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5-5改

 「――ごちそうさまでした」

 手を合わせた俺は、ふー、と満足のため息をつき、コップに入った牛乳を一気に飲み干した。

 お腹いっぱいだ……それにしても、今日は何だか朝からゴウセイだな? というより……俺も結も、結構いっぱい食べたはずなのに、まだもう一食分くらい残っている。これじゃあ、いくら何でも作りすぎじゃあないのか? 

 ――そんなことを思っていた、その時だった。「あ、そうそう」と母さんが俺に話しかけてきた。

 「ところで亮ちゃん? 今日、母さんちょっとお昼から学校で〝PTAの集まり〟があるのよ。だから、結ちゃんといっしょにお留守番よろしくね?」

 「〝PTAの集まり〟?」

 聞くと、母さんはなぜか、パチリ、とウインクして答えた。

 「そ。学校の行事についての連絡とか、色々するんだって……亮ちゃんも知ってるでしょ?」

 俺も……知っている……?

 ――瞬間、あ! とそのことに気づき、思わず声を上げてしまいそうになったが、寸でのところでそれを防ぐことに成功した俺は、慌てて場を取り(つくろ)った。

 「えーと……いや、うん、まぁ……分かったよ。――夕飯前には帰るよね?」

 「長引かなきゃ、たぶんね。……あ、でも、もし六時くらいまでに帰らなかったら、冷蔵庫にあるもの勝手に食べてていいからね? 母さんそんな時間になってまで作りたくないし」

 ……なるほど。大量のサンドウィッチの理由はそういうことか。

 納得して、俺は答えた。

 「分かった。じゃあ、そうするよ」

 「うん♪ それじゃあ、よろしく」

 言い終わると、母さんはリビングから出て行った。……たぶん、洗濯物でも干しに行ったのだろう。風呂場の方から小さく洗濯機が止まった音が聞こえた。

 「……ところで、亮?」

 と、その様子を見ていた結が聞いてきた。

 「おばさま、学校の行事とかのことで集まりがあるって言ってたけど……それって、何のこと? 学校でそんな連絡はなかったはず……だよね? 亮はおばさまから何か聞いてたの?」

 「え? いや……そ、それは……」

 や、ヤバい……。慌てて俺は考えた。

 ――母さんはたぶん、昨日俺と話したことについて〝お友だち〟とやらに頼みに行ってくれるのだろう。それはもちろん分かっていたが、しかし、それをバカ正直に結に話すわけには絶対にいかない。ということは、とりあえずこの場は、何でもいいからとにかく〝それっぽい〟ことを言って、俺は結を納得させなければならないのだ。

 ……こんな時、俺は普段、何て答える? どう答えれば自然だ……?

 少し考えて、俺はある一つの〝結論〟に至った。――それが、

 「……〝さぁ〟?」

 だった。……まぁ、たぶん、いや絶対、こう答えるだろう。――普段の俺は、まず連絡とか、人の話をちゃんと聞いていることは有り得ない。これについてだけは、絶対の自信があった。

 「……そうだよね」

 ――と、結もそれには何の疑問も感じなかったらしい。何ということもなく、普通に納得していた。

 ……若干、俺の心が傷ついたのは……まぁ、気のせいだろう。

 「……えーと、そんなことより、結? 今日は何して過ごすよ? 時間もいっぱいあるし、俺としてはとりあえずゲームを、と思っているんだが……他に何かしたいことはあるか?」

 「え? う~ん……」

 結は俺の質問に、人差し指を唇に当てて考え始めた。

 ――だが、それもほんの数秒。人差し指を唇から外した結は、ニコ、と微笑んで答えた。

 「……うん。特にないかな? 私もゲームでいいよ」

 「よし、決まりだな」

 そう答えて、俺は椅子から立ち上がり、「じゃあ行くか?」と声をかけて、結と一緒に二階の俺の部屋へと移動した。





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