4-3改
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滝のように絶えず流れ出る汗……見開かれた目……自然としわのよる額、眉間……。今の俺の表情を簡単に説明するのなら……そうだ。グレイトなティーチャーが出てくる漫画あたりを軽く読み漁ってみてくれ。すぐに、答えが見つかるだろう……。
………………さて。
――ふっ、と計らずしも勝手に出たそれを無視しつつ、俺はオモムロにテーブルに置いてあった、ピカピカ、のスプーンを手に取り、そこに映った自分の瞳を見つめた。
――いや、何。落ち着け。そうだ、考えてもみろ。どんなに暗黒に染まろうとも、所詮あれは〝卵〟……そう、〝卵〟なんだ! 材料は卵に生クリームに塩コショウ! しかも味付けは俺がやったものであり、結はそれ以降何も材料を追加していない! そう! 〝焼いた〟だけ! 結はそれを、結果的にどうなっていようとも、〝焼いた〟だけであるのだ! したがってあの〝暗黒〟は、〝コゲ〟!! 〝コゲ〟〝コゲ〟〝コゲ〟〝コゲ〟〝コゲ〟!! それしか有り得ないのだ! 有り得るはずがないのだ!!
――よしっ!!!
ぎゅっ! 手に取ったスプーンを握りつぶすがごとく、気合いを十分に入れた俺は、改めて、俺の人生最大級でもある〝それ〟という名の〝試練〟を見つめた。
――ざわっ。
その謎の効果音に思わず、ギリリ、と歯を食いしばってしまう。
だが、身体の反応とは裏腹に、しかし俺の中ではすでに、〝覚悟〟はできていた。
なぜなら、そう、俺は……ッッ!!
〝漢〟――であるのだからッッ!!!!!
……ふっ。【〝漢〟なら 出された料理に譬えそれに毒が入っていようとも 女が作った料理であるのならば 決して躊躇をすることなく 結果命を失おうとも 喜んでその全てを食すべきであるッッッ!!!!!】……そう、この前高利が力説していたからな……しかも、何とおりか違った表現で。
――ならば、〝宿命〟として俺はこの身の全てを捧げようではないか! 〝漢〟として!!
「……い、いただきますッッ!!」
遂に、俺はその物体をスプーンにすくい、そして考えることを止め、一気に口の中に押し込んだ。
――刹那、
シャリンッ!
「っっっ!!???」
……なっ、何だ! この、食感はッッ!!???
驚きのあまり、思わず俺は口を手で塞いでしまった。
〝鉄〟!? 〝金属〟!!? ――いや、これは……!?
――瞬間、
ドロッ…!
「!!!??????」
――だ、ダメだッッ!! わけが分からない!! 何なんだ、これは!!? さっきの食感とはまるで真逆の、この……〝液体〟ッッ!!! いったいどうなって!!???
「――はっ!!!!!」
数秒後、俺の脳裏にある、〝封印〟されていた記憶が蘇った。
――そ、そうだ…この食感! 感覚! 思い出した!! 俺は確かに、前にもこれと同じような物を食べたことがあるッッ!! それも昨日…否!! その〝ずっと前〟にもたし――
オボろアァッツッッっっ!!!!!??????????




