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 ひとまず解放された。


 今日はもう遅いからと週末デートのプランは、明日に持ち越し。


 つまり明日また本庄家に行かねばならない。

 地雷だらけでサメがいる本庄家に……自分で考えていて意味不明になった。

 

 クタクタになって家に帰りついたところ、英樹からスマホに電話。


「英樹──生きていたんだね」


「なんで俺が死んだことになってんだ? つーか高尾、だいぶ疲れた声だな」


「話せば長いんだけど」


 実際、長い話だった。


 僕が話しているあいだ、英樹は静かにしていた。

 きっと僕の深刻な悩みに共感していることだろう。


 さすが親友。


「てめぇ自慢か、高尾」


「は?」


「本庄千沙っていったら、滝崎真紀に劣らぬ美少女じゃねぇか。胸もでかい。それなのにヤっちまうチャンスを逃すとか。お前それでも男か、高尾!」


「……」


 親友、替えたい。


「一度しか言わないからね、英樹。僕は真紀さんが好きなので千沙と関係は結べない。OK?」


「あのなぁ。滝崎真紀にはフラれたんだろ。しかも、一度はお前がフッたんだから自業自得だ」


「それはそうだけど」


「ならもう忘れろ。いまは本庄千沙だ。据え膳食わぬは男の恥というだろ。ここは一発、やっちまえ!」


「それで結婚コースに入るとしても?」


「バカだなぁ。んなわけないだろ。ようは本庄の姉貴を追い返せばミッション完了なわけだろ? ヤることやって、本庄の姉貴を安心させてやれよ」


「……」


 英樹の助言に従って、素晴らしく解決したことがあっただろうか。


 ない。


「そういえば小夜さんがよろしくって」


「小夜……じゃな、高尾。健闘を祈るぜ」


 通話が切れた。


 小夜の名を出すと、英樹は逃げ出すらしい。

 これからはウザいとき使おう。


 翌日。


 登校すると、昇降口のところで里穂を見つけた。


 里穂もこちらに気づき、興味津々という様子で近づいてくる。


「どうだったの昨日は?」


「一言で言うと、進展はなし」


「ふーん」


 つまらなそうな顔をする里穂。


「いちおう、君は寝取り返される立場なんだからな」


「そういえば、そうだったけ。あたしたち付き合っていることになっているのよね、陽菜姉の前では。ったく、高尾がトンでも設定を作るから」


 トンでも設定を再確認しとこう。


 その1,里穂が、千沙から僕を寝取った。

 その2,ので千沙が、僕をまた寝取り返す。


 というのが陽菜さんが信じているトンでも設定。


「ごめん、ごめん。あのときは、最善だと思ったんだ。けど逆効果だった」


 いずれにせよ、里穂が略奪愛したと信じているのは、陽菜さんくらいなものだ。


 同席していた真紀さんと千沙は、嘘だと分かっている──はずだけど。


 真紀さんには念のため、あとで説明しておこう。


 昨日のことを話しながら、僕と里穂は教室に入った。


 とたん、クラスの空気が違うと気づく。


 黒板には、『水沢高尾』『渋井里穂』の名で相合傘が書かれていた。

 無駄にデカデカと。


 高校生なのにガキっぽいことを。


 まった、まった、それよりも──。


 僕と里穂が付き合っているトンでも設定が、漏れた? なぜ?


 里穂が僕を小突く。


「トンでも設定が、クラスメイトにまで広がっているわよ」


「これも一種のパンデミックかな」


「封じ込めに失敗しているじゃない!」




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 英樹はどうやって生き残ったんだ... [一言] どうしてこうなったwww しかし個人的にはこのカップリングが好き。
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