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11 戦闘終了!

それを戦闘と呼ぶには、些か一方的すぎるように思えた。


「はあっ!!」 「やあっ!」


そんな可愛らしい掛け声とは、似ても似つかない速く重い斬撃が、石造りの巨兵に降り注いでいた。

キィィン! という金属の接触音とともに、岩にはあっさりとヒビが入り、そこからボロボロと石が溢れていた。

ちょっと前まで、どんな攻撃すらも跳ね返していたとは思えないほど、それは、簡単にヒビ割れ、砕かれる。


それを繰り返され、ゴーレムの身体は、まるで崩壊寸前の廃墟のような悲惨な状態になっていた。


ゴーレムもその状況から脱しようと抵抗を試みるが、もともと鈍足というのに加えて。あの凍りついた腕では、砲撃することも拳を振り下ろすこともできない。


そうしている間も、常に攻撃を受け続けたゴーレムは、とうとう自身の身体を支えられなくなり膝をついた。

だが、勇者とその一行である綾乃と朱夏は、その手を全く緩めない。というか、テンションが上がってきたのか、攻撃の激しさが増しているようにさえ見える。

その様子は、さながら悪魔が高笑いしながら、哀れな家畜を嫐っているかのようだ。


身体が半壊するまでボロボロにされたゴーレムに、俺は、敵ながら哀れみの情が生まれてしまった。それくらい、目の前の状況は悲惨なものだった。


しかし、妙だな。奴の身体は、さっき言ったように崩壊寸前だが、それでもまだ力尽きてはいないようだ。ゴーレムの顔からは、目の光は消えておらず、崩れかけた身体を動かそうとしていた。


朱夏たちも、俺と同じことに疑問を抱いたようで、


「はあ、はあ。……これだけやってもまだ倒れないの?」


と息を切らせながら、言う。その顔には、確実に疲労の色が出てき始めていた。


「幸月君……。アレをやっつけるアイデア何か無いの!?」


攻撃を続けながら、綾乃は、俺にそんなことを言ってくる。


「いや、この世界のことは、お前らの方が詳しいだろ?」


俺は1日で雑用に回されたけど、他の奴らは、戦闘訓練と一緒にこの世界のことを座学で習っていたはずだ?


「1種類の魔物のことを重点的にやった訳じゃないから。……ゲームとかの知識で良いから何か出して!!」


そんなこと言ったって……、俺は、そう思いいながらも、そういった知識を必死で脳の引き出しから引っ張り出す。


ああいう無機物の魔物には、確か、似通った弱点があったはずだ。硬い防御を誇るが、それが無くなると即死してしまうようなものが……。


機械でできたやつは、部品を抜き取られると一瞬で動かなくなる。

だがゴーレムは、部品で動いているわけではないはずだ。

やつを動かしているのは、多分魔力だよな? だとしたら、どんなのが有効手なのか……。


無い頭をフル回転して、2つの弱点を思い出すことができた。

1つは、額に書かれた文字を書き換えたり、羊皮紙を剥がすという方法。

2つ目は、ゴーレムの体内には、魔力を身体に伝えるための魔法石、"コア"を破壊するという方法。


あのゴーレムには、羊皮紙や文字は存在しないようなので、1つ目は違うだろう。

ということは、奴の弱点は、体内にある魔法石となるが、果たして本当にそれが弱点なのか?

透視スキルなど持っていないため、俺がそれを確かめることはできない。


「幸月君、何か思い出した?」


いつの間にか戦線から離脱し、俺のそばに来ていた綾乃に、俺は自信なさげに答えた。


「ゴーレムの体内にあると言われる魔法石……"コア"を破壊すれば倒せるかもしれない。けど、実際それがあるかどうか……」


「分からない」と、俺が言い終える前に、綾乃は「ありがとう」と言って、ゴーレムの元へと駆け出していった。


いや、あの……、それが正しいって保証は無いんですけど……。

そんな心の声は、綾乃に届くはずもなく、俺は再び、1人、その場に取り残された。


俺が自分のことを"勝利の鍵"とぶち上げてから、2人が俺の話をまともに聞いてくれなくなったように思えてしまう。


せ、戦闘中だからだよね!? 呆れられたとかじゃないよね!? それにほら、一応あの作戦だって成功したわけだから…………。

そんなことを考えても虚しくなるだけだったので、俺は、再度戦闘に目を向けた。


そこでは、いつの間にか身体の90%が瓦礫のようになったゴーレムに対して、綾乃がスキルを発動しようとしていた。


両手を身体の前に掲げ、そこに魔力を集中させると、手には光が集まり、そこから、光の玉が創り出されていた。


"滅魔劔"


そのスキルは、綾乃の持つ数多くのスキルの中でも際立って高い破壊力を持つものだ。

消費魔力量が多いため、多投できないが、その威力は、ほとんどの魔物は、一撃で絶命されるほどである。


生成した光を空に向けて打ち出すと、雲の切れ目から巨大な光の剣が顔を覗かせた。

綾乃は、ゴレームを見据え、腕を振り下ろすような仕草をする。すると、空に浮かんでいた剣が、空中で小さく分裂しながら、勢いよく落下し始めたのだ。


降り注ぐ剣は、ドスドスと音を立てて、ゴーレムの身体に突き刺さる。

そして、頭部にそれが突き刺さった瞬間、カシャンッ!! という、今までとは違う、何かが割れるような音がした。

すると、光の剣に串刺しにされたゴーレムの身体は、まもなく、崩れ去りただの瓦礫になった。

おそらく、さっきのはコアが割れる音だったのだろう。


こうして、俺たちとゴーレムの死闘は、勇者・綾乃のスキルにより、俺たちの勝利という形で幕を閉じたのだ。

しかし、いきなり物語中盤に出てくるような奴と出くわすとはな。この世界のゲームバランスはどうなってるんだ。


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