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拒絶の幼馴染  作者: ひゃるる
195/200

195、もう離さないから

 「あ、朝香…?」


 「…」


 逃げ場のない狭い箱の中、俺は朝香に抱きつかれた。

 何の香りかわからないが、甘い柑橘系の香りが鼻をくすぐり、ごちゃごちゃになっていた頭の中が整理されていく様な感覚がした。

 観覧車はどれくらい回っただろう?

 俺も朝香も互いに何も喋らないまま時間だけが過ぎていく。

 静かな時が流れていく。

 けど、不思議と気まずさや不快感はなく、どことなく落ち着く時間だった。


 「あの…朝香さん?そろそろ離れた方がよろしいかと…」


 「…落ち着いた?」


 「うん、ありがと。だからもう離れても大丈夫だ」


 「…………やだ」


 「えぇ…」


 解放されるどころか、寧ろぎゅっと力を込められている気がする。

 ちょ、どういう事だってばよ。


 「あさかさ〜ん?」


 「やっ」


 「いや、『やっ』じゃないのよ」


 なんだこいつは、子供か?

 …いや、高校生はまだ子供か…?子供だな。そうか…。

 そんな風に自分の中で謎の納得をすると、耳にか細い声が入って来た。


 「…もう離したくない…離さないから…」


 「あ、朝香?」


 「離れないから…絶対に…」


 そう言うと、また朝香の腕に力が入る。


 「一度旭を突き放した私が言っても説得力なんてないかもしれないけど、どんな旭でも私は幻滅しないし、離れていったりしない」


 「朝香…」


 「それはきっと他のみんなもそうだよ。だから…」


 そこで朝香は腕の力を緩め、俺と正面から目を合わせる。


 「だから、言って。一人で抱え込もうとしないで、頼って」


 「…」


 「これは『彼女だから』って義務的なものじゃなくて、私が旭の力になりたいから言ってるの。だからもうちょっと気楽に考えてみようよ」


 ふっと表情を崩して笑みを浮かべる朝香。

 背景の夕日が優しく朝香を照らしていて、幻想的な雰囲気を醸し出していた。


 「…そっか…」


 やりたいからやる。

 それは俺の生き方みたいなものに似ているな、そう思うと、胸にすとんと落ちてくる様な感覚がした。

 そっか…嫌がられてないのか…。


 「…わかった、ありがと。なんかスッキリしたわ」


 「…うん」


 朝香はそう返事をすると、俺の隣に座り、寄りかかってきた。

 俺もそれに便乗し、背中合わせに寄りかかる感じに座り直す。


 「朝香も何かあったら言えよ」


 「うん…でも、旭はなんでかわからないけど、いつも一番最初に気付くよね」


 若干不満そうな顔でそんな事を言う朝香。

 なんで不満そうなんだよ。


 「まぁ…そりゃ気になりますからね」


 「…ありがと」


 そう言って、お互いの小さな笑い声が観覧車の中に響く。

 顔は合わせない。

 互いに背中を合わせ、違う窓から外を観ている。

 けれども、居心地が悪いかと聞かれるとそんな事はなく、すぐ隣には朝香がいるという事実に、不思議とこの空間が心地よく感じた。

 旭が弱っているところを朝香が支えるという、今までと逆の構成が新鮮だなと思っています。

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