が中に飛び込んで来た。


「綾乃さん無事ですか!? ……綾乃さん?」


「施設の雰囲気がおかしかったから急いで……って何してんの?」


「……なんでもございません」


良いところだったのに……思わぬ邪魔が入ってしまった。俺がキメた後にこいつらが入って来たら完璧なタイミングだったんだけど、そう上手くはいかなかったな。


「……それで、どういう状況なの? これは……」


朱夏は俺に追求はせず、辺りを見渡した。

儀式の間は、床に倒れ込んだ信者たち、決めポーズをとる俺、そして、粘液を手につけた教祖が俺と対峙しているというカオスな状況だ。初めてこの光景を見て、瞬時に理解するなんて芸当は、デュエリストでもないと不可能だろう。


「全て教祖が原因だ」


朱夏の疑問に俺はそう答えた。

俺の言ったことは、何一つとして間違いではないだろう。

信者たちを気絶させたのは俺だが、それは教祖が()しかけたからだ。そして、俺がここにいるのも教祖のせいだし、そもそも教祖が怪しげな儀式などしなければ、俺たちがここに来る必要もなかったんだ。そうだ! 全て教祖が悪い!


「ふぇ?」


この声は、突然標的にされた教祖のものだ。

やめろ! いい年下おっさんのくせに、そんな二次元の萌えキャラが発するような言い方をするんじゃない!


「そ、そう。分かったわ。……教祖! あんたは何でこんなことをしたの? 一応聞いてあげるわ!」


仕切り直すように間を置くと、朱夏は人差し指をビシッとさして問いただした。

指を刺された教祖は、しばらく呆けていたが、やがて正気に戻り、下卑た笑みを浮かべ始めた。


「ひひひ、なぜこんなことをしたか? 決まっているでしょう!」

「居場所のない哀れな女どもを囲ってハーレムを作るつもりだったのですよ! それも、私に完全服従して、下僕となった女たちのねぇ。ふひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」


教祖は、そんな自らのドス黒い欲望を語り、絶頂したかのように狂気の笑い声を上げた。

こいつの願望は、18禁のコンテンツをそのまま取って付けたかのようなものだったのだ。

だが、一つ疑問がある。


「あの粘液を使ってか? あれは何なんだ?」


「ふひひ! あれは、何の力もなかった私が授かった神の力ですよ! ある夜、天啓を賜ったのです。『お前の願望を実現させよ、力を与えてやろう。これで世界中の女を下僕とせよ』とね」


天啓ねぇ……。俺にはただの悪魔の囁きにしか思えないが。いや、この世界の神は、あの悪徳女神だからあり得なくもないのか?


「そんなくだらない願望のためにこの教団を? はぁ……情けない奴ね」


教祖の動機を聞いた朱夏があからさまにため息をついた。


「だ、黙りなさい! 貴女方にも神から賜った力を味あわせてあげましょう! くらいなさい!!!!」


朱夏の態度に顔を真っ赤にさせた教祖が、俺たちに向けて例の粘液を放ったのだった。


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