表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/117

65

 



 千沙だけを現実逃避させておくのは、何というかズルい。

 というわけで現実に意識を戻させようと、つついた。わき腹を。


「ひゃん!」


 とたん千沙が変な声を上げる。


「え、何事?」


 耳まで赤くし、うっすらと涙の光る眼で睨んできた。


「へ、変なところ、突かないでくれるかな水沢くん」


 陽菜さんはなぜか嬉しそうだ。


「妹の性感帯を、姉の目の前でつつくなんて──水沢高尾くんは変態さんかな?」


「性感……帯なんて知るわけがないでしょうが」


 すると小夜が意味なく瞳を知的に輝かせて言う。


「陽菜お姉さま。無意識に性感帯を責めるとは、水沢さんは素質がありますね」


「やっぱり? 私には分かっていたんだよ。水沢高尾くん、いよいよ本気を見せてきたね」


 千沙が警戒の眼差しを向けてきた。


「まだまだ本気を見せてなかったというわけだね、水沢くん」


「君まで乗っかるなよ」


 この無益な会話を切り上げよう。というわけで、僕は話題の舵取りをした。


「さっきの話ですけどね、陽菜さん」


 陽菜さんは『分かってる分かってる』と言わんばかりにうなずき、


「千沙の性感帯の一つがわき腹であると見抜いた、君のスキルの話だね」


「いえ全然、違います」


「千沙のわき腹に、ほくろがあるという話だった?」


「違うという以前に、なんだその暴露は」


 小夜がPCを弄りながら、


「webの性格診断サイトによると、わき腹のほくろは『S気質に見えて、実は隠れM』とありますね。なるほど、なるほど。参考にしてくださいね、水沢さん」


「参考にしません。あと千沙がなにげに涙目だから、もうイジメないであげて」


 千沙が目元をぬぐう。


「この涙目はあれだから。目にゴミが入っただけだから」


 小夜と陽菜さんがコソコソ話し合うのが聞こえてきた。


「隠れMにしては打たれ弱いですね」


「だからこそ隠れたMなんだね、小夜ちゃん」


「あのですね。本題に入りますけど、つまり精神的に僕が真紀さんを云々という話のことです」


「ああ、それ。つまりね、水沢高尾くんは実は滝崎真紀さんに惹かれている。これは昨日の会合から明らか。当人は自覚ないみたいだけど」


 いえいえ、自覚はありますよ。フラれただけで。

 しかし昨日の短いやり取りで、それを見抜くとは。

 さすが千沙のお姉さん、頭のネジが2本ほど外れてはいるけど、鋭いところは鋭い。


「だけど水沢高尾くんは、里穂ちゃんと将来を約束した関係でもある。もしや君は──」


 探偵が謎を解くときのような煌めく瞳で、


「ハーレムを作りたいのでは?」


 前言撤回。やっぱり、何ら鋭いところはなかった。

 一方、小夜はなんか感心しだした。てっきり陽菜さんの迷推理への賞賛かと思ったが。


「そうだったのですか、水沢さん。まさかハーレム計画を、このご時世にやろうとするとは。世間の反感を買うことは恐れぬ、その決断力。あと性欲。さすが英樹のご親友だけありますね。正直なところ、尊敬いたします」


 ふざけた誤解をされた上に、その誤解を前提として尊敬の眼差しを向けられた。

 そもそも尊敬ポイントがおかしいよ、このヤンデレ。


「しかし、どうしますか陽菜お姉さま? 水沢さんの野望が明らかになったところで、計画の変更は?」


「だめだめ。計画の変更は認めないよ。相手が誰だろうとも、千沙が水沢高尾くんを寝取り返す。これを規定路線として、週末のデート計画に備えよっか」


 振り出しに戻った。


「提案があります、陽菜お姉さま。週末デートには滝崎さんと渋井さんもお呼びしては? すなわち、ハーレム型デートからの寝取り返しによる千沙の勝利宣言へと至ることで、この計画は栄光を勝ち取るのです」


「さすが小夜ちゃん! その計画、最高だよ!」


 いや、余計ひどいことになった。




気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。


すでにブクマ・評価してくださった方、ありがとうございます! 励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ