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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
55/85

橋上決戦


 もうすぐ琵琶湖大橋の最高地点に到達しようとするランチア・ストラトスHF。

 緩やかな坂路に足の回転は限界に近付き、呼吸もままならず苦しそう。


「うらあああぁぁぁー!」


 信じられないスタミナで怒濤の追い上げを見せる、セリカGT-FOUR RCの気迫が背後から迫ってくる。


「こ、ここまで来てパスされるなんて、一流のラリーストに……あってはならない屈辱! ――やあああぁぁぁー!」


 気分の悪さと、登り坂の峠を同時に越えたランチア・ストラトスは、一気に下りへと向かって加速を続けた。


「待てえええぇぇぇー! 逃げるなあああぁぁぁー!」


「私は……勝利して……豊田2000GTさんを……奪ってみせる!」


「もう背中に手が届きそう……! 一気に距離を詰める!」


 豊田セリカGT-FOUR RCが最高地点を越えた時、湖が一望できるほどに視界が開けた。


「まだまだ……いける!」


 ジャンプして全身をバネのようにしならせた。そして姿勢を低くしたセリカは、空気抵抗を無視するかのごとくロングスパートを掛けた。


「皆さん! この光景をご覧になっているでしょうか? 名車女子学園の豊田セリカGT-FOUR RCが、伊太利屋女学院をどんどん追い上げて、大差をものともせずに走り続けています! これは……これはひょっとして、スペシャル・ステージで追い越すという、夢の瞬間が見られるかもしれません!」


「甘い! もうすぐ対岸のタイムコントロールゲートよ! 逃げ切ってみせる!」


 その時ランチア・ストラトスHFの耳元で、けたたましい排気音のような雄叫びが空気を切り裂いた。


「やああああああぁぁぁー!」


「何ですって? 何なの、あのヒトはあああ!?」


 ついに豊田セリカGT-FOUR RCがランチア・ストラトスHFに並びかけたかと思うと、そのまま抜き去りそうになってきた。


「させるかああああああああああああああああああ!」


「ここで差してやるううううううううううううううう!」


「ぜ、絶対にエレファンティーノは、渡さないんだからあああー!」


 数十秒は並走しただろうか、運悪くランチア・ストラトスHFの胃から琥珀色のゲップが上がってきてしまった。


「う、うえええ……!」


 湖上に吹き荒れる風の中に、涙が煌めいては消えてゆく。


「――ついにやりました! 豊田セリカGT-FOUR RCがランチア・ストラトスHFを抜き去りました! こんな事が実際に起こるのでしょうか! 未だに信じられません!」


 爆発的な歓声が校内に響き渡り、体育館の窓ガラスが割れんばかりに振動し、抱き合ったり飛び跳ねる生徒で床が揺れた。


 タイムコントロールゲートを先に通過した豊田セリカGT-FOUR RCは、全てを出し切ったように倒れ込んだのだ。





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