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美形恐怖症(イヤマジで)

小話のくせに長い気が…。でもオチは決まらないのでやっぱこっち。

「すみません!このお話なかったことにして下さい!」

「「はっ?」」


うぅ。お二人の視線が痛い。でも仕方ないのです。だって私には、


「理由を、説明して下さい。」

「そうだぞ。たった今頑張るって言ったばかりじゃないか。」

「それはそうですけど……」


やっと見つけた就職先。私だってこんな好条件な職場、不意にしたくはないです。でも、人にはどーしても苦手なものがあるもんでしてね?聴いてくれますか?私の話を。


・・・・・・・・・・・


あれはいつの頃でしょう。いや、物心ついた時からだったはず。

私には姉が二人いましてね?その姉がとーーーっても美人なわけです。えぇえぇそりゃもうとんでもなく。天使が舞い降りたんじゃないかってぐらいの美しさなんですよ。んでね?当然周りは褒めちぎり、陶酔し、挙げ句の果てには下僕志願者なんちゅーものまで現れたんですよ。

周りがそんなんですから、姉たちは当然のごとく我儘し放題で、自分たちの思い通りにならないと癇癪を起こす始末で。そしてその第一線に立たされたのが、妹と言う名の下僕ですよね。

とにかくこき使われまくりましてね。いえ、決して悪い方たちではないんですよ?行き過ぎたと思えば謝ってくれるし、ご褒美を貰ったことだってあります。妹として、ちゃんと可愛がってくれてると思うときもしばしば。しかし何分、自分自身を制御出来ない質でして。タイプの違う姉たちに翻弄され、正直疲れていたのです。

姉ですか?マリアとミリアです。ご存知でしょう?


マリア―長女の方ですが、傲慢を絵に描いたような人ですね。高笑いがよく似合います。マリアはとにかく上からモノを言う人で、従わないと駄々をこねる子ども以上です。

ミリアは逆に、一見すると穏やかに見えるんですが、影で人を動かすのが得意なんですよね。歯向かうとネチネチネチネチ言ってくるタイプです。まぁ、マリアよりは気分がそこまで上下しないのでいいんですが、一度怒らせるととてつもなく面倒です。


私は同じ姉妹なのに、抜群に父に似てしまったせいでこんなんですが、正直普通が一番ですよね。ナイス普通。ビバ☆普通ですっ!


……僻んでませんよ?羨ましくなんてないんだからね!

コホン。失礼しました。そんな、傍若無人な姉たちにこき使われまくりだった私ですが、学校に入ることによってその機会も減りました。


で・す・が。

どうやら神様は私のことが嫌いみたいです。そこの学校にもいたのです。姉たちのような人たちが。しかも最初は人畜無害みたいな顔して近づいてくるもんですから、気付いた時にはすでに遅し。周りからは大親友のように見られ、逃れることが出来ませんでした。女の世界は複雑なのです。


そうやって多かれ少なかれ、女でも男でも美形の被害に私は遭っているんです。今じゃ立派な美形恐怖症になりました。姉たちの顔も見られません。

そんな私がようやっと見つけた就職先がここだったんですが……後光さえ見える美形さまが上司なら、仕事にならないので辞退致します。すみません。手前勝手な理由で。


・・・・・・・・・・・


「……事情は分かりました。さぞ大変な思いをされたんでしょうね。」

「司令部隊隊長が嫌な訳では決してありません。私の無礼を許して欲しいなどとは思いませんが、少しでも気持ちを汲んでくれるのであればこのまま辞退を…」

「さてどうしましょうかね、統括長?」

「あ~そうだなぁ。ちょっと疑問なんだが、美形が怖いならもっと人と関わらない仕事の方が良かったんじゃないのか?」

「私もそう思いましたが、そういったところは大体が専門職の強いところか、女ばかりの職場だったものでして。姉たちのおかげでちょっとばかり女性に好かれないんです。(姉たちの反感のせいで)」

「……まぁ女の世界は怖そうだよな。んで?なんで男ばっかの騎士団のお手伝いなんか。」

「こう言っては何ですが、美形がいるイメージがなかったのです!対人恐怖症ではないですから、普通の方や、統括長ぐらいの美形さんならギリいけるんです。」

「おれ、褒められてるんのかな…?」

「ですが直属の上司がこんなに美形さまですと、話すことさえままならず。本来であれば逃げ出してます。」

「でしょうね。さっきからプルプル震えてますよ。」


これは頭を下げたタイミングから動かせないからです。顔を上げれば美形さまが……ヒィッ!


「よし!事情は分かった!サリア・チェンスター。お前には騎士団司令部隊雑務係りを命ずる!」

「統括長ぉぉぉ~!なぜですか!クビにして下さい!」


思わず顔を上げて統括長に縋ってしまったけど、当然の反応だと思うんです!ここまで聞いてなぜその命令!大体さっきと変わってない!


「いやぁなんともおもしろ……おれは一度言ったことを曲げるのが嫌いだからな。これは命令だ!よく励めよ!」

「そんなぁぁ~~!!」


殺生な!しかも面白そうとは何事ですか!こっちは真剣なのにぃ~!


「ということです。諦めて何とか慣れてください。それに、苦手だからといって逃げてばかりいたらいつまでも克服出来ませんよ?僕の顔を使って克服しましょう?」

「…………」


は、背後に美形さまの気配がっ!怖いぃぃ!


「こちらを向きなさい。」

「は、はいっ!」


さすがは司令隊長。命じられれば逆らうことが出来ません!


クルッ


「……まぁ今すぐにとはいきませんからね。」


うぅ。すみません。目を開けることがどーしても出来ないのです。閉じててもヒシヒシと感じる美形オーラでさえ限界なのに……!!


「仕方ないですねぇ。僕も協力するので、少しずつ慣れていきましょう?」


サラッ


う?もしや、前髪直されてます?美形さまの前でなんて失礼を!すみません!


「お前が女に優しいとか……キモっ!しかも自分が美形なのは認めるのか。」

「煩いですよ、統括長。この顔で生まれてしまったんです。今更謙遜したところで嫌味にしか聞こえないでしょう?とにかくもう僕の部下ですから、連れていきますよ。」

「あぁ。……サリア、本当に辞めたくなったら言えよ。場合によっては考えてやる。」


なぜその優しさをさっき出してくれないんですか!とは言えず、美形さまに手を引かれたまま連行されました。恐怖で冷や汗と手汗が尋常じゃないんですが!

これからどうなってしまうんでしょうか……。不安でたまりません。


「しかし、サリアは本当に駄目なんですね。僕の顔を見ても悲鳴を上げるだけで、僕の正体に気付かないとは。」


正体、ですか?なんのことやら…


「僕はすぐ気づきましたよ。チェンスター家の三女だと。シーズンで何度か見かけてましたからね。」

「シーズン?」


では司令隊長は貴族の方で?


「僕はウウィンス家の次男ですから。」


ウウィンス侯爵家!?王家からの信頼も篤い聡明な一家の!!そしてこの国随一の美形で有名なご兄弟の!お年頃のご令嬢から未亡人までお二人の妻の座を競って争いまで起きるという、むしろ姉たちも虎視眈々と狙っているうちのお一人ですか!?これは大変です。即刻辞職願を……

ん?でも次男であられるディオン様が騎士団の、しかも幹部である司令部隊隊長に就いてるなんて話は聞いたことなかったのですが。


「公になると騎士団が騒がしくなりますからね。陛下から箝口令が敷かれています。婚姻でも結んだらその内明かしますがね。」


まぁそうなりますね。今私が就いてる雑務係りも、きっと取り合いになるでしょうし。


「だから、貴女が言わない限りはお姉さん方にもバレませんので辞めるなんて許しませんよ。元々、その勤勉さを買っての起用なんですから。」


……私の考えなどお見通しだと。そう言いたいんですね。やっぱり美形コワイ。


「さ、無駄口はこのぐらいにして、仕事の話をしますよ。たくさんあるのでちゃんと聞いて下さいね。」

「はいっ!」


こうなったら自棄です!とりあえず顔さえ見なきゃやっていけそうな雰囲気はあるので、限界が来るまでは頑張りますっ!



*・*・*・*・*・*・*


あれから2ヶ月が経ちました。

四苦八苦しながらなんとか仕事も覚えてきたんですが、問題が多々。

この騎士団、私の予想に反して美形が多すぎです!ってかほぼ美形です!


噂によれば屈強な男たちばかりで、結婚時期のお嬢さん方も近寄らないと聞いていたので選んだのに、全っ然そんなことなかったんですが!

いや、屈強ですよ?騎士団の象徴である帽子を被ってるときは顔があまり見えないので確かに怖いですが、任務や訓練が終わった途端、どこぞのセクハラ親父のように絡んでくるのです!

私に!美形が!!これが逃げずにおられるでしょうか!!!しかもそれによって面白がった騎士団の方々がさらに追ってくるという悪循環……どうしましょう、本気で転職を考えてます。


そんな中で唯一頼れるのが直属の上司、司令隊長です。

初めこそ会うたびに悲鳴を上げてしまいましたが、今は私を騎士団から守ってくれる頼もしい上司さまです。

しかも!成長したんです!なんとあの神から遣わされたと言われる美形の司令隊長のお顔を3秒見られることが出来るようになったんです!今じゃ1秒なら目を合わせることも出来ますよ!

フフン、どうですかこの成長っぷり。自分でも驚いてる限りです。まぁ、今のところ隊長だけですがね。


で、そんなまさに苦手克服真っ最中な訳ですけれど、この状況は何ですか?ドッキリか何かですか?


「呆気に取られるというのを体現したような顔ですね。」


状況で言うなら、司令隊長の執務部屋のソファに押し倒されているって所でしょうか。なぜこんなことに?


「サリアがいけないんですよ?ようやっと僕と交流が取れるようになったと言うのに、何処ぞの新人騎士に現を抜かすから。」


??それはまさか、先週入団してきたちみっこ新人くんのことですか?

だってあの子ってば、この美形騎士団の中に突如芽が出た大根みたいに普通なんですもん。親近感湧くし、何より目を見て話せる人だから、ついつい構っちゃうのは仕方ないと思いません?


「まさかあんな新人に横取りされそうになるとはね。僕としたことが、油断もいいところです。」


えーと、言ってる意味が……


「ということで、今からゆっくり僕たちの仲を深めましょうか。大丈夫です。5日間は二人分の休暇を取っているので、誰も邪魔しに来ませんよ。早く僕の感覚にも慣れて欲しいですしね。」


かんかくってナニソレ?どいうこと?顔が近すぎて目を閉じてることしか出来ないので、隊長がどんな顔をしてるかわからないんですが、嫌な予感しかしないのは気のせいですか?


「あぁ、サリアは目を閉じたままでいいですよ。その方が他の部分が敏感になるでしょう?…安心して。苦手はちゃんと克服させてあげますから。」


どどど、どーゆー意味ですか!怖いんですけど!やっぱり美形なんてろくなもんじゃなーーい!!

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