表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

19.お昼ごはん

 翌日。

 よっちゃんとも猫山君ともなんだか気まずくて、なんだか全然喋れていない。

 いや、喋ってはいるけれど、ぎこちない。

 笑っていることができているかどうか分からないぐらいには。

 それにしても、昨日のあれはなんだったんだろう。

 よっちゃんのことがショックだったけど、猫山君のあの優しさで吹っ飛んでしまった。

 温かった。

 赤ちゃんの頃、お母さんに抱かれていたことを私は忘れている。

 でも、ああいうことなのかもしれない。

 安心感に身を包まれるってことは。

 辛いけれど、今日を生き抜くことができそうな気がする。

「あっ、ごめん」

「え?」

 お昼休み。

 私は特に何も言わずに、いつも通りよっちゃんとご飯を食べる動作をした。

 だけど、

「あっ、今日は違う子とお昼食べる約束してたんだった! ごめんね!」

「あ、うん」

「それじゃあね!」

 そして、よっちゃんはどこかへ行った。

 まあ、よっちゃんはいいだろう。

 友達がたくさんいるのだから。

 でも、何の相談もなしに、なんでそんな勝手なことをするんだろう。

 普通に事前に相談しないのかな?

 それか、急にご飯を食べることになったとしても、どうしようかなー、とか一応訊かない?

 あれだと、私の了承なんてどうでもいいってことだ。

 よっちゃん、本当に私のことなんてどうでもいいんだな。

 変わり身が早くて羨ましい。

 私はそんな容易く断ち切ることなんてできない。

 器用になんて生きることなんてできない。

 よっちゃんは、クラスにもたくさん友達がいるだろうに、他クラスへと行った。

 もしかして、野球部の人達と食事でもするのだろうか。

 それだったら嫌だな。

 確認してくなってきった。

 確認して、本当によっちゃんが野球部の人と一緒に食べていたらへこむ癖に。

 そして、野球部の人達、たくさんと食べるならいい。

 でも、一人。

 たった一人と食べることになっていたとしたらどうなる?

 そう。

 犬塚先輩と一緒に食べていたとしたら、そんな決定的な場面を目撃してしまったら、私はどうなってしまうんだろう。

 心砕けて不登校になってしまうかもしれない。

 あ、でも。

 自分から傷つくことないのに、確かめたい。

 そもそも、こんな想像をしている時点で、ドエムみたいなものだ。

 なんでこんな内罰的なんだろう。

 私はエムじゃないのに。

 だけど、考えてしまう。

 よっちゃんのあの去り際の言葉がおかしかったことも。

 それも、あっ、とか言っていた。

 あまりにもわざとらしいあっ、だった。

 自分で台本を作って、それを棒読みで読み上げる様なあっだった。

 そんなにも私と一緒にいたくなかったのかな。

 初めてだった。

 よっちゃんとは中学からずっと一緒にいるけど、あんなことをされたのは初めてだった。

 女子は派閥を作る。

 グループを作って、かかり合いを持とうとしない。

 そして、そのグループで反感を買うと、一人にさせられる。

 そんな光景を何度も見てきた。

 私には関係ないことだと割り切っていた。

 だって、私達は二人だ。

 あんな惨めな想いなんてしないと思っていた。

 だけど、今の私は本当に惨めだ。

 他の女子ならば、別のグループに混ざって事なきを得るのだろうけれど、私はぼっちなのだ。そんなことできるはずもない。

 今日からずっと一人で飯を食べなければいけない。

 班活動とか、修学旅行とかどうなるのかな?

 私、間違ったことしちゃったのかな?

「ご飯、一緒に食べる?」

「え?」

 嬉しい。

 嬉しいけれど、声をかけてきてくれたのは猫山君だった。

 他の誰かだったら、女子だったら二つ返事だったかもしれないけれど。

 まさかの男子から声をかけてきてもらえるなんて思えなかった。

 少なくとも、私の人生を振り返ってこんなこと、予想できるはずもない。

 もしかしなくとも、気遣ってくれているんだろう。

 さっさと断ってしまおう。

「あの――」

「え、なに、お前ら付き合ってんの?」

 そこで乱入してきたのは虎鉄君だった。

 な、なに、なに、これ。

 訳が分からなくなっているのは私だけじゃなく、クラスメイトもだった。

「そうなの? あの二人って? うそー」

「ありえないって! 釣り合ってないじゃん!」

「てか、やめようよ。またこんなこと言ってたら猫山君に叱られれちゃうって」

「そ、そうね……」

 猫山君が、何故か私を見つめてくる。

 すぐに答えてくれればいいのに、なんで私に答えさせようとしているのかな?

 私、試されている?

 答えはもちろん決まっている。

「ち、違いますけど」

 まあ、そう答えるしかないよね。

 虎鉄君はにんまりと笑う。

「なーんだ。それじゃあ、俺もお前らと一緒に飯食ってやるよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ