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決心していないことを強調して、はい消灯。
「ちょっとまって、高尾。まだ22時ちょっと過ぎなのに、もう明かりを消すの?」
「寝る子は育つ」
はっ。だからヤンデレはあんなに病んで育ったのか。
「寝るのは構わないけど、あたし、真っ暗派なのよね」
「そうなの? 僕は常夜灯を点けておきたい派だけど。まぁ里穂がそう言うなら、真っ暗にしよう」
さて。このとき、僕たちはどこに寝ていたのか。布団は一人分しかないので、僕は畳の上で座布団を枕にしていた。
「……高尾、そんなところで寝たら、風邪ひくわよ。布団で寝なさいよ」
「そう? 悪いね」
立ち上がって、布団のところまで行く。じっと見下ろしていると、里穂が小首を傾げる。
「高尾、どうかした?」
「どかないの?」
なぜか驚愕する里穂。
「えっ! まさか、女の子を畳で寝かせようとしていたの!」
「だって布団で寝なよ、というから」
里穂がもじもじしながら、かけ布団を持ち上げて、
「そこは、ほら、一緒の布団という意味よ」
「遠慮しとく」
「本気なの!」
「本気だよ。おやすみ」
畳の上に戻る前に、明かりを真っ暗にする。
そのさい、スマホの位置は先に確認してと。緊急時には、スマホだけは手に取って逃げないとね。
あとコンドームの箱は、できるだけ遠くに置いた。
よし寝よう。
長い夜だったけど、小夜が自室に戻って就寝した以上は、これでお終いだ。
このとき里穂には背を向けて寝ていたわけだけど。
ふいに背中に気配を感じた。
体温を感じるほど、近くまで来ている。吐息が耳をくすぐってきた。
こんなとき、どんな反応をするのが正しいのだろうか。
「殺される!」
「誰も殺さないけど!」
電気を点けたら、やはり里穂が転がってきていた。
「寝相が悪いな。まさか確信犯?」
里穂はなんて答えようか、迷った様子。
「高尾だけ畳の上で寝ていると、あたしも申し訳なく思ったのよ。だからあたしも布団から出てしまったというわけ」
「うーん」
なんか苦しい言い訳に聞こえたのは、僕だけかな?
「気にしないで寝なよ」
「気になるわよ。高尾が畳の上で寝続けるというのなら、あたしも布団では寝られないわ。けど布団で寝れなかったら、明日の朝には体中が痛くなっているわね」
「僕にどうしろと?」
里穂が布団のかけ布団を持ち上げて、
「一緒に寝たらいいんじゃない?」
うーん。夜が長いぞこれは。
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