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12.第三の選択肢

 野球部に入れないとなると、どうなるか。

 どのような道に転ぼうとも、部活動はしなくてはならない。

 だとすると、どんな部活動がいいか。

 そうなると、できれば野球部に近い部活動がいい。

 部室が近いとか、それか野球部と交流のある部活がいいか。

 部活には詳しくない。

 親しい先輩もいないし、先生に聞く勇気もない。

 基本的に私はコミュ障なのだ。

 こんなこともあって、私はグラウンドを観察していた。

 じっくりと。

 そして思ったのは、一つの部活。

 野球部のグラウンド近くで練習するとなると、サッカー部なのか?

 野球部以外興味ないし、ちゃんと始業式にでていなかったから、サッカー部がマネージャーを募集しているのかどうかも分からない。

 一応、確認を撮ってみた方がいいかもしれない。

「よっちゃん、サッカー部ってマネージャー募集していた?」

「えっ、うん、していたと思うけど?」

 ご飯を食べ終えて片づけをしていたよっちゃんに話しかける。

「ごめん、ちょっと洗いに行ってくるね?」

「う、うん」

 そう言ってよっちゃんが弁当箱を洗いに行って独りになる。

 これで考え事に熱中できる。

 というか、よっちゃん、わざわざ弁当箱を洗いに行くのって毎回思うけど、すごいよね。ささっと、水で流すだけで洗剤を使う訳じゃないのだが、そうしないと臭いがこびりつくかららしい。

 よっちゃんは意外に女の子らしい。

 そこまで考えが回ることなんて、私はない。

 私も女子の端くれならば、一緒についていくぐらいした方がよかっただろうか。

 常に一緒にいるのが友達の証みたいなところあるし。

 いや、いいか。

 いまさら面倒くさいし。

 一人でいると、本当にぼっちで孤独で辛いけど、ずっと一緒にいるって私にとってかなり苦痛なんだよなあ。

 別によっちゃんが嫌いなわけじゃない。

 だけど、誰かと一緒にいると気疲れしてしまうんだよな。

 そのへんのところが分かってくれない人が多くて、私は冷たい人間。

 友達なんていらない人間だと断定されることが多い。

 でも、きっとよっちゃんはそんな私のことを理解してくれている。

 そんな私の傍にいてくれるんだから。

 だから言葉に出して確認せずとも分かる。

 分かりあえているのだ。

「どうしようかな」

 サッカー部に入って、影から先輩のことをじっと見つめる自分の未来のことを想像してみる。

 木陰にいて、わーわー、叫んでいる野球部員のことを長時間何も言わずに。

 サッカー部のマネージャーのやるべきことを放置したまま、他の女子マネが文句をいうのを耳にしながら訊いていないふりをする。

 ……なんだか、軽くストーカー染みた発想になっていないだろうか?

 いや、いまさらか。

 好きな人を追って同じ高校を目指す。

 綺麗なようでいて、実はそうでもない。

 少し側面を変えた見方をすれば、相手の気持ちを何も考えず付け狙う。

 まさに、ストーカーそのものだ。

 いまさらになって形にこだわるのはよくない。

 だけど、サッカーか。

 身内どうしてパスしまくって、相手のゴールを狙わない消極的なスポーツという印象しかない。

 だけど、最近では一番人気のスポーツといえば、サッカーだろう。

 私はスポーツにあまり興味が持てないからなあ。

 野球部の近くで練習していたから、サッカー部の練習も見ていたのだが女子人気は大したものだった。

 野球部よりも女子の歓声がグラウンドの空に響いていた。

 坊主頭の野球部よりも、足の長い人の多い男子の方に惹かれたのだろうか。

 サッカーはサッカーで女子の顰蹙がうるさそうだが、私の心は決まっていた。

 悩みながらも、サッカー部に入るしかない。

 どっちの服がいい? と二者択一を他人に迫りながら、ほぼほぼ自分の中ではどっちの服がいいかは決まっているかのように、私はサッカー部に入るか、そうじゃない部活に入るかという問題に、答えを出していた。

 それなのに、

「あれ? どうしたの? 一人? 安藤さん?」

 声を掛けられてしまった。

 彼を見やる。

 そして、浮かぶのは一つの選択肢。

 野球部ではだめ。

 サッカー部ならワンチャン。

 だけど、もう一つの選択肢として、野球やサッカーよりも過酷かもしれないものに入るという団参の選択肢。

 そう。

 それはつまり、応援団という選択肢だ。


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