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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
65/85

誰が最後に笑ったか


「ランチア・ストラトスさん……」


 セリカとストラトスが目と目を見合わせた。まるで最後に残された勝負のように、お互い視線を逸らさず心の内を探り合った。

 ストラトスの瞳孔が縮まり美しい虹彩が角膜一杯に透けて見える頃、ついにセリカが口を開いた。


「この象さん(トロフィー)は、まだ受け取れません。自分達には早すぎます。どうかお引き取り願います」


 その言葉を聞いたストラトスは全てを予想していたのだろうか、長めの瞬きをした後に、こう言い放った。


「なぜかしら? あなた方には、その資格があるというのに……。もちろん毎日クリーニングして綺麗にして貰っている逸品ですよ?」


「…………ストラトスさん」


「そうですか……! それでは気の変わらないうちに……。さあ、ここから引き上げましょうか! ラリー037とデルタさん!」


「……その代わり豊田2000GTさんの事は諦めて下さい。これが交換条件。我々からの要望です」


 後背に聞こえたセリカの願いに、赤い象のぬいぐるみをギュッと抱き締めたストラトスは言う。


「それはどうかしら? 人の心はラリーコースのよう。ロードブックの通りにはいきませんわ。いくらペースノートを付けていたとしても、不測の事態が転がっているものよ」


「それは否定を致しません」


「そう……それでは、ご機嫌よう。名車女子学園の皆様」


 颯爽と会場を後にする伊太利屋女学院の勇姿に、体育館に詰められた全てのクルマ娘達の拍手が鳴り止む気配は見られなかったのである。いつまでも、いつまでも……。




「――最後に何を小声でやり取りしてたの?」


 素っ頓狂に豊田2000GTがセリカ達に訊いてきた。この人は分かっていながらも……と勘繰ったが、頭脳明晰な生徒会長には、無難な一言で済ます事ができるのだ。


「大きな声援の中で聞き取れませんでしたか? イタリアらしい一流の褒め言葉でしたよ」


「そっか! それでは早速、お祝いでも致しましょう。さあ、打ち上げに出発! 皆でどこに向かいましょうか?」


 生徒会からの提案に、名車女子学園のチームは呆気に取られたのだ。


「着替えも何もできてない今からですか? いくら何でも早すぎませんか?」


「実はラーメン・スタンプラリーに張り切ってる、あなた方を応援しすぎて、ちょっとお腹が空いてきたのです――」


「ま、まさか……!」


 コーチ達はニッコリ、一方で豊田セリカGT-FOUR RCと昴インプレッサ22B-STiバージョン、それに三菱ランサーエボリューションⅥトミ・マキネンエディションは徐々に逃げ腰となってきた。


「私もラーメンが食べたくなってきたのです。どうですか? 最近お気に入りのチェーン店、キラメキノトリに今から行きましょうよ!」


『今日はちょっと無理です! 勘弁して下さいよ~!』


「まあ、まあ、まあ!」


『せ、せめて回転寿司にして〜!』


 コーチ陣に笑顔で捕まった選手達は、マイクロバスへとレーシングスーツのまま引っ張られていったのである……。












 


 


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