4-11改 四話目終わり。
「……はっ!?」
聞いた俺自身が驚いてしまった。
いったい何を言っているんだ俺は……そう思ってすぐに店長に謝ろうとその顔を見た――その時、しかし俺よりも、〝遥かに驚いた表情で硬直する〟店長の姿が、そこにはあった。
「て、店長……?」
思わず、俺はそれに声をかけてしまう。
すると店長は、はっ! と、まるで我を取り戻したかのように、慌ててその場を取り繕い始めた。
「い…いやだわ亮ちゃん! アタシはなんにも隠してなんかいないわよぅ~! もう! 大人をからかうなんてイヤラシイ子ね★」
「あ……いや、ご、ごめん店長……」
そう答えると、「じゃあ今度こそ作ってくるわね❤」とだけ言って、店長は再び振り向いて出口の方へ身体をくねらせながら歩いて行った。
……何だったんだ、今の店長の変な表情…態度……???
不思議に思いはしたが、もしかしたら、突然俺に変なことを聞かれたせいで、店長も動揺してしまったのかもしれない。そう思って、俺はそれを気にすることをやめ――
「…………とカード〟」
「……え?」
バタン……それからすぐに、店長は部屋を出て行った。
……あれ? 今、確かに店長…………???
……結局、俺は先ほど、部屋を出て行く際に店長が呟いたことを聞くことはできなかった。
~とカード……確かそう店長は言っていたような気はするんだけど、突然のことでよく聞き取ることはできなかった……あれは、いったい何だったのだろうか?
――帰り道。俺は何となく、それから数分後に店長に渡された弁当を見つめてみたが……分からない。いや、そもそも弁当なんか見つめても、そんなことが分かるはずがない。それはもちろん分かってはいたが…………何だかなぁ~……。
ふ~、俺は一度、ため息をついた。
……いや、そもそも俺の考えすぎなのかもしれないな。もしかしたら、ただ単に俺が気づかなかっただけで、あの時ドアの向こう側に誰かがいて、店長はその誰かと話しをしていただけなのかもしれないし。……もしくは、その……何だ……店長の独り言……とか……???
…………そんなわけ、ないか。
はぁ~……再びため息をついた。
……あれは確かに、俺に向けての何らかの〝メッセージ〟だったはずだ。……とはいえ、じゃあ、いったいどんな? …………分からない。う~ん……???
「――おーい! マイテリブル(悪友)ー!!」
――と、そんな時だった。どこからかまた、あの聞きたくない声が聞こえてきた。
「……高か? 何だよまた今日は?」
面倒くさく思いつつも、俺は振り返って返事をしてみると、突然、俺の目の前にスマホが現れて、視界を遮られた。
「大ニュースなんだよ大ニュース! え? どれくらい大ニュースなのかって? そりゃあもう大ニュースなんだよ!」
「ウゼェ」
その言葉と共に俺は高利の手を払い除けると……何やら高利は興奮した様子で俺の視界を遮っていたそのスマホを握り締めていた。
「あん? ……どうした? 竹島めぐって遂にウチの総理と韓国の大統領がサドンデスでもすることになったか? しかもボクシングで」
「それすげーニュースだなおいっ! ――じゃ、なくて! そうじゃねーんだよ! そんなことよりももっと大ニュースなんだよ!!」
「もっとだと!?」
何だろう……そう不真面目に考えようとあごに手を当ててみたものの、
「いや! だからそうじゃねーんだよ! オトボケてる場合じゃないんだって!!」
と、高利に止められて俺は仕方なくあごから手を離した。
「……じゃあ、いったい何だっていうんだよ? くだらないことだったら本気で怒るぞ?」
「おう! 怒ってみろ! 怒れるもんならな!」
やけに自信ありげに言って、高利は俺にスマホを突き出して見せつけてきた。
「ふっふっふ……実はな……なんと! あの〝情報屋新聞〟から会員限定で超絶スクープの号外があったんだよ! しかもあの〝白乃宮事件〟についての新事実!!」
「――何っ!!!??」
がっ! 高利は拳を握り締めて、ガッツポーズをとった。
「ふはは、驚いたか亮! まぁ! こんな大ニュースそうそうあるもんじゃねーからな!」
「――…せろ……」
「どーだ! これでもまだ怒れるっていうんなら怒って――」
「いいから見せろっっ!!」
「――え、あ、はい……」
辺りのことを構わず大声で怒鳴り、俺は高利からスマホを取り上げ、そこにすでに表示されていた新聞に急いで目を通した。
――瞬間、
「……なん……だよ…これ……何なんだよ、〝これ〟はっっ!!!??」
俺は、そこに書かれていた内容に驚愕した。
――同時に、あの時、店長が俺に伝えようとしたその〝言葉〟を、その〝意味〟を、全て知ることとなった。
――そこに、書かれていたこととは、
――〝お仕事カード〟。




