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11.お局様

 教室の昼休み。

 まだ北高には慣れていないが、グループというものがちらほらできていた。

 昼食を食べるとなったら、嫌でも誰もが一緒にならないといけない。

 一階でも独りぼっちで飯を食べれば、そいつの学校生活は灰色一色になることは確実だ。

 だから私もよっちゃんとご飯を食べている。

 独りになると大体お節介な女の子が、大丈夫? 一人でも? と集団行動を強要してくるので、事前に誰かと一緒になった方がいい。

 よっちゃんが一緒のクラスで本当に良かった。

 こうして相談もできる。

「どうしよう……」

 野球部の部活の件を、お弁当をつつきながら話した。

「まさか、野球部に入部すらできないなんてねー」

 はあ、そうなんだよな。

 どうして野球部に入部できないのか。

 まさかそんなことになるなんて考えもしなった。

「……よっちゃんは部活動どうするの?」

「うーん、まだ決まっていないけど、調理部でもいいかな。お兄ちゃんに料理作ってあげるの!」

「そ、そう……」

 よっちゃんの頭の中は兄のことしかないのか。

 ここまでブラコンだと、恋愛とかできなさそうだな。

 私がいうのもなんだが。

「何度もお願いしてみればいいんじゃないの?」

「お願いしたけど駄目だった……」

 その日も、日を改めてまた行っても一緒だった。

 先生に相談してみたのだが、そういうのは生徒同士で話し合った方がいい。先生がいくと余計にこじれてしまう。こういう問題を解決していくのが、生徒の成長に繋がっていくんだ。どうしてもというのなら、少しぐらい先生が言ってやってもいいぞ、とかにより見主義全開の発言をされた。

 まあ、しょうがないのだろう。

 今の世の中熱血教師なんて流行らない。

 竹刀片手に授業をするなんて、漫画の中でも観ない。

 中学の時だって、先生が生徒をちょっと怒鳴っただけで親が学校に乗り込んだことがあった。

 その生徒もそれが当然とばかりにふんぞり返っていた。

 ペコペコ謝る先生は、宿題を毎回忘れても反省の色が見えなかった生徒を注意しただけで、なんの落ち度もないのに打。

 そんなことばかり起きていたら、先生だって何もしなくなるだろう。

「気になったから調べたんだけど、面接したその人って有名らしいよ」

「へえ、どんなふうに」

 調べたって、相変わらずすごいな。

 そんな情報網を作るぐらいには、もう人間関係を築いているってことだ。

 よっちゃんは、結構私の隣にいてくれるけど、廊下で誰かとすれ違っている時にあいさつ程度は交わしているのをよく見る。

 なんで、私なんかとずっと一緒なんだろう。

 もっと明るい人と一緒にいた方がいい気がするんだけど。

 私みたいな陰気な人の傍にいた方が、しっくりくるのだろうか。

 安心して何でも言えるのだろうか。

 よく分からないな。

「その人って、お局様みたいな感じらしいよ」

「ええ……」

 いつの時代の方ですか。

 私が一番苦手なタイプかもしれない。

 そういう上から目線で命令ばかりする人は。

 先輩だからある程度は言ってもいいけれど、独裁者は嫌だな。

「女子マネって少ないからねえ。どうしても独裁政治になるんだろうね。女子って人が多ければ、派閥ができて面倒だけど、派閥がなかったらなかったで、完全なる独裁政治になって誰の意見も通らないからなあ」

 あの先輩が全ての決定権を持っているってことか。

 もしも反抗勢力があれば、その頂点に立つ人に頼み込めば、私の意見を通してくれるかもしれない。

 私を入部させてくれるかもしれない。

 その人に借りを作ることにはなって、後後面倒なことを手伝わされたり、その人に有利なことをしなければならなくなるのかもしれないが、それでも試してみる価値はある。

 だけど、その手は使えない。

 一致団結している女子の集団を瓦解させるのは難しい。

 卑怯な手段。

 あの子が、あなたの悪口言ってたわよ、酷いわねー、とか告げ口すれば一気に終わらせることができるかもしれないが、それは輪の中にいればできる話。

 それに、そういう陰険なやり方が気に喰わないから、私は常に一人でいることが多いのだ。

 できたとしても、実行するかはまた別の話。

 ということは、結果がでた。

「野球部に入るのは諦めるしかないよね……」


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