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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
24/85

三人目はランサー


 意を決した豊田2000GTは、セリカGT−FOUR RCとインプレッサWRXを伴って高等部の教室へと向かった。

 インプレッサが窓から中を覗くと、同族でアウトドア派のパジェロ、アメリカかぶれのスタリオンとたむろする三菱ランサーの姿があった。


「いた。思った通りいましたよ。あの人がランサーです」


 噂のクルマ娘を見た豊田2000GTは、以前のインプレッサとは違うベクトルで質実剛健なランサーを見て思わず唸った。

 机を椅子代わりに座るランサーは、男まさりでクールな人と聞いている。確かに名車女子学園の制服姿で脚を組む彼女は、結んだ髪がバッチリ似合う、切れ長の目を持つイケメン女子だったのだ。

 挨拶もそこそこに、早速コンタクトを開始する。


「これはこれは……。生徒会長と、その取り巻きさん達が、雁首揃えて何の用ですかね?」


 ぶっきらぼうな物言いに、新生セリカはカチンときたのだろうか、つい声を荒げてしまった。


「ちょっと! 生徒会長に対して何ですか、その物言いは!」


「セリカさん、そのくらい別にいいのですよ。それより三菱ランサーさん、ここまで訪ねてきたのは……」


「ああ、結構生徒達の間で噂になってるぜ! 対外試合のメンバーを色々と物色しまくって、めぼしい奴をスカウトしているらしいな」


「……! ご存知でしたか。でしたら、話が早いですわ。是非とも私達に協力して、三人目のメンバーとなっていただけませんでしょうか?」


 誠心誠意の豊田2000GTからの依頼に、どう反応するか……セリカとインプレッサは固唾を飲んで見守った。

 三菱ランサーは、隣のパジェロとスタリオンに目配せすると、気怠そうに溜め息をついたのだ。


「それが人にものを頼む時の態度なのかね、会長さんよ〜」


 本物のお嬢様で、普段から皆に愛されている豊田2000GTにとって、試練の時間である。


「これは大変失礼を致しました。名家である三菱のご令嬢に対し、あまりに配慮が足りませんでしたね。どうかご無礼を許して貰えないでしょうか」


「会長! 何もそこまで!」


 セリカが我慢できずに叫んだ時、ついにインプレッサも動いた。


「三菱ランサーさん、どうしちゃったんですか? カッコ悪いですよ」


「――何だと?」


「学園は今、見えない危機に瀕しています。伊太利屋女学院との試合に、もし負けるような事があれば、我が校の名誉を失うばかりか、好き勝手されるかもしれないんですよ」

 

「誰だお前は……って、ええっ!? ひょっとしてインプレッサ? 変わり過ぎだろ! 一体何があったんだよ?」


「私は見た目も態度もイケてるあなたに一目置いていました。でも今はライバル足り得ませんね!」


「ライバルだと? 今まで本気でそう思っていたのか?」


「………………」


 返事代わりの沈黙に三菱ランサーは、舌打ちした。


「ヘッ! よく言ってくれるぜ! いいだろう、やってやるよ。ちょうど退屈してたとこだしな!」


 まさかの展開にパジェロもスタリオンも目を丸くする。


「おいおい、マジかよランサー。口車に乗せられて、何を口走ってんだよ」


「うっせ! ここまで言われて引き下がれっかよ。さぁ! どうすりゃあいいんだ、会長さん? これからよォ……」

 

 すると皆で引き寄せたチャンスに、豊田2000GTは自然に少し涙ぐんでしまった。


「オレの気が変わらないうちに、契約でも何でもしたらどうなんだ?」


 頷いたセリカは、2000GTに頼まれてスマホでどこかに連絡したようだ。


「実はですね、こうなる事を見越していて、すでにラリーアートからあなた専属のコーチをお呼びしているのですよ」


「へっ? 何だって?」


「ああ、早いものですね。もうここに到着したようですよ。紹介いたしましょう。フィンランドから来たマキネンコーチです」


「嘘だろ……」


 三菱ランサーが苦手とする、気難しい先生を彷彿とさせるコーチがそこにいた。





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