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「…………え?」
突然叫び上げられたその言葉に、俺の思考は一瞬、凍りついてしまった。
だが、その言葉の意味が数秒後、俺の脳に染み渡ったその時。俺は無意識の内に握り締めていた新聞を放り投げ、高利の胸ぐらを、それこそそのまま絞め殺すかのような勢いで掴み上げていた。
「――お、おい!! どういうことだ高!! 〝あのこと〟って……お前、まさか……!!」
「す、すまねぇ亮!」――高利は、今にも泣き崩れそうな顔になりながら説明した。
「お、俺、お前の姿が見えねぇから、てっきりまたお嬢さまに弁当作らされて屋上にいるんじゃねーかと思って……そ、それで屋上に行ってみたら、お嬢さまが急に飛び出してきて……それであの……逃げようとしたら捕まって、お、脅されて仕方なく…………!!!」
「…………!!」
……結に、知られた? 〝あのこと〟を? 全て!!?
「な、なぁ、亮?」
高利は、さらに震える声で聞いてきた。
「お……おおお、俺、やっぱり後で殺されんのかな? ――いや! 俺だけじゃない……全員……学校中の生徒! ……て、てゆーことはさ、そ、それでその後俺って、やっぱりその全員から復讐の的にされて、それで、あの――」
「――うるせぇッッ!!!!!!!!!!」
――本気で、それこそもう周りを気にしている場合ではなくなった俺は、本気で、叫んだ。
「テメェや他のヤツらのことなんかどうだっていいんだよ!! ――どこだッッ!! 言えっ!! 高っ!! 〝結〟は今、どこにいるッッ!!!??」
ひいぃ!! 高利は悲鳴を上げた。それからすぐに、逃げるように叫んだ。
「お――〝屋上〟!! お嬢さまは俺を追い出してからまだずっと、〝屋上〟にいるはずだ!!」
「――〝屋上〟…だと!!!??」
ゾクッ! 身体中の血液が一瞬にして凍りついてしまったのが分かった。
――お、おい!! ふざけんなよ!? 屋上から戻ってこないって……まさか、結のやつ!?
「ほ、本当だって!」
俺の様子を見て疑っているとでも思ったのか、高利はもう一度叫んだ。
「おおお、俺、そのまますぐ逃げてきたけど……お嬢さまは追ってこなかったし! あれからまだ〝五分〟も経ってねぇから、絶対〝屋上〟にいるはずなんだよ! だから――」
「――ッッ!!!」
ドンッ!! 俺は掴んでいた手で高利のことを思いっきり突き飛ばし、そして、脇目も振らずに全力で駆け出した。
――〝結〟!! 〝結〟!!
そう心の中で、何度もその名前を叫びながら……。




