表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/117

92

 



「僕にも夢遊病って、どういうことかな」


 さすがに、これには呆れてしまった。ヤンデレめ、とんでもないことを言いだすものだなぁ。

 あまりのことで感心していると、里穂が「やっぱり!」という謎の返答をした。


 謎すぎて、よく理解ができない。

 質問するのが怖いが、小夜に質問させるとペースを握られてしまう。


 そこで僕が聞くことにしたわけだけど。


「えーと……里穂、何が『やっぱり』なのかな」


「実は目覚めたとき、(さわ)られていたような感触があったのよ」


「……何を?」


 里穂が頬を朱に染める。最近やっと学習した。これはろくでもないことを発言するサインであると。


「もちろん、高尾に触られていた感触が!」


 いやまった。そんな話、今のいままで出てこなかったのに。


 ここで小夜が腕組みして、「やはりでしたか」と言うのだ。

 なんだこの後だしジャンケンの波状攻撃は。


「やはり水沢さんには、夢遊病が起きていましたか。そして眠りながら、里穂さんにむしゃぶりついていたのですね」


「むしゃぶりついていたのね、高尾!」


 とりあえずムダと承知で主張しておく。


「冤罪だから。冤罪もいいところだから」


 しかしこの世の中、『これは冤罪だ』という声ほどかき消されるものだよね。

 今回もかき消された。


「それで渋井さん。どちらを触られていたのですか?」


 里穂がきょとんとした。


「どちら?」


「身体のどの部位を」


「えーと」


 里穂が答えを迷う。

 当然だよね。触られた感触などという話、小夜の『夢遊病うんぬん』に乗せられての嘘であることは、わかりきっているのだから。


 小夜が腕組みしたまま、難しい表情で言う。


「なるほど。候補が3つあるのですね。胸か、太腿か、わきか」


 なんだ、そのチョイスは。


 里穂は口をぽかんとあけて、小夜を見返した。


「え、そうなの?」


「分かりました、渋井さん。ここはどこを触られていたのか、明らかにしましょう」


「え、明らかにするの? どうやって?」


「あらためて水沢さんに(さわ)られていただきます」


「「えぇ!」」


 里穂とハモった。


 まった。僕はいいけど、なぜ里穂まで驚ているのだろう。もう小夜の暴走は、里穂が想定していた状況を越えているに違いない。


 ならば里穂だけが、この流れを止められる。

 触られていた云々の話は嘘でした、と白状することで。


 というか止めてください。


 ようやく里穂が、覚悟を決めた表情になる。うんうん、自分が嘘をついたと認める気になったか。偉いぞ、里穂。


「そうね! 実際に、高尾に(さわ)ってもらいましょう! それで判断がつくわ!」


 そっちの決意か。


 小夜が、僕の肩を励ますように叩いた。


「ひとまず、難易度の低い『わき』からいきましょうか? 挑戦する準備は良いですね、水沢さん」


 なんで、挑戦者みたいなことになっているんだろ。


 朝食が遠のく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こんなこと朝飯前! んなわけないんだよなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ